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世紀末童話集

世紀末童話集


発行: キリック
価格:400pt
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 藤本 信行(ふじもと のぶゆき)
 日本シナリオ作家協会会員。原産地・宮城県。テレビの助監督を経て、「青島幸男の意地悪ばあさん」でライターデビュー。以後、モノカキを生業とし、書くことなら躊躇なく恥でもなんでも書いて現在に至る。座右の銘は「明日出来ることは今日するな」
 主な作品……『X―1118』『のび太の結婚前夜』『おばあちゃんの思い出』『がんばれジャイアン』『ぼくの生まれた日』(以上劇場映画シナリオ)。『意地悪ばあさん』『月曜ドラマランド』『一休さん・喝!』『妊娠ですよ』(以上デレビドラマ)。『宇宙船サジタリウス』『私のあしながおじさん』『金髪の少女ジェニー』『グランダー武蔵』『ドラえもん』『戦争童話集』『ふぉうちゅんドッグす』(以上テレビアニメ)。他にノベライズ小説・マンガ原作・短編小説・企業VP構成演出、各種ビデオ作品等などを手がける何でも屋。

解説

 時は2257年。過去に遡ること350年前に書かれたという童話や伝承を取材し、編集した世紀末童話集が今ここに……。
 一組の裕福な生活を送り、恋人同士の様に暮らしている夫婦が子供との関係について悩み、一つの大いなる決断を下す『DINKS』
 ベランダで干された下着の近くで黒い人影を帰宅途中に偶然にも目撃してしまい、事件に巻き込まれてゆく『目撃者1』
 見た夢が現実となってゆく事を知り、出世争いにそれを利用しようとする男の人生『正夢』など、どことなくノンフィクションとも感じるようなリアルな描写、最後まで解らないストーリーと結末が書かれた藤本信行のショートストーリー作品を満載したオリジナル童話集。様々なミステリアスかつバラエティー豊かな世界観が堪能出来る一冊。

