和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>御曹司
著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
6月9日生まれ東京都出身。魚座・A型。趣味は映画・舞台・格闘技・F1鑑賞。プラチナ文庫、ルビー文庫、アズ・ノベルズなどで作品を多数発表。
解説
スーツ姿も眩しい「山吹海運」の御曹司・山吹廉太郎は、昼下がりの優雅なお茶の時間を楽しんでいた。そこに飛び込んできたのは、マネージャー・小出だ。庶民に大人気の「クール麺」を食べに中華街へ行こうというのだ。しぶしぶ出かけた廉太郎だが、そこで出会った「クール麺」の作り手・風明は、廉太郎の安穏な生活をひっくり返すほどの輝きを放っていて……!?
抄録
「中華のファーストフード感覚であの店を始めたんだろうけど、あれだけやっていたら君の腕も舌も鈍るよ」
言ってはいけなかったかもしれない。プールの天井を見つめていた風明の顔には、その時なんともしれない悲しみの表情が浮かんだのだ。
「すまない…。会ったばかりなのに言いすぎた。君にもいろいろと事情があるんだろうから」
再び風明の体に触れようとしたら、その体はいきなり水中に潜ってしまった。
「風明! 怒ったのか」
恋するのに廉太朗は向いていない。いつだって思ったことをストレートに言いすぎる。こと料理に関しては特にだ。何度もそれでうまくいきそうな恋を壊していた。時には恋になる前に、ぶち壊していたかもしれない。
「風明…」
水中に潜った体は、そのまま海の底を確かめる深海魚のように動いて、反対側までたどりついた。そこで息が切れたのか、ざばっと顔を出した風明は、プールの縁に手をついて上がってしまった。
「怒ったんだな。すまない、謝る、言いすぎた」
「怒ってないって。時間だから、もう帰る」
服を置いた場所に戻ると、風明は体も拭わずにいきなりシャツを着ようとした。
「待て。タオル、貸すから。駄目だよ、そんな濡れたままじゃ」
慌ててプールから上がった廉太朗は、フカフカのバスタオルを手に風明に走りよる。
バスタオルで風明の体を後ろからすっぽりと包んだ。まず体を拭ってやり、それから髪を拭いた。拭いてやっているうちに、愛しさが溢れて廉太朗はいつか風明を強く抱きしめていた。
「怒らないでくれ…。君が、好きなんだ…」
「怒ってないってば。ちっとうるるっときちまっただけ」
「うるる?」
「皿が空っぽになって戻ってきたら、それが料理人の勲章だって、爺ちゃんは言ってた。そんなもんだと思ってたけど、廉太朗みたいに褒めてくれる人もいるんだね。かんどーしちまった」
「怒ったんじゃないんだな」
タオルに包まれた風明と向きあうと、廉太朗はその目をじっと見つめた。赤くなっているのは、プールの水のせいだけではないということなのだろうか。
「うん…嬉しかった。ありがとう」
「風明…」
ほっそりとした風明の顎に、廉太朗は思わず手を添えていた。そのまま上に持ち上げて、顔を近づける。
「君の…特別な舌がどんな味をしているか知りたい…」
「舌…」
風明にキスをした。
優しいキスだけではない。ちゃんと舌まで味わう、本格的なキスだ。
特別な舌だからといって、なんの味があるわけでもない。キスはキスでしかなかったけれど、廉太朗はもう夢中になっていた。
拒絶する権利は風明にはある。だがなんの抵抗もなかった。むしろ積極的に受け入れているように感じるのは、廉太朗が舞い上がっているせいだろうか。
「…んっ…」
微かに吐息が漏れる。廉太朗はさらに強く風明を抱き寄せ、僅かのずれも許さないほどの勢いで唇を塞ぐ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
言ってはいけなかったかもしれない。プールの天井を見つめていた風明の顔には、その時なんともしれない悲しみの表情が浮かんだのだ。
「すまない…。会ったばかりなのに言いすぎた。君にもいろいろと事情があるんだろうから」
再び風明の体に触れようとしたら、その体はいきなり水中に潜ってしまった。
「風明! 怒ったのか」
恋するのに廉太朗は向いていない。いつだって思ったことをストレートに言いすぎる。こと料理に関しては特にだ。何度もそれでうまくいきそうな恋を壊していた。時には恋になる前に、ぶち壊していたかもしれない。
「風明…」
水中に潜った体は、そのまま海の底を確かめる深海魚のように動いて、反対側までたどりついた。そこで息が切れたのか、ざばっと顔を出した風明は、プールの縁に手をついて上がってしまった。
「怒ったんだな。すまない、謝る、言いすぎた」
「怒ってないって。時間だから、もう帰る」
服を置いた場所に戻ると、風明は体も拭わずにいきなりシャツを着ようとした。
「待て。タオル、貸すから。駄目だよ、そんな濡れたままじゃ」
慌ててプールから上がった廉太朗は、フカフカのバスタオルを手に風明に走りよる。
バスタオルで風明の体を後ろからすっぽりと包んだ。まず体を拭ってやり、それから髪を拭いた。拭いてやっているうちに、愛しさが溢れて廉太朗はいつか風明を強く抱きしめていた。
「怒らないでくれ…。君が、好きなんだ…」
「怒ってないってば。ちっとうるるっときちまっただけ」
「うるる?」
「皿が空っぽになって戻ってきたら、それが料理人の勲章だって、爺ちゃんは言ってた。そんなもんだと思ってたけど、廉太朗みたいに褒めてくれる人もいるんだね。かんどーしちまった」
「怒ったんじゃないんだな」
タオルに包まれた風明と向きあうと、廉太朗はその目をじっと見つめた。赤くなっているのは、プールの水のせいだけではないということなのだろうか。
「うん…嬉しかった。ありがとう」
「風明…」
ほっそりとした風明の顎に、廉太朗は思わず手を添えていた。そのまま上に持ち上げて、顔を近づける。
「君の…特別な舌がどんな味をしているか知りたい…」
「舌…」
風明にキスをした。
優しいキスだけではない。ちゃんと舌まで味わう、本格的なキスだ。
特別な舌だからといって、なんの味があるわけでもない。キスはキスでしかなかったけれど、廉太朗はもう夢中になっていた。
拒絶する権利は風明にはある。だがなんの抵抗もなかった。むしろ積極的に受け入れているように感じるのは、廉太朗が舞い上がっているせいだろうか。
「…んっ…」
微かに吐息が漏れる。廉太朗はさらに強く風明を抱き寄せ、僅かのずれも許さないほどの勢いで唇を塞ぐ。
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