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著者プロフィール
真崎 ひかる(まさき ひかる)
11月15日生まれ。蠍座のO型。香川県出身・在住。
11月15日生まれ。蠍座のO型。香川県出身・在住。
解説
真夜中に電柱を口説き、通りかかった史信に突然キスした変人は、なんとお隣さん! 日頃は寡黙で近寄りがたい隣人・国見は、ある一線を超えると情熱的な男に変身してしまうのだ。しかもその間の記憶が飛ぶようで、なりゆきから国見の食事の面倒を見るようになった史信とキスしたことさえ、憶えていない様子。一見、野犬のようで懐かない男の持つ二面性に惹かれ始めた史信は、情熱的な時の国見に口説かれるまま関係を持ってしまい……!?
目次
恋する本能
愛のトリミング
愛のトリミング
抄録
「あの、本当に退いてくださいよ」
ガックリと脱力してしまいそうになりながら、男の腕を押し退けようとした。
ところが、その腕をガシッと掴まれる。
「やんちゃなところもカワイイね……」
極上の部類に入る容姿だと思うけれど、酔っ払い……しかも男に言われても、嬉しくもなんともない。
「は……はは」
ダメだ。この人、完全に正気を失っている。
思わず乾いた笑いが漏れた。
触らぬ神に崇りなし、だ。殴ったり蹴ったり……下手に刺激せず、そっと逃げるのがベストだろう。
史信は男を押し退けることをあきらめて、腕の下をくぐって逃れようとした。
「ぅえ!?」
グイ、と引き戻された。
男の身体が天井にある蛍光灯の光を遮り、視界が暗くなる。どうして顔が近づいてくるのだろう……と硬直していると、唇にやわらかいものが触れた。
「……っっ!」
強い力で二の腕を掴まれているせいで、抵抗しようとした腕はビクッと震えるだけで終わってしまう。
「これで君は、俺以外の人間が眼中に入らない……」
少しだけ唇を離し、甘ったるい声で呪文のような一言を囁いた男は、再び史信の唇をふさいだ。
なにが起こっているのか……わからない。
「っ、ゃ……ぅ」
唇をこじ開けるようにして、舐められる。嫌だ、と訴えようとしたのがあだになり、前歯の隙間からするりと舌が潜り込んできた。
あまりの出来事に全身が硬直してしまい、ピクリとも動けない。そのあいだも、男は強張った史信の舌を見つけ出し、舌を絡みつかせてくる。
ちゅ……と、濡れた音が聞こえてきた。
「……ぅ、ン、ン……!」
口腔(こうこう)の粘膜を舌先でくすぐられると、勝手に肩が震える。ゾクゾクと背筋が粟立(あわだ)ち、腕にも足にも鳥肌が立つのを感じた。
膝がガクガクと震え、立っていられなくなりそうだった。
全身を駆け巡るのが、快感なのか不快感なのかもわからない。頭の中が真っ白になる。
「……っ、嫌だ!」
自分がどうなってしまうのか……予想もつかないのが怖くて、無我夢中で男の身体を突き放した。
「……ッ」
後ろによろめいた男は、玄関先にあった傘立てに足を引っかけて部屋の中に転がってしまう。史信はその結末を見届けることなく、玄関のドアを開けて廊下に飛び出した。
ズボンのポケットから鍵を取り出して、猛スピードで自室のドアを開けて飛び込む。もし追いかけてきたら……という恐怖感から、振り返ることはできなかった。
勢いよくドアを閉め、焦りに震える手で鍵をかける。ついでにチェーンロックまで施して、やっと大きく息をついた。
「な…んなんだ、あの人……」
吸いつかれた感触が残っているようで、右手の甲でゴシゴシと唇を拭う。
混乱していた頭が少しずつ冷静になると、現実感が一気に押し寄せてきた。
「は、初めてのキスだったのに〜……」
幼馴染みに話した時は爆笑されたけれど、初めてのキスは可愛い女の子と夕日の見える海岸でロマンチックに……とか、夢を持っていたのだ。
史信よりもはるかにガタイのいい男と、酒臭いキス……など悪夢だ。
「ぅえ……しかも、舌……入れられた」
当たり前のように、舌を潜り込ませてきた男の顔を思い浮かべる。造作はよかったかもしれないが、そんなことはなんの慰めにもならない。
とぼとぼ靴を脱いで玄関を上がり、憂鬱なため息をつく。不意に、ポメラニアン呼ばわりされたことまで思い出してしまった。
「そうだ……犬。犬に舐められたことにしよう。犬とベロチューなら、数えきれないくらいしてるし」
ぶつぶつと独り言をつぶやいた史信は、頭の中であの男の顔を犬に置き換えた。
そう……あの男を犬に例えるなら、艶々とした真っ黒の毛に覆われたドーベルマンだ。身体つきはスマートなのに、意外なほど筋肉質な体格も似ている。
それに、ピンと立った耳と、どこか気品の漂う精悍な顔つき。威風堂々という表現がぴったりな立ち姿。
同性としては羨むばかりの格好よさも、犬だと思えばジェラシーなど感じない。
「初対面のドーベルマンにしては、やけにフレンドリーだったな。ははは……」
無理やり現実逃避の独り言をつぶやいた史信だが、リビングのビーズクッションに腰を下ろした途端、気がついた。
「ドーナツが……ない」
隣室に連れ込まれるまでは確かに紙袋を持っていた記憶があるのだから、お隣の玄関先でバタバタした時に落としてきたとしか思えない。
