和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>王子
著者プロフィール
ゆりの 菜櫻(ゆりの なお)
誕生日 2月2日/星座 みずがめ座/血液型 O型
誕生日 2月2日/星座 みずがめ座/血液型 O型
解説
【電子書籍だけ! 特別番外編収録!!】明治時代――留学先のドイツで知人に騙され、闇市に売られてしまった公爵家次男の陸軍少尉、晴彦。彼を買ったのはサリジタール王国の第四王子ファイサルだった。狙った獲物は決して逃さぬ、黄金色の鷹の瞳をもつ王子ファイサルは、その夜のうちに晴彦を自国へと連れ去る。妾妃としての屈辱的な責めの数々に、自尊心を打ち砕かれながらも晴彦は……。内紛に揺れる灼熱の王国……狂い咲く妖艶ラブ♪
目次
軍服は鷹の獲物
チェリー・ブラッサム【電子書籍特別番外編】
チェリー・ブラッサム【電子書籍特別番外編】
抄録
糸が切れたマリオネットのように、がっくりと晴彦の身体から力が抜け落ちた。
ファイサルは晴彦が床へ倒れないように、しっかりと抱きとめる。
晴彦の身体の熱が手に伝わってきて、彼の身体がファイサルの与える快楽によって悦んでいたのが手に取るようにわかった。
「晴彦」
彼のこめかみに柔らかなキスを落とす。先ほどまでのような激しさの伴うものではない。安らかな眠りを与えたいと思いやるキスである。
ファイサルは晴彦を抱き上げると、そのまま湯壺(ゆつぼ)へと歩を進めた。すぐに侍女たちが介助しようと近づいてきた。
一瞬、晴彦が彼女たちを嫌がったことを思い出す。
「───下がっておれ。一人でやる」
意識のあるうちに願いを聞いてやるのが一番いいとはわかっているが、ファイサルもつい反抗されたことに怒りを覚え、苛めてしまうのだ。
しかも苛めた方が晴彦は何倍も色気を出すので、なかなかやめられない。
ファイサルは湯壺に身体を沈めると、そっと晴彦を自分の胸に凭れかけさせた。
静かな寝息が聞こえる。
伯林からずっと調教され続けてきたのだ。道具を挿れられていたために、夜も眠りが浅かったようだから、さすがに体力の限界なのだろう。
彼の垂れていた前髪をそっと払ってやる。艶やかで滑らかな黒髪は、ファイアルと同じ色であってもしなやかだ。たまらずにその旋毛(つむじ)に唇を寄せる。
すっと胸が穏やかになる。ほんわかとしたような、ゆったりとした気持ちで寛(くつろ)いだ。
こんな気持ちは久々だった。思い出すなら子供の頃、飼っていた子犬を胸に抱いて夜一緒に寝たとき以来だろうか。
いや、厳密には違う。あの頃と同じように愛(いと)しいとは思うが、こんなに狂おしいような想いは抱かなかった。
「いったい、お前は私に何をしたんだ? このわけのわからない複雑な想いはなんなのだ?」
尋ねても、意識を失っている晴彦が答えるはずもない。
今までの恋人たちとの逢瀬(おうせ)は、気持ちがいい、可愛い、都合がいい、そんな言葉で語られるものでしかなかった。だが、晴彦に対しては、この三つの他に何か別の想いが混在するのだ。それが何かはっきりしないために、ひどく彼に執着するのも確かだった。
攫(さら)って宮殿に閉じ込めたい───。
欧州のどこかで逢瀬を愉しんでもよかったはずなのだ。それをわざわざ手間をかけて自分の国まで連れてきて閉じ込めたいと思った、自分の衝動的な行動が理解できない。
ガルービアのせいだろうか。
自慢の鷹が生け捕ったので、つい獲物的感覚で持ち帰ってしまったのだろうか。
困惑する。
だが、そういう惑いはあっても、晴彦をここへ攫ってきたことを間違いだとは思わなかった。相変わらずの本能で嗅ぎ分ける微妙なバランスに、ファイサルも自分自身のことながらお手上げである。
昔からあまり深く考えずに行動しているのも敗因かもしれないが、本能のまま行動して失敗したこともないので、反省したことがない。それも王族たる所以(ゆえん)かもしれない。
「今さら考えても意味がないか」
ファイサルは自分の腕の中で気持ちよく眠る晴彦に再び、視線を落とした。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ファイサルは晴彦が床へ倒れないように、しっかりと抱きとめる。
晴彦の身体の熱が手に伝わってきて、彼の身体がファイサルの与える快楽によって悦んでいたのが手に取るようにわかった。
「晴彦」
彼のこめかみに柔らかなキスを落とす。先ほどまでのような激しさの伴うものではない。安らかな眠りを与えたいと思いやるキスである。
ファイサルは晴彦を抱き上げると、そのまま湯壺(ゆつぼ)へと歩を進めた。すぐに侍女たちが介助しようと近づいてきた。
一瞬、晴彦が彼女たちを嫌がったことを思い出す。
「───下がっておれ。一人でやる」
意識のあるうちに願いを聞いてやるのが一番いいとはわかっているが、ファイサルもつい反抗されたことに怒りを覚え、苛めてしまうのだ。
しかも苛めた方が晴彦は何倍も色気を出すので、なかなかやめられない。
ファイサルは湯壺に身体を沈めると、そっと晴彦を自分の胸に凭れかけさせた。
静かな寝息が聞こえる。
伯林からずっと調教され続けてきたのだ。道具を挿れられていたために、夜も眠りが浅かったようだから、さすがに体力の限界なのだろう。
彼の垂れていた前髪をそっと払ってやる。艶やかで滑らかな黒髪は、ファイアルと同じ色であってもしなやかだ。たまらずにその旋毛(つむじ)に唇を寄せる。
すっと胸が穏やかになる。ほんわかとしたような、ゆったりとした気持ちで寛(くつろ)いだ。
こんな気持ちは久々だった。思い出すなら子供の頃、飼っていた子犬を胸に抱いて夜一緒に寝たとき以来だろうか。
いや、厳密には違う。あの頃と同じように愛(いと)しいとは思うが、こんなに狂おしいような想いは抱かなかった。
「いったい、お前は私に何をしたんだ? このわけのわからない複雑な想いはなんなのだ?」
尋ねても、意識を失っている晴彦が答えるはずもない。
今までの恋人たちとの逢瀬(おうせ)は、気持ちがいい、可愛い、都合がいい、そんな言葉で語られるものでしかなかった。だが、晴彦に対しては、この三つの他に何か別の想いが混在するのだ。それが何かはっきりしないために、ひどく彼に執着するのも確かだった。
攫(さら)って宮殿に閉じ込めたい───。
欧州のどこかで逢瀬を愉しんでもよかったはずなのだ。それをわざわざ手間をかけて自分の国まで連れてきて閉じ込めたいと思った、自分の衝動的な行動が理解できない。
ガルービアのせいだろうか。
自慢の鷹が生け捕ったので、つい獲物的感覚で持ち帰ってしまったのだろうか。
困惑する。
だが、そういう惑いはあっても、晴彦をここへ攫ってきたことを間違いだとは思わなかった。相変わらずの本能で嗅ぎ分ける微妙なバランスに、ファイサルも自分自身のことながらお手上げである。
昔からあまり深く考えずに行動しているのも敗因かもしれないが、本能のまま行動して失敗したこともないので、反省したことがない。それも王族たる所以(ゆえん)かもしれない。
「今さら考えても意味がないか」
ファイサルは自分の腕の中で気持ちよく眠る晴彦に再び、視線を落とした。
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