和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>極道・刑事
著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ、双子座。血液型はえーっ、えーなのーっと思わせる、えー型。
6月9日生まれ、双子座。血液型はえーっ、えーなのーっと思わせる、えー型。
解説
鎌倉南署の刑事・大門京介と、美貌の刀鍛冶・当麻博雪はある事件をきっかけに結ばれ、今は愛を深める日々を送っていた。しかし中年男性が刺殺される事件が発生、京介は捜査で多忙になる。そして、博雪は謎の美少女につきまとわれることに……。苛立つ京介をよそに、事件は次の被害者を出してしまう……。なんとその現場には、博雪の守り刀が落ちていて――!? 古都鎌倉シリーズ、第二弾。
抄録
「大門さん…京介…」
博雪は京介の手をそっと握る。
「んっ…」
情熱的な夜以外、名前を呼ばれたことなどないので、京介は驚いたようだ。
「おれは…もう二度と、刀なんて造らない方がいいんでしょうか」
「そんなことはない」
「命を奪うものを造っているんです。誰も必要としていない、こんな時代に。おれは…」
「博雪、それは違う。スーパーで包丁を買ってきてでも殺人は出来る。問題なのは、人の心に潜む殺意ってやつだ。憎しみだよ。特定の一人だけを憎む人間もいれば、誰でもいい。人間って存在そのものを憎む人間だっている。警察にもっと威信があれば、こんな犯罪だって防げたかもしれないんだ」
博雪が嘆けば、京介は自分達の非力を嘆いていた。
けれど嘆いているだけでは、何も解決出来ない。
一時間も過ぎただろうか。鍛冶場に居場所を移し、作蔵と小吉が用意してくれたお茶をのんびりと飲んでいたら、鑑識の動きが激しくなっていた。
「何があったんだ」
京介は代表して外に出ていく。
答えを聞かなくても、博雪には分かるような気がした。
犯人が誰かは知らない。けれど博雪は、その知らない誰かに憎まれたのだ。
なぜ憎まれたのかまでは、推測しようがない。ほとんど他人とは触れ合わずに生きているのに、人から恨まれたり、憎まれたりすることなどあるのだろうか。
すべてが計画的な犯行だったのではないか。被害者を殺すのが目的ではなく、博雪を追いつめるのが目的だったとしたら、あと犯人がすることはたった一つだ。
「凶器らしきもの、発見しました」
空耳かと思ったが、誰かが無線で話している声だけがはっきりと聞こえてきた。
「朱塗りの鞘に入った短刀です。血痕が付着していました」
京介が何か抗議している。その声はよく聞き取れないのに、報告する声は逆によく聞こえた。
「裏の薪が積んである間に、隠してありました」
塀を直さなかったからだと、博雪はお茶のお代わりを貰い、ゆっくりと口に運びながら思った。
火を熾し、日々、神に感謝して清浄に生きているが、魔が入り込む隙を作った。それはきっと、京介に対する想いに浮かれての、愚かな失敗だったのかと博雪は反省した。
「手錠をかけての逮捕だけはやめてくれ。あくまでも参考人だ。容疑者じゃない」
京介の必死な声が聞こえる。
博雪は手にした茶碗に目を落とした。
新茶だ。澄んだ、綺麗な薄緑色をしている。
その上、こんな時だというのに縁起がいいと言われる茶柱が立っていた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
博雪は京介の手をそっと握る。
「んっ…」
情熱的な夜以外、名前を呼ばれたことなどないので、京介は驚いたようだ。
「おれは…もう二度と、刀なんて造らない方がいいんでしょうか」
「そんなことはない」
「命を奪うものを造っているんです。誰も必要としていない、こんな時代に。おれは…」
「博雪、それは違う。スーパーで包丁を買ってきてでも殺人は出来る。問題なのは、人の心に潜む殺意ってやつだ。憎しみだよ。特定の一人だけを憎む人間もいれば、誰でもいい。人間って存在そのものを憎む人間だっている。警察にもっと威信があれば、こんな犯罪だって防げたかもしれないんだ」
博雪が嘆けば、京介は自分達の非力を嘆いていた。
けれど嘆いているだけでは、何も解決出来ない。
一時間も過ぎただろうか。鍛冶場に居場所を移し、作蔵と小吉が用意してくれたお茶をのんびりと飲んでいたら、鑑識の動きが激しくなっていた。
「何があったんだ」
京介は代表して外に出ていく。
答えを聞かなくても、博雪には分かるような気がした。
犯人が誰かは知らない。けれど博雪は、その知らない誰かに憎まれたのだ。
なぜ憎まれたのかまでは、推測しようがない。ほとんど他人とは触れ合わずに生きているのに、人から恨まれたり、憎まれたりすることなどあるのだろうか。
すべてが計画的な犯行だったのではないか。被害者を殺すのが目的ではなく、博雪を追いつめるのが目的だったとしたら、あと犯人がすることはたった一つだ。
「凶器らしきもの、発見しました」
空耳かと思ったが、誰かが無線で話している声だけがはっきりと聞こえてきた。
「朱塗りの鞘に入った短刀です。血痕が付着していました」
京介が何か抗議している。その声はよく聞き取れないのに、報告する声は逆によく聞こえた。
「裏の薪が積んである間に、隠してありました」
塀を直さなかったからだと、博雪はお茶のお代わりを貰い、ゆっくりと口に運びながら思った。
火を熾し、日々、神に感謝して清浄に生きているが、魔が入り込む隙を作った。それはきっと、京介に対する想いに浮かれての、愚かな失敗だったのかと博雪は反省した。
「手錠をかけての逮捕だけはやめてくれ。あくまでも参考人だ。容疑者じゃない」
京介の必死な声が聞こえる。
博雪は手にした茶碗に目を落とした。
新茶だ。澄んだ、綺麗な薄緑色をしている。
その上、こんな時だというのに縁起がいいと言われる茶柱が立っていた。
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