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著者プロフィール
梅津裕一(うめつ ゆういち)
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
解説
高校生の新一が目覚めたのは「安楽死館」という名の洋館。屋敷には7種の自殺用装置が用意された部屋があり、招集された新一を含め7人の自殺志願者には、そこで7日以内に安らかに自殺する権利が与えられていた。そして7日過ぎても生存している人間には、むごたらしい苦痛に満ちた生が待っているという。
自殺用装置を使って一日に自殺できるのは一人だけ。そして、一日が経過するごとに、死の際の恐怖と苦痛は大きくなるらしい。彼らを待ち受ける恐怖の7日間とは……?
前編に続く恐怖の後編!
自殺用装置を使って一日に自殺できるのは一人だけ。そして、一日が経過するごとに、死の際の恐怖と苦痛は大きくなるらしい。彼らを待ち受ける恐怖の7日間とは……?
前編に続く恐怖の後編!
抄録
「ほら……どうした、できないのか?」
霧野が呆れたように言った。
押せば俺は人殺しの仲間入りか。いや、違う、これは自殺を手伝っただけだ……。
いい加減、覚悟を決めろ、新一は改めて自分にそう言い聞かせた。そうしなければ、いつまでも台の上の男は死への恐怖に苦しむだけだ。
「マダ……? ハヤ……ク……」
男の不安げな声に、新一は答えた。
「安心しろ!
いますぐに、楽にしてやる……楽に……そう、楽にしてやる!」
絶叫すると、新一は、ボタンを押した。
かちん、というなにか掛けがねがはずれるような音が鳴った瞬間、青光りするギロチンの刃が下にむかって落下していく。
「ぎゃああああああああああああっ!」
肉と骨がなにか硬いものとぶつかるような音とともに、凄まじい苦痛に満ちた悲鳴が自殺室にこだました。
ギロチンの刃は、男の首にはまったままで、完全に切断してはいなかった。おそらく、頸骨の上のあたりで刃が止まってしまっているのだろう。
体じゅうに嫌悪と恐怖がはい回るのを新一は感じていた。
「イタイヨ……イタイタイタイタイタアア」
苦痛に首をよじらせて、傷だらけの男がのたうちまわっていた。首からはわずかに血が噴き出しているだけで、致命傷には至らなかったらしい。
『おやおや……残念ながら、一度では首を切断できなかったようですね』
安楽死館の主催者の、ヴォイスチェンジャーで変えられたような声が愉快げに言った。
『実際、ギロチンではこの手の事故が頻発したそうです。というより、そもそも一度に首がすっぱり切れる、などというのはあくまで作り話。本気で首を切り落とすためには、何度も何度も、刃を落とさせねばなりません』
知っていた。当然だ。主催者はこのことを知っていたのだ。
今日はすでに四日目であり、昨日の電気椅子よりもギロチンのほうが苦痛に満ちた死を迎えるはずだ。もっと早く気づくべきだったがときすでに遅しというものだった。
「くそっ……くそっ、どうすれば、刃を上にあげられるんだ!」
新一の問いに、主催者が答えた。
『ご安心ください。このギロチンはこのような事故を想定し、自動的に電気モーターで刃が上に戻るよう設計されています。そのためには、再度、ボタンを押してください』
震える手で、新一はボタンを押した。
だが、刃はなかなか動かなかった。
すでに傷口にはまりこんだ刃は周囲の収縮する筋肉によってがっちりと挟まれたようになっているらしい。モーターが駆動するものとおぼしき甲高い電気音が聞こえてきたが、なかなか刃は動かない。
「イタアアアアアアアアアイタイヨオオオオオ……ママアアアアア」
叫ばないでくれ、と新一は思った。
やがて、赤い血に染まったギロチンの刃はいらだたしいほどに緩慢な動きで上にむかって動いていった。
今度こそ、死なせてやる。いや、頼むからこれで死んでくれ。
新一は祈るような気持ちで、ボタンを再び、押した。
しゃっという蛇の威嚇音のような音とともにギロチンの刃が重力の力により落ちていく。
「ギャアアアアアアアッ」
首を固定された男が、激痛に耐えかねたように手足をばたつかせ、体をよじらせた。
まだ刃は男の脊髄の重要な神経などを切断できないらしい。そのくせ、しっかりと苦痛は感じているようだ。
「くそっくそっくそっ」
凄まじいパニックめいた感覚に襲われ、新一は必死になってボタンを押した。
またギロチンが上に上げられ、下にむかって落とされる。そして、再度の悲鳴。
どうなっているんだ、と頭のなかが真っ白になっていくのがわかった。
「ははあ……なるほどねえ」
霧野がけらけらと笑い声をあげた。
「これ、わざとギロチンの刃、軽くしてるんだな……簡単に、死なないように」
簡単には死なせない、そういうことか。
もっと早く気づくべきだったのだ。ここは四日目の自殺室なのだ。その器具は当然、以前使われたどんな装置よりも苦痛に満ちた死を自殺者に与えるのだ。
いつしか、涙が両目から溢れていくのがわかった。
「ママア! ママア! ママアアアアア!」
傷だらけの男が、母に助けを求めていた。
何度もボタンを押すたびに、ギロチンの刃が落ちる。そのたびに音が痛みに耐えられずに凄まじい絶叫を放つ。これはまるで悪夢だ。
泣きながら新一はボタンを押し続けた。
なぜ、この男にこれほどの苦痛が与えられればならないというのか。なぜこんな理不尽なことがまかり通るのか。
いままではこの状況に恐怖と困惑だけを感じていた。だが、いま、新一が抱いている感情は、このようなおぞましい館をつくった者たちに対する心の底からの怒りだった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
霧野が呆れたように言った。
押せば俺は人殺しの仲間入りか。いや、違う、これは自殺を手伝っただけだ……。
いい加減、覚悟を決めろ、新一は改めて自分にそう言い聞かせた。そうしなければ、いつまでも台の上の男は死への恐怖に苦しむだけだ。
「マダ……? ハヤ……ク……」
男の不安げな声に、新一は答えた。
「安心しろ!
