和書>小説・ノンフィクション>ライトノベル>ミステリー
著者プロフィール
久美 沙織(くみ さおり)
1959年4月30日、盛岡市生まれ。O型。上智大学文学部哲学科卒業。
79年「水曜日の夢はとても綺麗な悪夢だった」でデビュー。集英社文庫コバルト・シリーズに、「宿なしミウ」「抱いてアンフィニ」「丘の上のミッキー」シリーズなどがある。
また、「MOTHER」「ソーントーン・サイクル」シリーズなどSF・ファンタジーの分野でも傑作を発表。実力派作家として活躍するかたわら、小説家志望者たちの育成にも力を注いでいる。
1959年4月30日、盛岡市生まれ。O型。上智大学文学部哲学科卒業。
79年「水曜日の夢はとても綺麗な悪夢だった」でデビュー。集英社文庫コバルト・シリーズに、「宿なしミウ」「抱いてアンフィニ」「丘の上のミッキー」シリーズなどがある。
また、「MOTHER」「ソーントーン・サイクル」シリーズなどSF・ファンタジーの分野でも傑作を発表。実力派作家として活躍するかたわら、小説家志望者たちの育成にも力を注いでいる。
解説
喫茶店の美人ママが、身長190センチの巨漢につきまとわれているのだという。彼女を助けようとした男たちもコテンパンにされてしまい、もはや打つ手がない。ママを救うため乗り出したせりかだが……?
表題作ほか、ドライバーを無理心中に引きずり込む呪われた中古車の謎を追う「雪に消えた旋律」、マンションの空室のボヤと、女子高生殺害の関係を探る「EXの悲劇」、そしてぽっかりと訪れたエアポケットな日に、恋人兼大家である遙(はるか)への想いをせりかが語る「午前十時の白ワイン」を収録した、半熟探偵せりかのときめきミステリー短編集!
表題作ほか、ドライバーを無理心中に引きずり込む呪われた中古車の謎を追う「雪に消えた旋律」、マンションの空室のボヤと、女子高生殺害の関係を探る「EXの悲劇」、そしてぽっかりと訪れたエアポケットな日に、恋人兼大家である遙(はるか)への想いをせりかが語る「午前十時の白ワイン」を収録した、半熟探偵せりかのときめきミステリー短編集!
目次
百九十センチの迷惑
午前十時の白ワイン
百九十センチの迷惑
雪に消えた旋律
EX(エクス)の悲劇
午前十時の白ワイン
百九十センチの迷惑
雪に消えた旋律
EX(エクス)の悲劇
抄録
あたしは神奈川県警に電話を入れた。
「もしもし、福田(ふくだ)警部?」
「はぁ。自分でありますが」
前歯から息が漏(も)れる懐かしいスー音が聞こえて、あたしは吹き出しそうになった。
「スー……、どちらさんでしょうか?」
「舞(まい)せりかです」
受話器の向こうで、がたがたなにかがひっくり返る音がした。
「もしもし?」
「お……脅かすんじゃねぇ! おまえらまたなにかヤバいことに足つっこんでんだろう! 腰越(こしごえ)付近で車ごとダイブして、漁船二隻を大破させ、当人は重症で危篤だっつーから、弔電(ちょうでん)と花輪と赤飯を手配するところだったんだぞっ!!」
失礼ねー。
「あたしは無実だけどね、その飛び込み自殺した車の前科を知りたいの。県警には交通事故の調書のリストあるでしょ。それ、データ化して検索(けんさく)できるようになってるわよね? ちょこーっとアクセスさせてくれると助かるんだけど」
ひと呼吸間があって、鋭く耳から離しておいた受話器から唾(つば)が飛び散りそうな怒鳴り声が聞こえてきた。
「ばかもの! んーなことできるわけがなかろーが!!」
やーね、公務員って、ほんっとに融通(ゆうずう)きかないんだから。
「あのね、あたしその前科者の車にあやうく、心中させられるとこだったのよ」
「し……心中だぁ?」
「そうよ。これはオカルト事件なの。被害者が加害者のことを知りたくなるの、当然でしょう? ね、お願い。あたしたちおともだちじゃないの」
「だれがおともだちだ!!」
いかんな。作戦を変えるか。
「……あん……怒っちゃ、いやよ……」
あたしはおとっときのフェロモン刺激声を出した。
