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お隣の魔法使い 始まりは一つの呪文

お隣の魔法使い 始まりは一つの呪文

著: 篠崎砂美
発行: ソフトバンク クリエイティブ
レーベル: GA文庫 シリーズ: お隣の魔法使い
価格:473円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 篠崎 砂美(しのさき さみ)
 ファンタジーを書いたり、SFを書いたり、ノベライズを書いたり、伝奇物書いたり、解説書書いたり、ゲーム作ったりと節操がなかったので、今回原点に帰ってのほほんメルヘンを書く。主な著書は『魔鏡の理(ファミ通文庫)』、『星誘いの娘(EX文庫)』、『シークエンス・パラディウム(EX文庫)』、『妖精辞典〜異世界からの来訪者(ソニーマガジン)』など。

解説

 あたしはメアリー・フィールズ。ごくごく普通に暮らしている女の子。この世に説明できない不思議なんてあるはずがない、そう信じていた。そう、あの日ツクツクさんが引っ越しソバならぬ引っ越しパスタをもってお隣に引っ越してくるまでは。
 一晩でガラっと模様替えする庭、空に還る思い出、姿を見せないメイドさん等々、ツクツクさんのまわりはおかしなことでいっぱい。
 ちょっぴり不思議で、ちょっぴりロマンチック。そして最後に笑顔になれる。そんなステキな魔法使いと女の子の物語。

目次

・春は歓迎の華
・夏は冒険の翼
・秋は一服の風
・冬は秘密の月

抄録

 始まりは唐突(とうとつ)だった。すくなくとも、あたしメアリー・フィールズにとっては。
 久々の家族旅行から帰ってみると、空き地だったはずの我が家のお隣(となり)に、真新しい家がひょっこりと建っていたのだ。
 はたして、お隣に引っ越してきたのは魔法使いだった……。
 その細身長身の若い青年は、夕方にはパスタを手に我が家へ挨拶(あいさつ)にやってきた。丈(たけ)の短いローブというか、東洋の作務衣(さむえ)にも似た変わったいでたちをしている。うさんくささはないものの、一目で変わり者だと分かる。うん。ちょっと早いかもしれないが、第一印象であたしはそう結論づけた。
「隣に引っ越してきました、トゥックトゥイックと申します。引っ越しの挨拶にあがりましたので、どうぞお召し上がりください」
 落ち着いた暖かい声で、お隣さんはママにお土産(みやげ)を渡した。ちょっと素敵なバリトン。それにしても、なんか言いにくい名前だ。でも、なぜにパスタ?
「これは御丁寧(ごていねい)に。でも、なぜパスタですの?」
「外国では、引っ越したときにパスタを御近所に配って挨拶するそうです。いい風習だと思うので、ちょっとまねてみたのですが」
 あたしと同じ疑問を口にしたママに、お隣さんはさらりと答えた。すごく自然にちょっと変なことを言われたような気がする。
 でも、引っ越しパスタだなんて、本当にそんな風習なんかがあるのだろうか。なんとなくどこか取り違えているような気がひしひしとした。これは、あたしの勘(かん)というよりも、きっと事実に違いない。うん、そうだ。
 とにかく、お隣さんの第一印象は、ママにとっては好印象だった。旅行帰りで夕飯の支度をどうごまかそうかと思っていたママとしては、手軽なパスタ料理は渡りに船だったらしい。そして、その日の夕食は、ごくごく普通に美味(おい)しかった。
 それにしても、いくら技術が発達したからといって、一日で空き地に家が建つものかしら。トラックで運んできてお隣にぽんとおいたわけでもないだろうし、まさか地面の下からにょきにょきと生えてきたわけでもないでしょうに。いや、思わず映像を想像してしまって、あたしはベッドの中で一人笑ってしまった。にょきにょき。
 謎ではあるけれど、今考えたって答えが出るわけでもない。
 カーテンの隙間(すきま)越しに、庭をはさんだお隣の明かりがもれ入ってくる。きっと、お隣さんはまだ引っ越しのかたづけものをしているのだろう。ちょっと気にはなるが、今日はもう寝てしまおう。だって疲れたんだもの。
 あたしは、そのままおとなしく眠りについた。
 お休みっていいものだと思う。学校にいかないですむから、お昼まで我が家でゆっくりと寝ていられる。
 のんびりと起きると、すでにママはさっそくお隣の偵察にいってきたようだった。
「お隣さんって、魔法使いみたいな人ね」
 少し嬉しそうな不思議そうな、ちょっと好奇心の欠片(かけら)をかじったような顔でママが言った。
「何よ、それは。ただの変わり者ってだけじゃないの」
「そうね、ちょっと楽しい変わり者かもしれないわよ。ちょうどいいから、あなたも御挨拶しにいってらっしゃい」
 そういうわけで、あたしはママお手製のサンドイッチのさし入れを手に持たされると、ボリュームのある自慢の髪をキリリと一つにまとめ、お掃除用の服装と装備(そうび)に身を固めてお隣へと派遣(はけん)されることになってしまった。引っ越しのかたづけの手伝いということらしい。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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