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和書>小説・ノンフィクション>ミステリ小説>日本ミステリ小説
岡江 多紀(おかえ たき) 1953〜 神奈川県生まれ。早稲田大学文学部演劇学科卒業。出版社に勤務し、79年、『夜更けにスローダンス』で小説現代新人賞受賞。著書に『黒の葉脈』『上海ブルース』など。
奇妙な連続殺人が発生。どちらも被害者は若い女で、情交後に絞殺の上、唇が真っ赤に塗りたくられていた。犯人の“口紅殺人鬼”はなぜ痕跡を残すのか? 事件に興味を抱いた心理学研究生・沙也は、被害者の意外な共通点に気づいた。そしてある男が脳裏に浮かぶ……。意外な結末で人間心理の恐怖を活写する傑作サスペンス。
プロローグ 第一章 フリーダイヤル 第二章 死化粧(デス・メーク) 第三章 デート・レイプ 第四章 顔のない殺人鬼(ハンター) 第五章 恐怖のデート 第六章 心の闇 第七章 最後のメッセージ エピローグ
十月十二日の午前中に、女性の遺体が発見されたのは、稲城(いなぎ)市内の、鶴川(つるかわ)街道からやや西に入ったところにある、プラスチック工場の敷地内だった。敷地内といっても工場の裏手の、現在は空き地になっている現場には、その気になれば誰でも入ることができる。 被害者は二十代後半から三十代はじめくらいの女性で、身元を示すようなものは所持していなかった。身長はおよそ百六十三センチ、栗色がかった長い髪をバレッタで留め、服装はピンクのワンピースの上に焦げ茶のジャケット、黒いサンダル。ハードコンタクトレンズを着用していたが、片方のコンタクトは紛失していた。 死亡原因は頸部圧迫による窒息死、首には索条痕(さくじょうこん)があった。つまり絞殺である。着衣は乱れていたが、レイプされた形跡はなかった。 所持品が見つからなかったわりには、被害者の身元は早期に判明した。というのも、被害者が遺体発見現場と同じ稲城市内に住んでいたからだ。 殺された女性は塩田晴子(しおだはるこ)三十二歳、七歳の娘とふたりで稲城市のアパートに住んでいた。一年ほど前に離婚して、現在は調布にあるスナックに勤めていた。 十月十一日の土曜日、塩田晴子は十二時前に勤め先のスナックを出ている。調布駅から京王線を使って稲城のアパートまで帰るのがいつものコースで、スナックのオーナーにも電車のあるうちに帰宅させてもらう約束が取りつけてあった。 十一日の夜、晴子はいつもどおり、日付が変わる前にスナックを出た。事実、調布駅から電車に乗り、稲城駅で降りたことは、駅員が記憶している。 いつもと違うところがあったとすれば、その夜の晴子が酔っていたことだ。ふだんなら客に勧められてもビールをコップに一、二杯呑む程度だが、その夜はビールに加えて、水割りを四、五杯は呑んでいた。 土曜日でスナックは暇だった。開店から閉店まで客はほんの三組だけで、いずれも近所に住む、気心の知れた常連ばかり。アットホームな雰囲気に気を許したのか、晴子はカラオケで客とデュエットし、勧められるままに、いつもよりたくさん呑んだ。ただし、足元がふらつくほどではなかったという。 塩田晴子が殺されたのは、日付が変わった十二日未明、それは間違いない。つまり、スナックの仕事を終えて電車に乗り、稲城駅で降りてから自宅に帰るまでの間に、何かが起きたことになる。晴子が住むアパートは、稲城駅から徒歩で約十分の距離にある。その十分の間に、何者かが彼女に接触し、殺害した。 工場裏の空き地で見つかった晴子の顔には、口紅が塗られていた。マスコミが「ついに三人めの被害者」と騒ぐのも無理はなかった。 だが、前のふたつの事件とくらべると、明らかな相違点がないでもない。塩田晴子の場合は、前のふたつの例と違って、最後にその姿が確認されてから、殺害されるまでの時間があまりに短い。時間だけでなく距離的にも近い。最後に晴子の姿が確認された稲城駅と、遺体発見現場とは、つい目と鼻の距離だ。犯人はやけに犯行を急いだ印象がある。それに前の二件の被害者と違って、塩田晴子の遺体は裸ではなかった。着衣は乱れていたが、乱されたのは殺害後という可能性もある。 ひょっとして、これは模倣ではないのかと、沙也は感じた。塩田晴子を殺した犯人は、これまで二件の『口紅殺人』を模倣して、捜査の目をごまかすつもりだったのかもしれない。これまで二件の死化粧に用いられたのは、毒々しいまでの赤い口紅だが、塩田晴子の顔に塗られていたのはピンク系の口紅という違いもある。 ただし、いくつかの疑問はあっても、世間の見方が「連続殺人」に傾くのはいたしかたなかった。死体遺棄現場が東京の西部に集中していることを指摘されると、なるほどと思わざるを得ない。前二件の殺人事件が未解決なだけに、警察の手ぬるさを非難する声とともに“三人めの被害者”塩田晴子の殺害事件は、これまで以上に大々的に報じられた。テレビをつけても新聞を開いても、いやでもこのニュースを目にした。 沙也は落ち着かなかった。塩田晴子はテレクラに電話したことがあっただろうかと考えた。殺害当日に塩田晴子が男性と会う約束をしていた様子はない。だが、テレクラで知り合った男と、過去にデートした経験がなかったとは言い切れない。 テレクラで知り合った男は、晴子がどこに住んでいるか、どんなパターンで生活しているかを知っていた。そして、十一日の深夜、帰宅途中の晴子を待ち伏せて……。 *この続きは製品版でお楽しみください。
【XMDF形式】
※注意 同一の書籍でもファイル形式が異なるものは別商品として取り扱っております。
デジタル初版:2006年1月26日
ジャンル:和書>小説・ノンフィクション>ミステリ小説>日本ミステリ小説 著: 岡江多紀 発行: 祥伝社
和書>小説・ノンフィクション>ミステリ小説>日本ミステリ小説 |
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