「ねぇ……警部さんは、地獄のお釜の数歩手前からやっとの思いで生還(せいかん)してきたかわいそうなあたしの、ほんのちょっとしたかわいらしいお願いを聞いてくだされないほど、冷たいひとじゃないはずでしょ……違う?」
色っぽいため息まじりのおねだり声を出しながら、あたしは、後ろで聞いている遙とトミーに、脈ありサインをしてみせた。スー音がせわしくなってきたのよね。
これだけは、あたし絶対に才能あると思うの。なにせ、もとプロだからねー。
「……ね……だれにもわからないし……いけないことなんかじゃないの。あたしの警部さん、ふたりだけのひ・み・つ……信用、してくれない?」
「そ……そんなこたぁないが……」
「じゃあ。警察のコンピューター・ネットの電話番号と、今日のパス・ワード。ちょっと、つぶやいてみせてくださらない? ほんの、ひとりごとって感じで。ね? ……さぁ……来て……いって……おねがい……」
「スー! スー! スー! スー!」
(「雪に消えた旋律」より)
「もしもし、福田(ふくだ)警部?」
「はぁ。自分でありますが」
前歯から息が漏(も)れる懐かしいスー音が聞こえて、あたしは吹き出しそうになった。
「スー……、どちらさんでしょうか?」
「舞(まい)せりかです」
受話器の向こうで、がたがたなにかがひっくり返る音がした。
「もしもし?」
「お……脅かすんじゃねぇ! おまえらまたなにかヤバいことに足つっこんでんだろう! 腰越(こしごえ)付近で車ごとダイブして、漁船二隻を大破させ、当人は重症で危篤だっつーから、弔電(ちょうでん)と花輪と赤飯を手配するところだったんだぞっ!!」
失礼ねー。
「あたしは無実だけどね、その飛び込み自殺した車の前科を知りたいの。県警には交通事故の調書のリストあるでしょ。それ、データ化して検索(けんさく)できるようになってるわよね? ちょこーっとアクセスさせてくれると助かるんだけど」
ひと呼吸間があって、鋭く耳から離しておいた受話器から唾(つば)が飛び散りそうな怒鳴り声が聞こえてきた。
「ばかもの! んーなことできるわけがなかろーが!!」
やーね、公務員って、ほんっとに融通(ゆうずう)きかないんだから。
「あのね、あたしその前科者の車にあやうく、心中させられるとこだったのよ」
「し……心中だぁ?」
「そうよ。これはオカルト事件なの。被害者が加害者のことを知りたくなるの、当然でしょう? ね、お願い。あたしたちおともだちじゃないの」
「だれがおともだちだ!!」
いかんな。作戦を変えるか。
「……あん……怒っちゃ、いやよ……」
あたしはおとっときのフェロモン刺激声を出した。
「ねぇ……警部さんは、地獄のお釜の数歩手前からやっとの思いで生還(せいかん)してきたかわいそうなあたしの、ほんのちょっとしたかわいらしいお願いを聞いてくだされないほど、冷たいひとじゃないはずでしょ……違う?」
色っぽいため息まじりのおねだり声を出しながら、あたしは、後ろで聞いている遙とトミーに、脈ありサインをしてみせた。スー音がせわしくなってきたのよね。
これだけは、あたし絶対に才能あると思うの。なにせ、もとプロだからねー。
「……ね……だれにもわからないし……いけないことなんかじゃないの。あたしの警部さん、ふたりだけのひ・み・つ……信用、してくれない?」
「そ……そんなこたぁないが……」
「じゃあ。警察のコンピューター・ネットの電話番号と、今日のパス・ワード。ちょっと、つぶやいてみせてくださらない? ほんの、ひとりごとって感じで。ね? ……さぁ……来て……いって……おねがい……」
「スー! スー! スー! スー!」
(「雪に消えた旋律」より)
本の情報
この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます
形式
【XMDF形式】
XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。
対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。


