お茶とドーナツで夜食……という楽しみにしていた計画が、音を立てて崩れる。
踏んだり蹴ったりだ。
「も、寝よう」
しょんぼりと肩を落とした史信は、都会とはなんて恐ろしいところなんだ……とため息をつく。懐かしい故郷の山を思い浮かべながら、バスルームへ向かった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ガックリと脱力してしまいそうになりながら、男の腕を押し退けようとした。
ところが、その腕をガシッと掴まれる。
「やんちゃなところもカワイイね……」
極上の部類に入る容姿だと思うけれど、酔っ払い……しかも男に言われても、嬉しくもなんともない。
「は……はは」
ダメだ。この人、完全に正気を失っている。
思わず乾いた笑いが漏れた。
触らぬ神に崇りなし、だ。殴ったり蹴ったり……下手に刺激せず、そっと逃げるのがベストだろう。
史信は男を押し退けることをあきらめて、腕の下をくぐって逃れようとした。
「ぅえ!?」
グイ、と引き戻された。
男の身体が天井にある蛍光灯の光を遮り、視界が暗くなる。どうして顔が近づいてくるのだろう……と硬直していると、唇にやわらかいものが触れた。
「……っっ!」
強い力で二の腕を掴まれているせいで、抵抗しようとした腕はビクッと震えるだけで終わってしまう。
「これで君は、俺以外の人間が眼中に入らない……」
少しだけ唇を離し、甘ったるい声で呪文のような一言を囁いた男は、再び史信の唇をふさいだ。
なにが起こっているのか……わからない。
「っ、ゃ……ぅ」
唇をこじ開けるようにして、舐められる。嫌だ、と訴えようとしたのがあだになり、前歯の隙間からするりと舌が潜り込んできた。
あまりの出来事に全身が硬直してしまい、ピクリとも動けない。そのあいだも、男は強張った史信の舌を見つけ出し、舌を絡みつかせてくる。
ちゅ……と、濡れた音が聞こえてきた。
「……ぅ、ン、ン……!」
口腔(こうこう)の粘膜を舌先でくすぐられると、勝手に肩が震える。ゾクゾクと背筋が粟立(あわだ)ち、腕にも足にも鳥肌が立つのを感じた。
膝がガクガクと震え、立っていられなくなりそうだった。
全身を駆け巡るのが、快感なのか不快感なのかもわからない。頭の中が真っ白になる。
「……っ、嫌だ!」
自分がどうなってしまうのか……予想もつかないのが怖くて、無我夢中で男の身体を突き放した。
「……ッ」
後ろによろめいた男は、玄関先にあった傘立てに足を引っかけて部屋の中に転がってしまう。史信はその結末を見届けることなく、玄関のドアを開けて廊下に飛び出した。
ズボンのポケットから鍵を取り出して、猛スピードで自室のドアを開けて飛び込む。もし追いかけてきたら……という恐怖感から、振り返ることはできなかった。
勢いよくドアを閉め、焦りに震える手で鍵をかける。ついでにチェーンロックまで施して、やっと大きく息をついた。
「な…んなんだ、あの人……」
吸いつかれた感触が残っているようで、右手の甲でゴシゴシと唇を拭う。
混乱していた頭が少しずつ冷静になると、現実感が一気に押し寄せてきた。
「は、初めてのキスだったのに〜……」
幼馴染みに話した時は爆笑されたけれど、初めてのキスは可愛い女の子と夕日の見える海岸でロマンチックに……とか、夢を持っていたのだ。
史信よりもはるかにガタイのいい男と、酒臭いキス……など悪夢だ。
「ぅえ……しかも、舌……入れられた」
当たり前のように、舌を潜り込ませてきた男の顔を思い浮かべる。造作はよかったかもしれないが、そんなことはなんの慰めにもならない。
とぼとぼ靴を脱いで玄関を上がり、憂鬱なため息をつく。不意に、ポメラニアン呼ばわりされたことまで思い出してしまった。
「そうだ……犬。犬に舐められたことにしよう。犬とベロチューなら、数えきれないくらいしてるし」
ぶつぶつと独り言をつぶやいた史信は、頭の中であの男の顔を犬に置き換えた。
そう……あの男を犬に例えるなら、艶々とした真っ黒の毛に覆われたドーベルマンだ。身体つきはスマートなのに、意外なほど筋肉質な体格も似ている。
それに、ピンと立った耳と、どこか気品の漂う精悍な顔つき。威風堂々という表現がぴったりな立ち姿。
同性としては羨むばかりの格好よさも、犬だと思えばジェラシーなど感じない。
「初対面のドーベルマンにしては、やけにフレンドリーだったな。ははは……」
無理やり現実逃避の独り言をつぶやいた史信だが、リビングのビーズクッションに腰を下ろした途端、気がついた。
「ドーナツが……ない」
隣室に連れ込まれるまでは確かに紙袋を持っていた記憶があるのだから、お隣の玄関先でバタバタした時に落としてきたとしか思えない。
お茶とドーナツで夜食……という楽しみにしていた計画が、音を立てて崩れる。
踏んだり蹴ったりだ。
「も、寝よう」
しょんぼりと肩を落とした史信は、都会とはなんて恐ろしいところなんだ……とため息をつく。懐かしい故郷の山を思い浮かべながら、バスルームへ向かった。
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