和書>小説・ノンフィクション>文芸>日本文学>現代小説
著者プロフィール
月森 砂名(つきもり さな)
2001年よりweb上で連載小説+イメージ・フォトを配信。小説部門読者獲得数第一位など、人気を博す。能、バレエ、ダンス全般、ミュージカル、ストレイト・プレイ、コンサート、ライブなどおもに舞台を撮影するフォトグラファー。
2001年よりweb上で連載小説+イメージ・フォトを配信。小説部門読者獲得数第一位など、人気を博す。能、バレエ、ダンス全般、ミュージカル、ストレイト・プレイ、コンサート、ライブなどおもに舞台を撮影するフォトグラファー。
解説
女子校以来の親友、マルチクリエータを自称するテンコと、お水のポン助。そして売れっ子小説家のロン。女二人+男一人が4LDKのマンションで、三人仲良くルームシェア……と思いきや、みんなてんでバラバラ、自分勝手な暮らしぶり。そこへ風変わりな家出美少女と、体育会系元熱血教師が加わって、ますます混線状態!
さて登場人物たちの恋の行方は? ちょっぴり「うす塩味」なラブ・コメディーをどうぞ!
さて登場人物たちの恋の行方は? ちょっぴり「うす塩味」なラブ・コメディーをどうぞ!
抄録
若葉の頃「五月」というのは、本当に誰にとっても爽やかでいい時期なんだろうか。
気候の変化についていけないせいか、萌えいずる若芽から発っせられる「何か」のせいか、たまらなくイライラする季節に思えるときもある。
一時間後の空の青さを予感できるような、白い明るさに包まれたベッドの中の、朝のひととき…。
今日は、買ってきたまま「積ん読《つんどく》」になっている本を読もう。
見晴らしのいいベランダの、日溜りの中で。
一日中…。
──どうせ仕事ないし…
実はゴールデンウィークからずっとない。
「仕事断わったことないし、ギャラが安いってゴネたこともないのに」
フリーなんだから一応の覚悟はしている。
けれどこんなに長く仕事にあぶれたことはなかった。
決まりかけていたはずの仕事も、「じゃあ、また」と笑顔で別れたきり、担当さんからはさっぱり連絡がない。
「ま、いいか」などとノンキに構えて、はや二週間。
「松村 殿子―Tonoko Matsumura」
○○erや○○estの肩書のついた6種類もの名刺を持っている私は、売れっ子だったら「マルチ」とかってモテはやされているのかも知れないけれど、忘れられてもしょうがないような小手先仕事でお茶を濁して、もう4年になる。
「テンコ、半月も仕事なくてよく平気よね」、ルームメイトのポン助なら言うだろう。
「二週間」といえばいいのに、わざわざ「半月」と言い直したりして …。
もちろん、「長い」ということを強調するためにだ。
…実に嫌味な女だ。
「充電期間って呼んでよ」
「そうよね、街中でやってる映画ゼーンブ観て、新しく出たDVDもミーンナ観て。ここに積んだ本もすべて読むつもりなんでしょ?」
不揃いに積まれた不安定な本の山を、人差し指でツンと押す。簡単に崩れ落ちた瓦礫は、側にまとめて置いてあった映画のチケットの半券や、レンタル屋のレシートを巻き添えにして、あたりに散らかった。
「ま、せいぜい、がんばんなさい」
ぽんと肩を叩いて出ていったポン助は、今はほとんどここにはいない。
夜のお商売に精を出す一方、昼間、「短期間であなたにも取れる」コースでスキューバーダイビング教室に通うことに決めた、と聞いたのは、三週間前のことだった。
「あらん、ポン助って泳げたっけ?」
ちょっとヒトコト言っただけなのに、一週間後には「10メートル泳げるようになったわ。どうよ!」とカタキでも取って来たような形相で詰め寄った。
「ス、スゴイじゃん、だけど夏までには、せめて2〜300メートルは泳げないとね。でなきゃサマになんないわよ」
負け惜しみで言っただけなのに、真に受けたポン助は、
「特訓するわ!」
悔しそうに吐き捨てると、翌々日身の回りの物だけ持って、朝早くに家を出て行った。
