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レッスン マイ ラブ

レッスン マイ ラブ

著: 剛しいら
発行: 学研
レーベル: もえぎ文庫 シリーズ: 美晴くんシリーズ
価格:578円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★★★★2
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著者プロフィール

 剛 しいら(ごう しいら)
 東京都出身。千葉県在住。6月9日生まれ。血液型はA型。これだけ仕事をしていても、まだまだ妄想の種が尽きません。このお話は、そんな妄想力で生み出したものです。楽しんでいただけたなら幸いです。

解説

 母にダマされて、4歳の時からバレエスクールに通っている美晴。「もう絶対に止めてやる!!」と心に決めていたのに、クリスマス公演の主役に抜擢されてしまう。しかも、一時帰国していて世界的に有名なバレエダンサー、服部陸がレッスンをみてくれることに! 「美晴は飛べる」と連日熱心に指導する服部。次第に踊る楽しさがわかってきた美晴だが、ある日服部に押し倒されてしまい……!

目次

第一章 くるみ割り
第二章 眠りの森
第三章 白鳥の……
第四章 真夏の夜の夢

抄録

「邪(じや)魔(ま)者(もの)は消えた。やっと二人きりになれたな」
 服部はにっこりと笑う。笑ってる場合じゃないと思うけど。
「先生、安菜怒らせたらまずいよ。一応主役のクララなんだし」
「主役は美晴じゃなかったのか」
「いつから主役が王子になったの。これはクララの物語だろ」
「そうだ。これはお人形遊びをしていた少女が、肉体を持った男に憧(あこが)れを抱(いだ)き始める、初恋直前の物語だ」
 服部は僕にポーズを取らせる。顎を引かせ、胸を反らせ、足は綺麗に揃えさせて。
 鏡の中の僕は、確かに一月(ひとつき)前の僕と違う。ポーズも綺麗だし、何よりも筋肉が育っていた。
「いいかい、美晴。君は少女の憧れの象徴(しようちよう)なんだ。すべてのプリンセスストーリーに登場する王子がそうであるように、若くて、ハンサムで、そして強くて、優しい。クララの憧れを具(ぐ)現(げん)化(か)した姿がお前なんだよ」
「先生、難しい単語はナシだよ」
「つまり、お前は女の子の憧れって事さ」
 僕らは鏡の前で、そっくり同じように腕を上げ、踊り始めた。服部は影のように僕の後ろで踊りながら、おかしな箇(か)所(しょ)をチェックしている。
「ケツから降りるな。着地の直前まで、重心を上に引っ張るんだ」
「む、難かしいって」
「体重があるなんて考えるな。体の中心を上に向かって持ち上げるんだよ」
 服部が僕に教えようとしてるのは、細かい技術ばかりじゃない。そうなんだ。やつは僕をステージの上で飛ばしたいんだ。羽があるみたいに軽く、跳躍する姿を観客に見せたいんだ。
 まだ十四歳の僕の、大人になりきらないしなやかな体が、軽々と飛んでみせるところを、大勢の観客に見せたいのさ。それがクララの初恋の憧れを、的確(てきかく)に表現する方法だと、演出家としての服部は信じているんだ。
 そう考えながら、もう一度、僕は飛んだ。体重なんてない…と自分に言いきかせながら。
 ん? 何か、違ったような気がする。着地、したんだよな? うまく飛べたんだ! どすんって感じで降りてない。そう、ふわっと、降りたんだ、今。
「先生、できた! この感じなんだ」
「そうだ、その感じさ。着地しても、重心はまだ宙空(ちゆうくう)に残っているような感じ。わかる?」
「うん、わかったような気がする」
「いい子だ。よく頑張ったな」
 さすがに何時間も続けて踊ると、息が上がる。僕はバーにもたれて、しばらく息を整えた。汗が一滴、目の中に流れる。いつの間にか近くまで来ていた服部が、自分のタオルでそっと拭ってくれた。
「シャツ、脱いでごらん」
「えー、寒いよ!」
「嘘だろ、汗ダラダラじゃないか。腕の動きが見たいんだ。シャツ、脱いで」
 僕はスウェットのシャツを脱ぎ、ヒーターが効(き)いた部屋の外気に、肌をさらした。服部はその腕を上げさせ、筋肉のつき方を調べるのか、少しずつ握っている。だがその握り方はソフトで、まるで撫でているみたいだ。
「俺って、馬鹿だよな」
「何? 先生」
「こんな子供だまし。誰だってすぐに気がつく。俺が本当は何がしたいのか、美晴だってもう知ってるんだろう?」
 腋(わき)の下から手をぐっと差しこむと、服部は僕を一気に抱き寄せた。
「ちょっ、ちょっと先生!? どうしたんだよ。何、やっ、あっ!」
 唇が塞(ふさ)がれて、初めて僕は、キスというものをしているんだと気がついた。これがあのキスなのか。世界中の誰もがしてるって、あの。
 服部の口は、かすかにレモンの味がする。舌はべろべろとよく動いて、僕の口の中を暴(あば)れまわった。今もし僕が思いきり口を閉じたら、服部は口中血だらけになっちまうんだろうか。
 それはやだな。でも、口の中に、他人の舌が入ってるってのも、何かやだな。変な感じ、落ち着かない。むず痒(がゆ)いみたいに、変な、変な感じ。背(せ)筋(すじ)を上っていく、この変な感覚はいったいなんだろう。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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