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著者プロフィール
剛 しいら(ごう しいら)
6月9日生まれ、双子座。血液型はえーっ、えーなのーっと思わせる、えー型。
6月9日生まれ、双子座。血液型はえーっ、えーなのーっと思わせる、えー型。
解説
師匠である山九亭初助の死を知らされた森野要こと山九亭感謝。その胸のうちに、一枚の座布団の上で、常に話芸の極みを目指し別世界を繰り広げ続けた誇り高い落語家への想いが去来する……。噺家は一生涯の全てを自分の芸の肥やしにするものだと学ばせてくれたのも師匠だった。たとえそれが情愛でも、別れでも……。
噺家シリーズ第一弾。表題作のほか、シリーズ3作を収録。
噺家シリーズ第一弾。表題作のほか、シリーズ3作を収録。
目次
座布団
どどいつ
品川心中
相方
どどいつ
品川心中
相方
抄録
噺が始まった。高座のある舞台の袖で、寒也と二人、並んで噺を聞く。なる程、これは大ネタに化けたと、途中まで聞いていて要は関心した。
初助はその歳まで遊びを知らずに来た旦那が、吉原の花魁によって、すっかり骨抜きにされていく様子まで、丁寧に描き切った。そしてさらに、置き去りにされた本妻が、呪詛までしなければいけないほど追い詰められていく様子も、落語という枠を越えてまるで脚本を読み聞かせるように、深い心理描写で表した。
時には笑いがあがる。女二人の真剣さに比べ、あくまでも己の欲望に忠実なだけの旦那の姿が、客の笑いを誘うのだ。だが女二人のすさまじい情念のやりとりには、瞬間、場内はそれこそ水を打ったように静まり返った。
初助の扇が、何もない空間に五寸釘を打ち込む。相手が五寸釘なら、こっちは六寸だとすごむ妾の顔はすさまじかった。手ぬぐいを紙に見立て、そこに初助は筆に見立てた扇で呪詛の言葉を書く。その暗い顔は、なまじ元がいい男なだけに、冷たい恐ろしさが増した。
要は手の震えを止められないでいた。
これが初助なのだとしたら、自分がこの境地に到達するまで、後何年が必要なのだろう。とても敵わない。要には、とてもここまでの女を演じる自信はない。これは初助が自分に叩きつけた挑戦状なのではないかと、要は脅えた。自分のように、女をうまく演じたいと思うんなら、どうだ、これだけの女を演じてみろと、初助が挑発しているかのようだ。
「あっ…」
ふと要は顔をあげた。そして傍らに寄り添うように立っている寒也の顔を見上げた。
何かが心の中に渦を巻始めた。
「これって…」
要は再び高座の上の初助を見る。
夫を寝盗られた女の悲哀は、火の玉になっても消えない。男を奪い取った若い女の情熱は、火の玉となってもそのままだ。その間で男は、のんびりと自分の煙草の火の心配をしている。
「寒ちゃん。これって…」
*この続きは製品版でお楽しみください。
初助はその歳まで遊びを知らずに来た旦那が、吉原の花魁によって、すっかり骨抜きにされていく様子まで、丁寧に描き切った。そしてさらに、置き去りにされた本妻が、呪詛までしなければいけないほど追い詰められていく様子も、落語という枠を越えてまるで脚本を読み聞かせるように、深い心理描写で表した。
時には笑いがあがる。女二人の真剣さに比べ、あくまでも己の欲望に忠実なだけの旦那の姿が、客の笑いを誘うのだ。だが女二人のすさまじい情念のやりとりには、瞬間、場内はそれこそ水を打ったように静まり返った。
初助の扇が、何もない空間に五寸釘を打ち込む。相手が五寸釘なら、こっちは六寸だとすごむ妾の顔はすさまじかった。手ぬぐいを紙に見立て、そこに初助は筆に見立てた扇で呪詛の言葉を書く。その暗い顔は、なまじ元がいい男なだけに、冷たい恐ろしさが増した。
要は手の震えを止められないでいた。
これが初助なのだとしたら、自分がこの境地に到達するまで、後何年が必要なのだろう。とても敵わない。要には、とてもここまでの女を演じる自信はない。これは初助が自分に叩きつけた挑戦状なのではないかと、要は脅えた。自分のように、女をうまく演じたいと思うんなら、どうだ、これだけの女を演じてみろと、初助が挑発しているかのようだ。
「あっ…」
ふと要は顔をあげた。そして傍らに寄り添うように立っている寒也の顔を見上げた。
何かが心の中に渦を巻始めた。
「これって…」
要は再び高座の上の初助を見る。
夫を寝盗られた女の悲哀は、火の玉になっても消えない。男を奪い取った若い女の情熱は、火の玉となってもそのままだ。その間で男は、のんびりと自分の煙草の火の心配をしている。
「寒ちゃん。これって…」
*この続きは製品版でお楽しみください。
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