「スキューバーするのに、必ずしも泳げなくてはならないというわけでもないのに…」呟いた言葉だけが、虚しくとり残された。
新しく引越した、マンションの住所と電話番号の書かれたメモが、テーブルの上に残されていた。
お店とスイミングスクールの近くだ。
偉そうに言ったものの、実は5メートルしか泳げない私は唖然とした。
──いくらお金に不自由ないとはいえ、よくやるわ
もっとも恋多き彼女のこと。
このマンションがあるのに、別に部屋を借りたのには、それ以外の目的もあると私は睨んでいるのだが…。
*この続きは製品版でお楽しみください。
気候の変化についていけないせいか、萌えいずる若芽から発っせられる「何か」のせいか、たまらなくイライラする季節に思えるときもある。
一時間後の空の青さを予感できるような、白い明るさに包まれたベッドの中の、朝のひととき…。
今日は、買ってきたまま「積ん読《つんどく》」になっている本を読もう。
見晴らしのいいベランダの、日溜りの中で。
一日中…。
──どうせ仕事ないし…
実はゴールデンウィークからずっとない。
「仕事断わったことないし、ギャラが安いってゴネたこともないのに」
フリーなんだから一応の覚悟はしている。
けれどこんなに長く仕事にあぶれたことはなかった。
決まりかけていたはずの仕事も、「じゃあ、また」と笑顔で別れたきり、担当さんからはさっぱり連絡がない。
「ま、いいか」などとノンキに構えて、はや二週間。
「松村 殿子―Tonoko Matsumura」
○○erや○○estの肩書のついた6種類もの名刺を持っている私は、売れっ子だったら「マルチ」とかってモテはやされているのかも知れないけれど、忘れられてもしょうがないような小手先仕事でお茶を濁して、もう4年になる。
「テンコ、半月も仕事なくてよく平気よね」、ルームメイトのポン助なら言うだろう。
「二週間」といえばいいのに、わざわざ「半月」と言い直したりして …。
もちろん、「長い」ということを強調するためにだ。
…実に嫌味な女だ。
「充電期間って呼んでよ」
「そうよね、街中でやってる映画ゼーンブ観て、新しく出たDVDもミーンナ観て。ここに積んだ本もすべて読むつもりなんでしょ?」
不揃いに積まれた不安定な本の山を、人差し指でツンと押す。簡単に崩れ落ちた瓦礫は、側にまとめて置いてあった映画のチケットの半券や、レンタル屋のレシートを巻き添えにして、あたりに散らかった。
「ま、せいぜい、がんばんなさい」
ぽんと肩を叩いて出ていったポン助は、今はほとんどここにはいない。
夜のお商売に精を出す一方、昼間、「短期間であなたにも取れる」コースでスキューバーダイビング教室に通うことに決めた、と聞いたのは、三週間前のことだった。
「あらん、ポン助って泳げたっけ?」
ちょっとヒトコト言っただけなのに、一週間後には「10メートル泳げるようになったわ。どうよ!」とカタキでも取って来たような形相で詰め寄った。
「ス、スゴイじゃん、だけど夏までには、せめて2〜300メートルは泳げないとね。でなきゃサマになんないわよ」
負け惜しみで言っただけなのに、真に受けたポン助は、
「特訓するわ!」
悔しそうに吐き捨てると、翌々日身の回りの物だけ持って、朝早くに家を出て行った。
「スキューバーするのに、必ずしも泳げなくてはならないというわけでもないのに…」呟いた言葉だけが、虚しくとり残された。
新しく引越した、マンションの住所と電話番号の書かれたメモが、テーブルの上に残されていた。
お店とスイミングスクールの近くだ。
偉そうに言ったものの、実は5メートルしか泳げない私は唖然とした。
──いくらお金に不自由ないとはいえ、よくやるわ
もっとも恋多き彼女のこと。
このマンションがあるのに、別に部屋を借りたのには、それ以外の目的もあると私は睨んでいるのだが…。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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