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牙と爪の愛撫

牙と爪の愛撫


発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆5
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著者プロフィール

 二條 暁男(にじょう あきお)
 温泉とエスニック料理を追いかける獅子座のA型。長野県出身だけどザザ虫もローメンも食べられないヘタレ。さいきん新潟の海岸で翡翠原石を拾ったものの、加工賃の見積もりに卒倒。仕方ないから床の間に飾ってある。

解説

 東北を牛耳る耀鸞会とマル暴刑事の贈収賄疑惑を探るため、監察官の城島は流れのチンピラを装い耀鸞会へ潜入する。若頭の桐野は、男である城島が惚れ惚れしてしまうほどの超美形。ところが何とその桐野に見染められ、城島は愛人の座についてしまうのだった! 男など相手にしたことない城島だが、任務遂行のために桐野に抱かれることを決心する──。サディスティックな美形ヤクザとエリート監察官の激烈ラブアフェア!!
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

 やくざに抱かれるためにキャリアの階段を駆け上がってきたわけじゃないんだ。みんななにもかもすべて、監察官という仕事のためだ。いくらそう言い聞かせても、嗚咽を殺すことができないのだ。やくざとの関係に屈した警察官たちも、こんなひりつく恥辱を舐めたのだとおもうと、刑務所に送った一人一人の顔が浮かんでは消えていった。
 しかし、彼らへの贖罪のために、残忍な獣に自分の血肉を与えたようにはどうしても思えなかった。俺は今夜、自ら男を求め、受け入れ、尻を振った。淫らな言葉でねだりすらした。捜査なのだと言いのがれながら、堕落したのだ。
「何を泣いてるんだ」
 不意に抱きすくめられた。桐野が長い腕を伸ばし、俺の体を腕の中に絡めとるように引き寄せたのだった。
「男と寝るのがはじめてじゃないなんて、そんな嘘、どうしてついたんだ」
「ちがい……ます、俺は……泣いてなんか……」
 俺は息が詰まって、答えることが出来なかった。
 先ほどのセックスで、桐野が満足していないのはあきらかだった。彼の失望は、すなわち潜入捜査の失敗を意味する。涙を流しながらも、俺はどうしてもこの場面を取り繕う方法を必死になって考えねばならなかった。
「あなたに抱かれたかった。そういう理由じゃいけませんか」
 桐野が、ベッドサイドのランプを点けた。彼の顔を見上げた瞬間に、涙が熱い糸となって眦からこめかみへと流れていった。
「僕に抱かれたいなんて言ってるのは、もしかして、このことがあるから?」
 彼はベッドサイドから封筒を取り上げた。
「六反田勝俊……こっちも偽名か」
「……」
 桐野の目には、微笑みが浮かんでいた。
「やっぱりか……。だけど、いい。こっちでは城島慎吾で通せばいい。きみには慎吾のほうが似合う」
 俺は枕から顔をあげて桐野を見た。強い視線になっていた。
 桐野は封筒の中から、一枚の紙をとりだして見せた。
「実は、きみがうちに来る前に届いていたんだ。最初はわからなかったよ。……まったく、髪型や髪の色で、ずいぶん人相が変わるんだな」
 紙は、破門状と印刷された、この世界独特の回状だった。髪型はリーゼントスタイルで、眉毛が半分ほど消えた、俺の顔写真があった。もちろん警察庁で作成した偽物だ。
「もっと男前に写ったのが、たくさんあったんだけど」
 俺は紙を受け取ると、端をライターであぶって灰皿にのせた。めらめらと燃え上がる焔の中で、画像編集ソフトで作成した偽物の俺の顔が消えていった。
「あしたになったら破門状を見たうちの組員が騒ぎはじめる。きみも知ってるとおり、破門状を回されるような人間は組の系列に関係なく拾ってはならないんだ」
 破門状には、白い紙に墨字で印刷された通常破門と、赤インクで印刷された赤色破門、黒い紙に白か銀で印刷された黒色破門があり、黒は絶縁状と同じ扱いとなる。これを回されたらたとえ裏稼業といえどどうにもならない。だが、赤色破門となっても、他県に移り系列が変われば拾う組はある。この世界は万年人手不足だからだ。
「だけど、たかが白色だし、弟を助けてくれた恩人だし。いまどき破門状なんて古くさいしきたり、若い者はよく知らないしね。六反田は別人で、単なる他人のそら似ってことにしておけばいい」
「すみません。折を見て自分から話すつもりでした」
ただのハク付けぐらいにしか利用できないと思っていた偽の破門状に、なんとか救われた。俺はほっと胸をなでおろした。
 殊勝にも起きあがって、頭を下げると、声がひどく嗄れていた。あの、気の狂うような焦燥感はすっかり消えていたものの、体の中に、まだ桐野がいるような感覚が残っていた。
「前の組で、組長の姐さんに誘われて、ちょっと……。でも、そのぐらいでまさか破門状を回されるとは思いませんでした」
 自分は、なんてスラスラと淀みなく嘘がつけるのだろう、と思った。
「女はこういう顔が好きだからね」
 桐野は俺の髪に指を差し入れると、何度かゆっくり梳いたあと、額に触れるだけの口づけを落とした。男の体温を、これほど快く感じることに、俺は不安と目眩を覚える。たぶん、美しい秋の、はるか向こうに感じる冬の気配のせいだろう。さもなくば、酒のせいだ。
「きみのはじめての相手に選んでくれて、ありがとう」
 そう言うと、彼は無邪気な子供のように微笑んだのだった。
 その瞬間、胸に突き刺さってくる何かがあった。それが何であるかはわからなかったが、確かに棘のように俺に突き刺さったものがあったのだ。もしかしたら――。
 まさか、キャリアのエリート街道を脇目もふらず懸命にひた走る、この俺が。
 俺は自分で自分の両腕を掴み、胸を抱きしめるようにして戦慄した。何かが始まろうとするときの、ひたひたと押し寄せる期待と、寒気がするような恐怖感が、鼻の奥で複雑に入り交じる。
 やくざの、しかも男となど。俺の人生にあってはならない事なのだ。頭を振って強くうち消すと、目を瞑った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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