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ライバルも犬を抱く

ライバルも犬を抱く

著: 剛しいら
発行: ごじらん堂本舗
シリーズ: ドクター×ボクサーシリーズ
価格:515円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 剛 しいら(ごう しいら)
 6月9日生まれ、双子座。血液型はえーっ、えーなのーっと思わせる、えー型。

解説

 ボクシング一本に打ち込む不器用な青年、橋口徹は、傲慢に無邪気に近づいてくる西條東に振り回されつつも、彼を唯一無二のライバルとして認識していく……。その他、徹と加藤の関係を知ったトレーナー・西崎の短編も収録した、シリーズ第二弾。表題作他4編収録。

目次

ROUND5 ライバルも犬を抱く
ROUND6 レディは犬を嫌う
INTERVAL ダンサーが犬を蹴る
ROUND7 トレーナーは犬に学ぶ
ROUND8 ヤクザが犬を撃つ

抄録

「ファイトッ」
 コーチは審判らしく二人に声をかけた。
 徹は冷静に攻撃をしかける。笑われたのは自分が馬鹿にされたからだと、以前の徹だったら考えただろう。だが今は、不思議と腹が立たなかった。東がちゃんと相手してくれているということは、ライバルとして認められていると知ったからだ。
 確かに東のボクシングは完璧だ。だが機械ではない。捜し出せばきっとどこかに欠点はある。それを見つけだすのも楽しみだ。そんな贅沢《ぜいたく》な楽しみを与えてくれる対戦相手なんて、そういるものではない。
 夢中になって打ち合った。すると徹の頭の中はどんどん空っぽになっていって、テレビカメラが回っていることも、雑誌のカメラマンがフラッシュをたくのも、全然気にならなくなった。
 どこか遠くの、誰もいない原っぱの真ん中で、殴り合いの喧嘩をしている子供になった気分だ。真っ青な空や、白い綿雲《わたぐも》までが見えるようだ。そして流れる汗には、野原を転げ回った後の爽快感《そうかいかん》があった。
 徹は子供の時、こんな風に誰かと真剣に殴り合いの喧嘩をしたことはない。徹だけではないだろう。時代は力による解決を、子供社会では認めなくなった。だから殴り合いの痛みを知ることもなく、みんな大人になってしまうのだ。
 子供時代に誰かと、頭の中が空っぽになるまで殴り合うような喧嘩をしていたら、徹ももっと人間との付き合いがうまくなったかもしれない。言葉で語れない分、肉体で語ることが出来たら、案外もっと早くに、本当の友達を見つけられただろうか。
 そうしたら、徹はボクシングを選んだだろうか。
 ボクシングを選ばなかったら、今の生活はない。
 また東の腕がからんでクリンチになった。東はおどけて、徹のほおにキスする真似までする。さすがにそれはやり過ぎだと思ったが、いつか徹も、小さく口元を歪めて笑っていた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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