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著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
東京都出身。千葉県在住。6月9日生まれ。血液型はA型。これだけ仕事をしていても、まだまだ妄想の種が尽きません。このお話は、そんな妄想力で生み出したものです。異世界といいつつも、人が普通に暮らす世界。楽しんでいただけたなら幸いです。
東京都出身。千葉県在住。6月9日生まれ。血液型はA型。これだけ仕事をしていても、まだまだ妄想の種が尽きません。このお話は、そんな妄想力で生み出したものです。異世界といいつつも、人が普通に暮らす世界。楽しんでいただけたなら幸いです。
解説
隣国との和平交渉の特使として、ただひとりの付添人アンディをつれ、南紅大国に向かうシオン・ド・オルレアン。北青王国の王子として生まれ、類まれなる美貌と優れた人格をもつシオンだが、別名は「黒衣の公爵」――彼を愛した者は、みな死んでいった。不吉な運命を抱くシオンを迎えた国王・天人は、シオンの運命と自分の強運、どちらが勝つか賭けようという。それはシオンを愛することに他ならないのだが……。宮廷を舞台に、華麗に展開する愛の物語!
抄録
「御身《おんみ》を愛する者は、必ずや死神が迎えに来るというが、それは本当か?」
「はい」
公爵は顔を上げて、何の抑揚《よくよう》もない声で答えた。
「十六年会わない間に、美しくなったものだ。あまりに美しすぎて、死神に愛されてしまったようだな」
「……」
俯《うつむ》いた公爵は、長い睫《まつげ》を伏せる。その肩に死神が手を添えているかのように、公爵の表情は悲しげだった。
「北の女狐《めぎつね》は、どんなつもりで公爵をここに寄越《よこ》した。誰かを呪い殺すつもりでもあったのか?」
「陛下、そんなことはございません。私は先王の血を引く者として、女王に代わって和平のために」
「綺麗事はよそう。女狐女王は、天人が公爵を愛することを願っているのだろう」
「……陛下、そのようなことは」
天人の手が伸びてきて、公爵の頬《ほお》に触れた。その顔の形を確かめるかのように、天人の長い指は動く。
「運命という武器しか持たない、美しい暗殺者」
親指は、優しく唇を撫でていた。すると公爵の唇はうっすらと開いて、キスを誘うような顔になる。
誰もが一度で恋に堕《お》ちる、妖《あや》しい雰囲気が公爵にはあった。天人も惹かれたのだろうか。その目はもう公爵から離れることはない。
「賭けてみるか、公爵…」
「……何を賭けるとおっしゃるのですか」
「我が強運と、公爵の悲運。どちらが勝つか…」
天人は欲望にぎらつく目で、ひたと公爵を見つめた。
「陛下。そのような事態に陥《おちい》ることなどございません。陛下は聡明な御方です。ただの特使でしかない私に賭けを挑まれても、何も意味がないことなど、とうにお気づきでしょう」
「分からぬぞ。もし天人が公爵を愛したら、この命、死神に狙われるのかどうか、実はとても興味がある」
「つまらぬことに興味など抱かぬことです」
「死をも恐れぬ公爵は強気だな」
公爵の腕を引くと、天人は自分の腕の中にその体を抱き入れた。王宮が近づき、沿道に民衆の姿が少なくなったとはいえ、どこからでも見える場所でそんな不埒な真似をされ、公爵は迷惑そうに身を離した。
「逃れられるつもりか。公爵、王宮には御身のために用意した牢獄《ろうごく》はない。もし檻《おり》に代わるものがあるとしたら、この腕だけだ」
逞しい腕は、しっかりと公爵の体を再び引き寄せた。
「女狐のために、この天人を殺したければ、気を惹くためにつまらぬ小細工などする必要はない。その美しさだけで充分だ」
公爵は小さく首を振る。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「はい」
公爵は顔を上げて、何の抑揚《よくよう》もない声で答えた。
「十六年会わない間に、美しくなったものだ。あまりに美しすぎて、死神に愛されてしまったようだな」
「……」
俯《うつむ》いた公爵は、長い睫《まつげ》を伏せる。その肩に死神が手を添えているかのように、公爵の表情は悲しげだった。
「北の女狐《めぎつね》は、どんなつもりで公爵をここに寄越《よこ》した。誰かを呪い殺すつもりでもあったのか?」
「陛下、そんなことはございません。私は先王の血を引く者として、女王に代わって和平のために」
「綺麗事はよそう。女狐女王は、天人が公爵を愛することを願っているのだろう」
「……陛下、そのようなことは」
天人の手が伸びてきて、公爵の頬《ほお》に触れた。その顔の形を確かめるかのように、天人の長い指は動く。
「運命という武器しか持たない、美しい暗殺者」
親指は、優しく唇を撫でていた。すると公爵の唇はうっすらと開いて、キスを誘うような顔になる。
誰もが一度で恋に堕《お》ちる、妖《あや》しい雰囲気が公爵にはあった。天人も惹かれたのだろうか。その目はもう公爵から離れることはない。
「賭けてみるか、公爵…」
「……何を賭けるとおっしゃるのですか」
「我が強運と、公爵の悲運。どちらが勝つか…」
天人は欲望にぎらつく目で、ひたと公爵を見つめた。
「陛下。そのような事態に陥《おちい》ることなどございません。陛下は聡明な御方です。ただの特使でしかない私に賭けを挑まれても、何も意味がないことなど、とうにお気づきでしょう」
「分からぬぞ。もし天人が公爵を愛したら、この命、死神に狙われるのかどうか、実はとても興味がある」
「つまらぬことに興味など抱かぬことです」
「死をも恐れぬ公爵は強気だな」
公爵の腕を引くと、天人は自分の腕の中にその体を抱き入れた。王宮が近づき、沿道に民衆の姿が少なくなったとはいえ、どこからでも見える場所でそんな不埒な真似をされ、公爵は迷惑そうに身を離した。
「逃れられるつもりか。公爵、王宮には御身のために用意した牢獄《ろうごく》はない。もし檻《おり》に代わるものがあるとしたら、この腕だけだ」
逞しい腕は、しっかりと公爵の体を再び引き寄せた。
「女狐のために、この天人を殺したければ、気を惹くためにつまらぬ小細工などする必要はない。その美しさだけで充分だ」
公爵は小さく首を振る。
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