和書>小説・ノンフィクション>恋愛小説>ラブストーリー>上司
解説
暦の移り変わりとともに、あなたに届く恋物語――。
暦の中で生きる主人公たちが織りなす短編読切り小説が、月刊配信になりました。移りゆく季節の風景とともに、孤独をこえて成長する彼女たちの物語に、あなたもきっと共感するはず。
第9弾・5月(皐月)の主人公・さつきの恋人は、妻子持ちの上司・圭吾。彼に大好きなミモザの香りの香水を買ってもらい、幸せなさつき。しかし一方では、圭吾に抱かれるたびに「妻」の存在を意識させられる関係でもあった……。
気鋭の恋愛小説家・白井かなこが毎月お届けする、暦がつむぐ恋物語たち。陰暦の言葉の美しさと季節の移ろいを味わいながら、大人の恋愛小説を堪能しませんか?
暦の中で生きる主人公たちが織りなす短編読切り小説が、月刊配信になりました。移りゆく季節の風景とともに、孤独をこえて成長する彼女たちの物語に、あなたもきっと共感するはず。
第9弾・5月(皐月)の主人公・さつきの恋人は、妻子持ちの上司・圭吾。彼に大好きなミモザの香りの香水を買ってもらい、幸せなさつき。しかし一方では、圭吾に抱かれるたびに「妻」の存在を意識させられる関係でもあった……。
気鋭の恋愛小説家・白井かなこが毎月お届けする、暦がつむぐ恋物語たち。陰暦の言葉の美しさと季節の移ろいを味わいながら、大人の恋愛小説を堪能しませんか?
抄録
会社で好きな人でも見つければ、楽しいOL生活を送れるのだろうか。
だからといって十六人いる職場の異性は、若ければ妻帯者、独身となると加齢臭の漂うおじさんばかり。
とてもオフィスラブなんて期待できる環境じゃなかった。
学校へ通っていたころは、先輩とか先生とか、好きな人に逢いにいっているようなものだったのに。
そんなふうに思っていても、恋は突然やってくる。
あたしは二十二歳で入社した年の秋、職場の上司に恋をしてしまった。
きっかけは、なんていうことはない。
彼が落とした書類を拾ってあげたときの、
「ありがとう」
という笑顔に、まいってしまっただけのことだ。
ただの上司にすぎなかったその人が、特別な上司へと変化した。
それからの飲み会では、必ず彼の隣に座り、何度目かの酔った勢いで、携帯のメアドを聞きだした。
それが、圭吾(けいご)さんだ。
親しくなって、彼の優しさも心の豊かさも、よおくわかった。だからあたしはさらにまいった。
恋という、輝かしくも苦い穴に、あれよあれよという間に落ちていった。
それは圭吾さんにとっても、同じことだった。
あたしたちがつき合いはじめて、一年ちょっとになる。
圭吾さんは三十五歳で妻子持ち。世間でいう、不倫である。
まさか自分が不倫をするなんて、考えてもいなかった。倫理を外れた道を歩くなどという貞操のないことを、このあたしがしでかすだなんて。
それでも、あたしと圭吾さんは、たしかに純愛で結ばれている。圭吾さんは、あたしだけを見てくれる。
「俺が愛しているのは、さつきだけだ」
って。
そりゃ、彼は小学二年生になる息子を溺愛(できあい)している。
だけど、奥さんとはセックスレス。圭吾さんは、あたしとしかしない。
あたしは圭吾さんに絶対の信頼を寄せているから、当然このことも信じている。
それにベッドでの彼を見ていれば、なんの偽りもないことがわかる。
だから思う。
愛のない相手と夫婦づらをしているほうが、よっぽど倫理に外れていることなんじゃないかと。
*この続きは製品版でお楽しみください。
だからといって十六人いる職場の異性は、若ければ妻帯者、独身となると加齢臭の漂うおじさんばかり。
とてもオフィスラブなんて期待できる環境じゃなかった。
学校へ通っていたころは、先輩とか先生とか、好きな人に逢いにいっているようなものだったのに。
そんなふうに思っていても、恋は突然やってくる。
あたしは二十二歳で入社した年の秋、職場の上司に恋をしてしまった。
きっかけは、なんていうことはない。
彼が落とした書類を拾ってあげたときの、
「ありがとう」
という笑顔に、まいってしまっただけのことだ。
ただの上司にすぎなかったその人が、特別な上司へと変化した。
それからの飲み会では、必ず彼の隣に座り、何度目かの酔った勢いで、携帯のメアドを聞きだした。
それが、圭吾(けいご)さんだ。
親しくなって、彼の優しさも心の豊かさも、よおくわかった。だからあたしはさらにまいった。
恋という、輝かしくも苦い穴に、あれよあれよという間に落ちていった。
それは圭吾さんにとっても、同じことだった。
あたしたちがつき合いはじめて、一年ちょっとになる。
圭吾さんは三十五歳で妻子持ち。世間でいう、不倫である。
まさか自分が不倫をするなんて、考えてもいなかった。倫理を外れた道を歩くなどという貞操のないことを、このあたしがしでかすだなんて。
それでも、あたしと圭吾さんは、たしかに純愛で結ばれている。圭吾さんは、あたしだけを見てくれる。
「俺が愛しているのは、さつきだけだ」
って。
そりゃ、彼は小学二年生になる息子を溺愛(できあい)している。
だけど、奥さんとはセックスレス。圭吾さんは、あたしとしかしない。
あたしは圭吾さんに絶対の信頼を寄せているから、当然このことも信じている。
それにベッドでの彼を見ていれば、なんの偽りもないことがわかる。
だから思う。
愛のない相手と夫婦づらをしているほうが、よっぽど倫理に外れていることなんじゃないかと。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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