いますぐに、楽にしてやる……楽に……そう、楽にしてやる!」
絶叫すると、新一は、ボタンを押した。
かちん、というなにか掛けがねがはずれるような音が鳴った瞬間、青光りするギロチンの刃が下にむかって落下していく。
「ぎゃああああああああああああっ!」
肉と骨がなにか硬いものとぶつかるような音とともに、凄まじい苦痛に満ちた悲鳴が自殺室にこだました。
ギロチンの刃は、男の首にはまったままで、完全に切断してはいなかった。おそらく、頸骨の上のあたりで刃が止まってしまっているのだろう。
体じゅうに嫌悪と恐怖がはい回るのを新一は感じていた。
「イタイヨ……イタイタイタイタイタアア」
苦痛に首をよじらせて、傷だらけの男がのたうちまわっていた。首からはわずかに血が噴き出しているだけで、致命傷には至らなかったらしい。
『おやおや……残念ながら、一度では首を切断できなかったようですね』
安楽死館の主催者の、ヴォイスチェンジャーで変えられたような声が愉快げに言った。
『実際、ギロチンではこの手の事故が頻発したそうです。というより、そもそも一度に首がすっぱり切れる、などというのはあくまで作り話。本気で首を切り落とすためには、何度も何度も、刃を落とさせねばなりません』
知っていた。当然だ。主催者はこのことを知っていたのだ。
今日はすでに四日目であり、昨日の電気椅子よりもギロチンのほうが苦痛に満ちた死を迎えるはずだ。もっと早く気づくべきだったがときすでに遅しというものだった。
「くそっ……くそっ、どうすれば、刃を上にあげられるんだ!」
新一の問いに、主催者が答えた。
『ご安心ください。このギロチンはこのような事故を想定し、自動的に電気モーターで刃が上に戻るよう設計されています。そのためには、再度、ボタンを押してください』
震える手で、新一はボタンを押した。
だが、刃はなかなか動かなかった。
すでに傷口にはまりこんだ刃は周囲の収縮する筋肉によってがっちりと挟まれたようになっているらしい。モーターが駆動するものとおぼしき甲高い電気音が聞こえてきたが、なかなか刃は動かない。
「イタアアアアアアアアアイタイヨオオオオオ……ママアアアアア」
叫ばないでくれ、と新一は思った。
やがて、赤い血に染まったギロチンの刃はいらだたしいほどに緩慢な動きで上にむかって動いていった。
今度こそ、死なせてやる。いや、頼むからこれで死んでくれ。
新一は祈るような気持ちで、ボタンを再び、押した。
しゃっという蛇の威嚇音のような音とともにギロチンの刃が重力の力により落ちていく。
「ギャアアアアアアアッ」
首を固定された男が、激痛に耐えかねたように手足をばたつかせ、体をよじらせた。
まだ刃は男の脊髄の重要な神経などを切断できないらしい。そのくせ、しっかりと苦痛は感じているようだ。
「くそっくそっくそっ」
凄まじいパニックめいた感覚に襲われ、新一は必死になってボタンを押した。
またギロチンが上に上げられ、下にむかって落とされる。そして、再度の悲鳴。
どうなっているんだ、と頭のなかが真っ白になっていくのがわかった。
「ははあ……なるほどねえ」
霧野がけらけらと笑い声をあげた。
「これ、わざとギロチンの刃、軽くしてるんだな……簡単に、死なないように」
簡単には死なせない、そういうことか。
もっと早く気づくべきだったのだ。ここは四日目の自殺室なのだ。その器具は当然、以前使われたどんな装置よりも苦痛に満ちた死を自殺者に与えるのだ。
いつしか、涙が両目から溢れていくのがわかった。
「ママア! ママア! ママアアアアア!」
傷だらけの男が、母に助けを求めていた。
何度もボタンを押すたびに、ギロチンの刃が落ちる。そのたびに音が痛みに耐えられずに凄まじい絶叫を放つ。これはまるで悪夢だ。
泣きながら新一はボタンを押し続けた。
なぜ、この男にこれほどの苦痛が与えられればならないというのか。なぜこんな理不尽なことがまかり通るのか。
いままではこの状況に恐怖と困惑だけを感じていた。だが、いま、新一が抱いている感情は、このようなおぞましい館をつくった者たちに対する心の底からの怒りだった。
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