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毒 虫 ―どく・むし―(第四話)
著: 月森砂名発行: いるかネットブックス
シリーズ: 毒虫 ―どく・むし―
価格:158円(税込)
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著者プロフィール
月森 砂名(つきもり さな)
能、コンテンポラリー・ダンス、バレエ、ミュージカルなど舞台を撮影するフォトグラファー。京都市美術館/東京都美術館/国立新美術館でのグループ展、シアター/カフェ/ギャラリーでの個展など、写真や布にプリントしたインスタレーション作品の発表など、精力的なアーティスト活動を展開。すべての生命に精霊が宿っているというアニミズム思想に基づく、花と女性像をモチーフにした幻想的で独創的な作風が好評。2001年よりweb上で小説withイメージ・フォトを配信して人気を博す。
能、コンテンポラリー・ダンス、バレエ、ミュージカルなど舞台を撮影するフォトグラファー。京都市美術館/東京都美術館/国立新美術館でのグループ展、シアター/カフェ/ギャラリーでの個展など、写真や布にプリントしたインスタレーション作品の発表など、精力的なアーティスト活動を展開。すべての生命に精霊が宿っているというアニミズム思想に基づく、花と女性像をモチーフにした幻想的で独創的な作風が好評。2001年よりweb上で小説withイメージ・フォトを配信して人気を博す。
解説
ある女の悪意が形を成して『毒虫』となった。マチの浅はかな行動が、思わぬ波紋を広げてゆく。毒虫は、誰もが隠しもつわずかな心の闇をも見つけだし、ネットや通信網を介して次から次へと人の心へと潜り込んでゆく……。解毒剤はあるのか? 毒虫の辿り着く先とは? 取り憑いた媒体が「愛」や「幸せ」によって救われたとき……毒虫の運命は? 一向に衰えを見せない人々の浅ましい本音。こうして毒虫は、今日も人間界を彷徨う。
「やれやれ……」
男と女の本音が哀しい、女と男のこぼれる官能が切ない、因果応報の物語。第4話。
「やれやれ……」
男と女の本音が哀しい、女と男のこぼれる官能が切ない、因果応報の物語。第4話。
抄録
「あの…もしもし? 聞こえてます? ねぇっ、もしもしっ! ? 」
女友だちが電話している隙に、料理に舌鼓を打っていたミチコの箸が思わず止まった。
レイコのしだいに高まる声が、蔵を改装した店の天井をつたい、隣の座敷まで届きそうだった。
「レイコ、どうしたの? 」
「うん…変なのよ」
「何が? 」
「うん…呻き声が聞こえる」
「何、それ」
「た・す・け〜って…って言ったみたいな」
「やだ、気持ち悪い」
レイコの人差し指が指令を待つように、耳に当てた携帯電話の背中で拍子を刻んでいる。
爪の先を白く塗った、フレンチ・ネイルの美しい爪。
すらっとした長い指。
何気なくその指の動きを見つめながら、ミチコは八寸に盛られた姫筍を齧った。
噛みくだいた姫筍が一瞬、レイコの指であるかのような気がして、ミチコは慌ててその奇妙な妄想をビールで流し込んだ。
「ダメだわ。繋がってるんだけど…」
「もう一度かけ直してみたら? 」
今度は一つ一つ読み上げながら番号を押す。
「ちょっと待って…。最後の番号、8じゃなくて6よ」
「え? ウソ」
新入社員が五月病に罹る頃、先輩社員の疲労度もピークに達する。
このところレイコもパソコンの作業が増え、かなり目を酷使していた。
改めて名刺の裏に走り書きされた携帯の電話番号に目を通すと、今まで8だった数字がやんわりと6に変化していく。
「ったく…達筆なのか乱筆なのか…」
携帯を耳に当て、ミチコの箸が動く先をぼんやり追っていたレイコの瞳が輝いた。
やっと繋がったようだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
女友だちが電話している隙に、料理に舌鼓を打っていたミチコの箸が思わず止まった。
レイコのしだいに高まる声が、蔵を改装した店の天井をつたい、隣の座敷まで届きそうだった。
「レイコ、どうしたの? 」
「うん…変なのよ」
「何が? 」
「うん…呻き声が聞こえる」
「何、それ」
「た・す・け〜って…って言ったみたいな」
「やだ、気持ち悪い」
レイコの人差し指が指令を待つように、耳に当てた携帯電話の背中で拍子を刻んでいる。
爪の先を白く塗った、フレンチ・ネイルの美しい爪。
すらっとした長い指。
何気なくその指の動きを見つめながら、ミチコは八寸に盛られた姫筍を齧った。
噛みくだいた姫筍が一瞬、レイコの指であるかのような気がして、ミチコは慌ててその奇妙な妄想をビールで流し込んだ。
「ダメだわ。繋がってるんだけど…」
「もう一度かけ直してみたら? 」
今度は一つ一つ読み上げながら番号を押す。
「ちょっと待って…。最後の番号、8じゃなくて6よ」
「え? ウソ」
新入社員が五月病に罹る頃、先輩社員の疲労度もピークに達する。
このところレイコもパソコンの作業が増え、かなり目を酷使していた。
改めて名刺の裏に走り書きされた携帯の電話番号に目を通すと、今まで8だった数字がやんわりと6に変化していく。
「ったく…達筆なのか乱筆なのか…」
携帯を耳に当て、ミチコの箸が動く先をぼんやり追っていたレイコの瞳が輝いた。
やっと繋がったようだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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