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久住先生の誤算

久住先生の誤算

著: 新田一実
発行: オークラ出版
レーベル: アクア文庫 シリーズ: 久住先生シリーズ
価格:945円(税込)
10ポイント還元
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★☆☆☆☆1
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著者プロフィール

 新田 一実(にった かずみ)
 女性2人のペンネーム。出身地/高知県&静岡県 星座/山羊座&魚座 血液型/A型&A型 趣味/S→パン作り G→編み物と車 誕生日/1月16日&2月26日。

解説

 久住鷹哉(くずみたかや)29歳。スポーツカーを乗り回す色男は、知る人ぞ知るイラストレーターだ。最近の日課は、ガソリンスタンドで見つけた浪人生のアルバイト・黒川昌毅をイジメること。
 バイト中にデートに誘うなど、やりたい放題の久住に対し、引きつる表情を見せる黒川くんの反応が楽しくて仕方がない性悪の久住。それも黒川くん可愛さゆえの所行なのだが、ある日久住のイジめの度が過ぎてしまって……!! 久住&黒川の年の差恋愛事情に、文庫オリジナルストーリーを収録!

目次

久住先生の困惑
久住先生の誤算
久住先生の友達 ――類は友を呼ぶ――
黒川くんの陰謀
あとがき

抄録

「だから、ほら、やってやるから。自分じゃ切れないだろう?」
 露出するための服と言えばいいのか。
 黒のボンデージ・スーツは、身体の線をくっきりと浮かび上がらせるものだ。胸から臍(へそ)の下までが開き、ランダムに走る細いベルトが、エナメル風のビニール・レザーをどうにか止めているという、恐ろしく露悪(ろあく)的なデザインである。
「いい。自分でやる」
 昌毅が真剣な顔で告げる。
「切れないだろう? もし、腹を切ったらどうするんだ? そんな恰好して救急車で運ばれるのは厭だろう?」
 くすくすと、楽しげに笑う久住は、少年の手からナイフを取り上げると、嬉しげにベルトを切り始めた。
 ビニール・レザーは裏打ち布を接着剤で貼り付けているために、文具用の鋏(はさみ)は役に立たなかったのだ。切れないだけならまだしも、下手にベルトを引っ張ると、色々なところが引き攣れる始末だ。
 裁ち鋏ならどうにかなったかもしれないが、男の一人暮らしではそんな物があるはずもない。カッターの類なら、デザイン用から工具用のものまで可成の数を取り揃えているが、鋏は安物のステンレスのものしかなかった。
「……この、首輪はどうしようもないな。よし、まず首周りを切るぞ」
 犬の首輪と表現するしかないチョーカーは、身体を走るベルトを止める金具ががっしりと鋲(びょう)で止められている。しかも、止め具にはご丁寧に錠(じょう)まで付いていた。
 鍵が無くなった時点で、この服は切り裂かれる運命にあったのだ。そう自分に言い聞かせた久住は、首輪の下の細紐を断ち切っていった。
 肌に走るベルトを切り、服から切り離された首輪を回す。
「ほれ、顎上げて」
 昌毅が思い切り首をのけぞらせるのを待って、分厚い首輪の下に指を差し入れた。
「我慢しろ。……暴れると切れるぞ……」
 ごくりと咽喉を鳴らした少年が、硬く目を閉じた。一番切れ味が良いからと選んだカスタム・ナイフは、いかにもそれらしい厳(いか)ついものである。たとえ己れの命を狙うものではなくても、突き付けられれば恐ろしいだろう。
 恐怖のためか、青褪めた顔が、妙な色気を湛えている。
 震える瞼(まぶた)から視線を下ろした久住は、目に飛び込んできた肢体(したい)に、息を呑んだ。
 細いベルトと首輪の後ろ側だけで身体に貼り付いていた服が、だらりと垂れ下がっている。ベルトに擦(こす)られ、赤い筋を刻んだ肌が、ぞくりとするほど色っぽい。
 緊張に張り詰めた筋肉が、浅い呼吸に連れて僅(わず)かに動く。
「……久住さん?」
 その声に、慌てて久住は首輪に注意を引き戻した。
 綺麗な陰を持つすんなりとした身体に、見惚(みほ)れていた。信じられない事に、こんな子供の身体から、目が離せなくなったのである。
「しっかし、これほど似合うとはねぇ……」
 思わず本根が漏れる。
「……な……」
 ぱっと顔を赤らめた昌毅が、目を見開く。
 本人はそんな気はないだろうが、見蕩(みと)れるには充分だった。
「こんなに色っぽくなるなんて、ちょっと反則だぞ」
「なにがっ……!」
 昌毅が身動(みじろ)いだ瞬間、尖った切っ先が咽喉元に食い込むように触れる。
「ひっ……」
「バカ! 動くな!」
 怒鳴られて身体が強張るのを見届けて、素早く首輪にナイフを入れる。首輪は思う以上に簡単に切り裂かれ、首から滑り落ちた。
 先ほど切っ先の触れた場所に、血が小さい玉になって盛り上がっている。血の色に当てられた訳でもないだろうに、首輪の跡が薄っすらと付いた、決して女には見えない首が、困ったことに久住を煽(あお)った。
「……血が出てる……」
「嘘……」
 一瞬にして青褪めた昌毅が、怯えた目を久住に向ける。
「嘘じゃないって」
 苦笑しながら、指先でぽつりと滲んだ血を拭うと、昌毅の目の前に差し出した。
 引き攣った昌毅の頬を、軽く指先で辿ると、宥めるように付け足す。
「大したことはない」
「で……でも」
 怯えた表情が、いい。
「大丈夫、舐めときゃ治るって……」
 そう告げて、本当に咽喉を舐め上げる。
 昌毅は息を呑み、久住の肩を突き退けた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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