目次

二一世紀編
DINKS
目撃者I
目撃者II
ふたり
疑惑
普通の々
多数決
友情
リサイクル
正夢
聖職
賑やかなマイホーム
ナースコール
モニター
名刺

抄録

『DINKS』


 ここに一組の夫婦がいる。
 結婚して十年……そろそろ中年と言う言葉が似合い始めた二人だが、若さを失ってはいない。共働きの二人は生活も裕福だし、いまだに恋人同士のように新鮮だ。
 そんな夫婦が一般的になりつつある社会……ゆとりある人生がただの絵に描いた餅ではなくなった社会がここにある。
 時は現代よりほんの少し未来……。
 ちょっと待って……未来=即、SFと思わないで……これはすぐそこまで来ている……そう、明日にも起こるかも知れない話なのだから。
 その日、二人は仕事を早く切り上げて、デパートで待ち合わせした。恋人同士のように腕を組み、映画のワンシーンのようにショッピングに向かう。目指すはオモチャ売り場。
 様々なオモチャが音を立て、奇妙に動き回って騒々しく客の注意を喚起する。たくさんの客が、少しでも楽しい物を求めて物色している。孫へのプレゼントでも買いに来たのだろう、裕福そうな老夫婦が可愛らしい人形を選んでいる隣で、その二人も、小学生の男の子が欲しがるようなオモチャを楽しげに選んでいる。
 どこにでも見られる光景……だが、どことなくおかしな雰囲気……。
 何故だろう? オモチャ達の奏でる賑やかな音や音楽の中に、子供達の歓声や走り回る足音が聞こえない。今はまだ学校の時間なのだろうか……。
 しかし、誰一人妙な顔もせずにオモチャを選んでいる。勿論二人も、何の違和感も感じる事なくバットとグローブ……それに大きな箱に入ったプラモデルと、高価な鉄道模型を買った。
 「雄也の奴、喜ぶだろうな」
 夫はそう言って買ったばかりのグローブをポンと叩く。
 「野球帽も買ってやりましょうよ」
 妻も満面に笑みをたたえて夫の手を引き、別の売り場へと向かった。
 今日は一人息子の雄也の誕生日なのだ……素敵なプレゼントをたくさん買って、盛大なバースデーパーティーを開いてやるのだ。
 二人はその後、地下の食品売り場を回って大きなケーキと、たくさんのお菓子を買った。
 理由を知らない我々が見たら……猫っ可愛がり……そう言うに決まっている。だが、ここにはそんな事を言う者はどこにもいない。
 瀟洒な一戸建ての駐車場に乗り入れた車から、二人は苦労して荷物を降ろす。
 「あなた急がないと雄也が帰って来ちゃうわよ」
 「そうだな、こんな所を見られたら、雄也の奴、楽しみが半減しちまうものな」
 二人は笑みを浮かべて仕事を急いだ。
 それから一時間後。広いリビングは盛大なバースデーパーティーにふさわしく豪華に飾り付けられ、美しい包装紙に包まれたたくさんのプレゼントが雄也の帰りを待っていた。
 妻が壁の時計に目をやり、いそいそとエプロンを外す。
 「もう帰ってくるわ」
 「驚くぞ」
 二人が顔を見合わせて微笑した時、果たして玄関のチャイムが鳴った。
 「ただいま!」
 玄関のドアを開けて雄也が帰って来た。小学校四年生。半ズボンにTシャツ、そしてランドセルを背負っている。
 雄也は、靴を脱ぐと玄関で一瞬室内の様子を見回し、迷う事なくリビングへ向かう。
 雄也が、リビングのドアを開けて入って来た瞬間、帰りを待っていた二人が盛大にクラッカーを鳴らし、一瞬キョトンとしている雄也を奪い合うようにして抱きしめた。
 「誕生日おめでとう」
 「雄也、おめでとう」
 「あっ、そうか、今日ボク誕生日だったんだ」
 雄也はすぐに事態を飲み込むと、嬉しそうに部屋中を見回した。
 「ほらパパからのプレゼント」
 「こっちはママからよ」
 一斉にプレゼント攻撃を受けて、雄也は、どう嬉しさを表現していいのか解らないと言うように黙っていたが、すぐに一つ一つ包みを開き、オモチャが飛び出す度に素直に歓声を上げて見せた。
 「さあ、雄也、ケーキ、ケーキ、おい、ロウソク立てて」
 夫は、雄也をテーブルに着かせようと肩を抱いたが、雄也は急に体を強ばらせて言った。
 「まず手を洗ってうがいをしなくちゃ……そういう決まりじゃないか」
 「そっ、そうだな」
 「そうよ、ばい菌がついてるんですから。もうパパったら……」
 妻は、そこで一瞬顔を曇らせたが、すぐにまた笑顔を作る。
 「そう言えばパパも手を洗ってなかったわね」
 「そっ、そうか、パパも手を洗おう。雄也、洗面所に行こう」
 夫は、少し強ばった顔を苦笑いでごまかし、雄也を案内するように洗面所に向かった。途端に妻は時計を見上げ、急いでケーキの用意を始めた。
 パーティーが始まり、ロウソクを一度に吹き消す雄也を夫が写真に撮る。何枚も、何枚も……。そして家族の和やかな団欒が続く筈だったが、妻は先ほどから時計が気になって仕方がない……。パーティーが……どこにでもある筈の家庭の団欒が楽しければ楽しいほど、時計を気にする回数が増える。
 「おい……」
 気付いた夫が軽くたしなめると、妻はご馳走に向かって健康な食欲を見せる雄也から目をそむけ、悲しげにため息をついた。
 パーティーが始まってから二時間が経とうと云う頃、妻は耐えられないと言った顔でテーブルを離れ、雄也に背を向けて嗚咽を漏らした。
 「駄目じゃないか、せっかくの楽しい日に……」
 キッチンに立った妻の背後から夫が小く声を掛けた。
 「ねえあなた、もう少し……もう少しだけ……」
 妻は哀願するように夫を見つめる。
 「駄目だよ、そんな事したら……」
 と、壁掛け時計が時報のメロディを流し始めた。
 

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