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君の声が聞こえる

君の声が聞こえる


発行: いるかネットブックス
価格:150pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 浅葉 りな(あさば りな)
 7月27日生まれ。獅子座のO型。小説のほかに、ゲームのシナリオやコミックの原作を執筆。

解説

 僕にはひとつ、秘密があった。それは、僕が人間ではないこと。民話なんかに出てくる“サトリの化け物”だということだ。
僕には人の心が聞こえる。耳をぎゅっとふさいでいても、強い想いは聞こえてしまう……。僕には人里はつらすぎる。でも、それでもここでしか生きていけないことはわかっているから、僕は今日も心にカギをかける。
 そうやって無理に生きていた僕は、あるとき、同じ学校に通う瀬谷と出会う。瀬谷の心は僕の耳には“聞こえない”。そして、ただただ優しくしてくれる瀬谷に、僕は次第に心惹かれていく……。僕は、どうしたらいいんだろう? こんな僕でも、君のそばにいていいんだろうか……? 戸惑いながらのラブ・ストーリー。
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

「たまには屋上も悪くないね」
 言いながら、瀬谷が大きく伸びをする。
 きれいに整えられた髪が風に乱されて、細い割にはしっかりと筋肉のついている腕にからみつく。瀬谷はうっとうしそうに髪を払うと、僕に向かって微笑みかける。
「たまに、風がうざったいけど」
「わかるー。ちょっと髪、切りたい気分」
 瀬谷は髪を指先でいじりながら言う。
 瀬谷の髪は長すぎず短すぎず、品のいい感じに仕上がっている。このままの方がいいのに、と僕は思った。
「僕、水泳やってるから、余計にそう思うのかもなんだけどね。キャップに入れるのも大変で」
「あー、わかる」
 僕は大きくうなずいた。
 僕の髪は背中あたりまである。切りたいなとは思うのだけど、人間の姿をしているときに髪を切ったりすると、原型に戻ったときにとんでもないことになったりして、なかなか難しい。
「でも、そんなに切りたいんだったら、切ればいいのに」
「そうなんだけどねー……」
 言いながら、瀬谷はため息をついた。
「うちの母親、うるさくって」
「そうなんだ?」
「髪なんか切ったら、なに言われるかわからないよ。本当はお昼だって、適当になにか買って食べるよって思うんだけど、こないだ、それ言ったら大泣きされちゃって」
「本当に?」
 僕は目をぱちくりさせた。全然、想像がつかない。
 もちろん、僕は妖怪だから、人間と感覚は違うのかもしれないけど……。人間の親が過保護だっていうのは本当なんだなあ、としみじみ思った。
 僕にも一応、母親、というのはいるけれど、もうほとんど覚えてすらいない。
 妖怪は母子といえどもなにか特別なつながりがあるわけでもなく、母親は生きていくために必要なことを教えたら、すぐにどこかへ行ってしまう。もちろん、人間みたいに一緒に暮らす妖怪がいないわけじゃないけど、少数派だ。
 一緒にいる間も、特になにかしてくれるわけでもない。間違ったことをすれば間違っていると言うだけだ。その程度のことで泣いたり怒ったりするのは人間くらいのものだと思う。
「まいっちゃうよ。山岸くんのところはどう?」
「うち、いないからなあ」
 まあ、当然の話、僕の母親はずいぶんと昔にどこかへ行ってしまっているから、今はどこにいるのかもわからない。
 だから僕は、両親を既になくしていて、遠い親戚に引き取られている――ということになっている。親戚とは折り合いが悪くて、今は安アパートで一人暮らしをしている、という設定だ。
 もちろん、本当は親戚なんてものはいないけど、いざというときには近所に住んでいる二口女の佳代姉さんが「親戚の中でも唯一仲のいい、年の離れたいとこ」の役をつとめてくれる。
「あ、ごめん……」
 瀬谷がうつむく。
「いいって」
 本当のことじゃないから、そういう顔をされると僕も困ってしまう。
「なんか、僕、贅沢だよね」
「そうでもないと思うけど」
「そうかな」
「うん」
 人間っていうのは、そういう生き物なんだと思う。だからここまで増えたんだし、だから僕たちはその中に混じってひっそりと暮らしている。
「いいやつだよね、山岸くんて」
「そうかな」
「それ、僕の真似?」
 笑いをこらえながら瀬谷が訊ねてくる。
「偶然だって」
 そう返したけど、瀬谷は身体をくの字に曲げて笑い転げる。ツボにはまったらしい。
 それを見ながら僕は、なんだかうらやましいなと思った。
 僕は一度も、あんなふうに笑ったことはないような気がするから。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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