和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>富豪
著者プロフィール
名倉 和希(なくら わき)
1998年ビブロスからデビュー。6月25日生まれのかに座。A型。愛知県出身、長野県安曇野あたりに在住。趣味はボーイズラブを読むこと。
1998年ビブロスからデビュー。6月25日生まれのかに座。A型。愛知県出身、長野県安曇野あたりに在住。趣味はボーイズラブを読むこと。
解説
平凡な大学生活を送る今井雪彦は、叔父さんの遺品整理のために訪れた会員制高級スポーツクラブで、イヤミな金持ちに襲われてしまう。それがきっかけで出会ったのは、王子様のように素敵で超お金持ちな男・遠野志郎。雪彦は遠野さんとゴージャスなお付き合いを始めたのだが……。身分違いの恋が起こすリッチでエッチな恋の行方は?
目次
●ゴージャスに愛して!
●骨まで愛して
●骨まで愛して
抄録
「ねぇ、遠野さん…、あのクルーザーに何人くらい恋人乗せたの…?」
ほとんどつぶやくような声だったけど、聞こえたはずだ。でも返事はない。
答えに窮しているのか、それとも答える意思がないのか。
「雪彦君」
すこし固い声で、遠野さんは前を向いたまま言った。
「君、いま自分がなにを言ったか、わかってる?」
「なにって……」
「あのクルーザーに何人の恋人を乗せたかなんて……僕の過去に焼き餅を焼いているとしか思えないことを言っているんだよ」
…そう。焼き餅だよ…。
今日がすごく楽しかったから、過去の誰かが同じように遠野さんと楽しい時を過ごしたのかと思うと、胸が苦しくなる<。
「雪彦君…」
頬に、遠野さんの指の感触。
俺はおずおずとそっちを向いた。
ものすごく真剣な目をした遠野さんがいた。
「君の質問に答える。あのクルーザーに恋人を乗せたことはない。あれはデートのためのものじゃなくて、佐伯たち、大学の友達と遊ぶためのものだったからだ。友達のほうも、彼女を連れてこないというルールを守っていたから、あの船に女性が乗ったことはない」
身動きを許さないほどにきつい、遠野さんのまなざし。
「過去に、誰とも付き合わなかったなんてことは言わない。何人か、恋人はいた。それなりに好きだった。だけどいまはフリーで、自分でも信じられないことに一人の男の子に夢中だ」
ハッと息をのみ、俺は近づいてくる遠野さんの端正な顔を見た。
「…遠野…さん」
「その子は、小柄でかわいいくせに勇ましくて元気で、そばにいるだけで楽しくなるような子だ。一人の男の子に、こんなに興味を持ってしまった自分が最初は信じられなかった。だけど、何度もその子に会ううちに、そんなことどうでもよくなった。無邪気で明るい笑顔が、仕事の疲れなんて吹き飛ばしてくれる。明日も頑張ろうっていう気になる」
えっと、それって……。
もしかして……もしかしなくても…俺のこと…?
「この気持ちが、ただの興味なんかじゃないってことは、はやい段階で自覚していた。けれど、告白なんて出来ない。相手は男の子だ。下手なことを口にして、引かれてしまったら困る。だから黙っていた。その子が僕のことをどう思っているのか、知りたいと思っても、確かめる方法は考えつかなかった」
遠野さんの指先が、潮風に湿気った俺の髪をかきあげる。
「……まさか、こんなにあからさまに焼き餅を焼いてくれるとは、思ってもみなかった…」
ため息まじりに、ささやくように言われて、俺は羞恥を覚えて赤面した。
「ご、ごめんなさい。変なこと言って…」
「どうして謝るんだい。僕はうれしくて感動しているのに」
みっともないことを言ったのに、それがうれしい? うれしいの、遠野さん?
