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毒 虫 ―どく・むし―(第二話)
著: 月森砂名発行: いるかネットブックス
シリーズ: 毒虫 ―どく・むし―
価格:158円(税込)
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著者プロフィール
月森 砂名(つきもり さな)
能、コンテンポラリー・ダンス、バレエ、ミュージカルなど舞台を撮影するフォトグラファー。京都市美術館/東京都美術館/国立新美術館でのグループ展、シアター/カフェ/ギャラリーでの個展など、写真や布にプリントしたインスタレーション作品の発表など、精力的なアーティスト活動を展開。すべての生命に精霊が宿っているというアニミズム思想に基づく、花と女性像をモチーフにした幻想的で独創的な作風が好評。2001年よりweb上で小説withイメージ・フォトを配信して人気を博す。
能、コンテンポラリー・ダンス、バレエ、ミュージカルなど舞台を撮影するフォトグラファー。京都市美術館/東京都美術館/国立新美術館でのグループ展、シアター/カフェ/ギャラリーでの個展など、写真や布にプリントしたインスタレーション作品の発表など、精力的なアーティスト活動を展開。すべての生命に精霊が宿っているというアニミズム思想に基づく、花と女性像をモチーフにした幻想的で独創的な作風が好評。2001年よりweb上で小説withイメージ・フォトを配信して人気を博す。
解説
ある女の悪意が形を成して『毒虫』となった。マチの浅はかな行動が、思わぬ波紋を広げてゆく。毒虫は、誰もが隠しもつわずかな心の闇をも見つけだし、ネットや通信網を介して次から次へと人の心へと潜り込んでゆく……。解毒剤はあるのか? 毒虫の辿り着く先とは? 取り憑いた媒体が「愛」や「幸せ」によって救われたとき……毒虫の運命は? 一向に衰えを見せない人々の浅ましい本音。こうして毒虫は、今日も人間界を彷徨う。
「やれやれ……」
男と女の本音が哀しい、女と男のこぼれる官能が切ない、因果応報の物語。第2話。
「やれやれ……」
男と女の本音が哀しい、女と男のこぼれる官能が切ない、因果応報の物語。第2話。
抄録
ユウは見覚えのない送信者からのメールを開けると、ざっと斜め読みした。
それは「抗議」のメールではなく、明らかに「嫌がらせ」だった。
しかしこんなメールは毎日ごまんと来る。
最近ではすっかり慣れてしまった。
「誹謗中傷メール」にも面白いものと面白くないものとがある。
フリー・ライターの彼女にとっては、自分に対する恨み辛みも、すべておいしいネタに思える。
相手を貶《おとし》めようとする下劣な中傷にはじまって、堂々巡りの繰り言、失笑を禁じ得ない自虐的な泣き言など、それはもう千差万別だ。
人は皆、愚痴や悪口を書かせると、名小説家か名脚本家になれる。
ほとんどそのまま使った…否、採用させていただいたこともある。
もちろん無許可だ。
しかし今日のメールはいただけない。
洒落にならない。
あまりに真面目過ぎるのだ。
正義を振りかざした文章も気に入らない。
「ちぇっ」
ヨシエのフレンチ・レストランについて、その経営さえも危うくするような評論を書いたことなど、すっかり忘れていた。
洪水のように垂れ流す自分の駄文がどんな結果を引き起こしたとしても、知ったこっちゃない。
自分にとって書くことはルーチンの一つに過ぎない。
正義も大義もない。
面白けりゃ、それでいい。金になれば、それでいいのである。
――そんなもの、一々覚えてられるかってんだ
毒づきながらも念のため、添付の「.jpg」ファイルをクリックする。
見覚えのあるレストランの写真が現れた。
――ああ、あの時の…
ふん、亭主の名前で店なんか持たせてもらっちゃってさ、いい気になってるから足下見られンのよ
こっちは、ちゃぁんと調べてから書いてんだから
それを何を今さら。世間知らずにもほどがある
ユウは何の躊躇いもなく、ヨシエから送られたメールをゴミ箱に捨てた。
その瞬間メールに潜んでいた毒虫がゾロリと這い出てきた。
このまま削除されてはたまらない。
慌てて別のフォルダーに潜り込んだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
それは「抗議」のメールではなく、明らかに「嫌がらせ」だった。
しかしこんなメールは毎日ごまんと来る。
最近ではすっかり慣れてしまった。
「誹謗中傷メール」にも面白いものと面白くないものとがある。
フリー・ライターの彼女にとっては、自分に対する恨み辛みも、すべておいしいネタに思える。
相手を貶《おとし》めようとする下劣な中傷にはじまって、堂々巡りの繰り言、失笑を禁じ得ない自虐的な泣き言など、それはもう千差万別だ。
人は皆、愚痴や悪口を書かせると、名小説家か名脚本家になれる。
ほとんどそのまま使った…否、採用させていただいたこともある。
もちろん無許可だ。
しかし今日のメールはいただけない。
洒落にならない。
あまりに真面目過ぎるのだ。
正義を振りかざした文章も気に入らない。
「ちぇっ」
ヨシエのフレンチ・レストランについて、その経営さえも危うくするような評論を書いたことなど、すっかり忘れていた。
洪水のように垂れ流す自分の駄文がどんな結果を引き起こしたとしても、知ったこっちゃない。
自分にとって書くことはルーチンの一つに過ぎない。
正義も大義もない。
面白けりゃ、それでいい。金になれば、それでいいのである。
――そんなもの、一々覚えてられるかってんだ
毒づきながらも念のため、添付の「.jpg」ファイルをクリックする。
見覚えのあるレストランの写真が現れた。
――ああ、あの時の…
ふん、亭主の名前で店なんか持たせてもらっちゃってさ、いい気になってるから足下見られンのよ
こっちは、ちゃぁんと調べてから書いてんだから
それを何を今さら。世間知らずにもほどがある
ユウは何の躊躇いもなく、ヨシエから送られたメールをゴミ箱に捨てた。
その瞬間メールに潜んでいた毒虫がゾロリと這い出てきた。
このまま削除されてはたまらない。
慌てて別のフォルダーに潜り込んだ。
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本の情報
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