「雪彦君…、すごくうれしいよ…」
「遠野さん…」
目を細めて微笑む遠野さんから、俺は視線をそらせない。
白くておおきな手が、俺の頬を撫でた。
そこから、ぞくっとしたなにかが全身に広がっていく。手が首筋に動くと、未知の感覚はさらにひどくなった。
触れられたところが、薄皮一枚剥いでしまったように敏感になっている。遠野さんの手が、ほんの一ミリでも動くだけで、わけのわからない声が出てしまいそうだった。
心臓が痛いくらいに高鳴っている。
こんなところで。
もう太陽は完全に沈んでしまって、薄暗くなりつつあるとはいえ、外のベンチで。
でも金縛りにでもあったみたいに、俺は遠野さんに頬を捉えられたまま、動けなかった。
「雪彦君…」
するりと、違和感を抱かせない動きで、最後の間合いを詰めてきた。
くちづけは一瞬。
視線を絡めて、すぐ二度目のキス。
触れて、薄く開いた唇の間から、舌が…俺の唇をぺろりとなめた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ほとんどつぶやくような声だったけど、聞こえたはずだ。でも返事はない。
答えに窮しているのか、それとも答える意思がないのか。
「雪彦君」
すこし固い声で、遠野さんは前を向いたまま言った。
「君、いま自分がなにを言ったか、わかってる?」
「なにって……」
「あのクルーザーに何人の恋人を乗せたかなんて……僕の過去に焼き餅を焼いているとしか思えないことを言っているんだよ」
…そう。焼き餅だよ…。
今日がすごく楽しかったから、過去の誰かが同じように遠野さんと楽しい時を過ごしたのかと思うと、胸が苦しくなる<。
「雪彦君…」
頬に、遠野さんの指の感触。
俺はおずおずとそっちを向いた。
ものすごく真剣な目をした遠野さんがいた。
「君の質問に答える。あのクルーザーに恋人を乗せたことはない。あれはデートのためのものじゃなくて、佐伯たち、大学の友達と遊ぶためのものだったからだ。友達のほうも、彼女を連れてこないというルールを守っていたから、あの船に女性が乗ったことはない」
身動きを許さないほどにきつい、遠野さんのまなざし。
「過去に、誰とも付き合わなかったなんてことは言わない。何人か、恋人はいた。それなりに好きだった。だけどいまはフリーで、自分でも信じられないことに一人の男の子に夢中だ」
ハッと息をのみ、俺は近づいてくる遠野さんの端正な顔を見た。
「…遠野…さん」
「その子は、小柄でかわいいくせに勇ましくて元気で、そばにいるだけで楽しくなるような子だ。一人の男の子に、こんなに興味を持ってしまった自分が最初は信じられなかった。だけど、何度もその子に会ううちに、そんなことどうでもよくなった。無邪気で明るい笑顔が、仕事の疲れなんて吹き飛ばしてくれる。明日も頑張ろうっていう気になる」
えっと、それって……。
もしかして……もしかしなくても…俺のこと…?
「この気持ちが、ただの興味なんかじゃないってことは、はやい段階で自覚していた。けれど、告白なんて出来ない。相手は男の子だ。下手なことを口にして、引かれてしまったら困る。だから黙っていた。その子が僕のことをどう思っているのか、知りたいと思っても、確かめる方法は考えつかなかった」
遠野さんの指先が、潮風に湿気った俺の髪をかきあげる。
「……まさか、こんなにあからさまに焼き餅を焼いてくれるとは、思ってもみなかった…」
ため息まじりに、ささやくように言われて、俺は羞恥を覚えて赤面した。
「ご、ごめんなさい。変なこと言って…」
「どうして謝るんだい。僕はうれしくて感動しているのに」
みっともないことを言ったのに、それがうれしい? うれしいの、遠野さん?
「雪彦君…、すごくうれしいよ…」
「遠野さん…」
目を細めて微笑む遠野さんから、俺は視線をそらせない。
白くておおきな手が、俺の頬を撫でた。
そこから、ぞくっとしたなにかが全身に広がっていく。手が首筋に動くと、未知の感覚はさらにひどくなった。
触れられたところが、薄皮一枚剥いでしまったように敏感になっている。遠野さんの手が、ほんの一ミリでも動くだけで、わけのわからない声が出てしまいそうだった。
心臓が痛いくらいに高鳴っている。
こんなところで。
もう太陽は完全に沈んでしまって、薄暗くなりつつあるとはいえ、外のベンチで。
でも金縛りにでもあったみたいに、俺は遠野さんに頬を捉えられたまま、動けなかった。
「雪彦君…」
するりと、違和感を抱かせない動きで、最後の間合いを詰めてきた。
くちづけは一瞬。
視線を絡めて、すぐ二度目のキス。
触れて、薄く開いた唇の間から、舌が…俺の唇をぺろりとなめた。
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