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死体が丘

死体が丘


発行: キリック
価格:500pt
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

 住民たちは誰も近づかない、いわくつきの丘がその町にはあった。殺人を犯した人間が夜な夜なやって来ては、そこに死体を捨てていく。理由はわからない。だが、ニュースになった死体遺棄事件はすでに六件を数えた。死体が丘──その不吉で忌まわしい丘は、そう呼ばれている。
 死体が丘から一キロも離れていない中学校に通う間山昴《まやますばる》は、目の前に禍々しくそびえる丘を見るたび、いつもブルーになる。が、その日はそれを通り越して最悪だった。同級生の八代が死体が丘で肝だめしをやると言い出したのだ。立場の少し弱い昴は、当然のごとく強制参加となり、立ち入り禁止の丘に足を踏み入れる。そこで彼が目にしたものとは……?

 霊を超えた霊の恐怖が貴方の背筋を凍らせる……表題作「死体が丘」のほか、携帯世代を襲う呪いの恐怖を描いた中編『ツチクレニンギョウ』を同時収録!

目次

死体が丘
ツチクレニンギョウ

抄録

 一台の白い車が、夜の道を走っている。
 周囲は漆黒に近い闇だ。街灯もなく、車のヘッドライトだけが光源である。
 運転しているのは、灰色の作業服を着た中年の男だ。
 白髪まじりの前髪が、汗で額にべったりと張りついている。
 車内には彼以外の人影はない。
(どれくらい来ただろうか)
 男は思った。
 道の両脇を挟む雑木林の木の幹が、ヘッドライトに一瞬白く照らされては後方に流れていく。そんな景色が、もう二時間近く続いていた。
 もうずいぶんな距離を走ってきたはずだ。かなり遠ざかっただろう。自宅からも、犯行現場からも。
(重い……)
 男はふいに、アクセルを踏み込む欲求にかられた。
(車が重い。特に後ろのほうが……トランクのあたりが、重い)
 彼はしかし、その考えを理性で打ち消した。
 そんなわけがないのだ。たしかにトランクは空ではないが、その積み荷は運転に支障をきたすような重さではない。
(……引きずって運んだときの感触が残っていて、そう感じるだけだ)
 男は自分に言い聞かせつつ、額の汗を左手の甲でぬぐった。
(そんなことより、そろそろ捨て場所を決めなければ)
 日が落ちたあとに出発して以来、車はいくつもの山を越え、今も山の勾配をくだっていた。窓の外に目を凝らしても、木立ちと、それに絡まる蔦《つた》以外は、闇しか見えない。ここ一時間ほどは、ほかの車とすれ違うこともなかった。
(このへんでいいか……。民家の明かりも見あたらないし、かなり山奥まで来たはずだ)
 男はブレーキを踏もうと、右足を浮かせた。
(いや、待て)
 が、別の考えが湧き、足をもとの位置に戻した。
(たしか県境の手前に、中学校があったはずだ。あそこは通りすぎただろうか?)
 男は懸命に記憶を探った。
 しかし夢中で走ってきたせいで、よく覚えていなかった。
(あそこを通過していなければ、まだ隣県にも入っていない。そうなると、まだ市街地からさほど離れていない……)
 ためらっているあいだに、道の前方の展望が変わった。
 闇を深めていた正体であるところの、ずっと続いていた緑のトンネルが、すこし先で途切れていた。上のほうに、星も出ていない濃紺の空が覗いている。
 そして、その暗い空をさらに黒く切り取るように、地上に小山が横たわっていた。
 山というほどの規模ではない。
 だが森と呼ぶには、地面が弓状に高く盛りあがっていた。
 小山、あるいは、丘。そんな感じだった。
 丘には木々が密生していた。シルエットでそれは見て取れる。
 上空で強い風が吹いているのか、枝からびっしりと生えて垂れさがる葉が、狂ったようにぶつかりあっている。
 そんなふうに豊かな自然を育《はぐく》んでいるのに、死んだように暗い丘だった。
 男はその丘に、惹かれるものを感じた。
 おあつらえ向きに思えたのだ。
 しかし、今の彼に一番重要なのは、正確な現在地を知ることだった。
(そうだ、カーナビで確認すればいいんだ。こんなことも思いつかないなんて……)
 慣れない作業と緊張のせいで、男は疲れきっていた。
 カーナビに手をのばそうと、左手をハンドルから離した。
 そのとき、突然、車の前を黒い影がよぎった。
「!?」
 男はあわててブレーキを踏んだ。
 タイヤが短い悲鳴をあげ、反動に思わず彼は目をつぶる。
 なにかにぶつかる衝撃もなく、車は停まった。
(なんだ? 動物か? なんにせよ轢いてはいないだろうが──)
 男は目を開け、顔をあげた。
 ヘッドライトの中に、黒い小さな人影があった。
 車のライトを浴びてもなお黒いそれは、十歳にも満たないような幼い少女だった。黒い大きめのカーディガンをはおっている。彼の車の三メートルほど先、彼のほうを向いて立っていた。
(子供……?)
 男は我が目を疑った。
 なぜ、ひとりでこんな山奥に? それも、こんな時間に?
 とっさに車内の時計を確認する。午前〇時近かった。
 そうこうするうちに、少女が歩きはじめた。迷いのない足取りで、車のほうに近づいてくる。
 よく見ると、カーディガンの下はパジャマのようだ。そのパジャマも黒く、赤い小さな金魚の柄がところどころに血のように散っていた。
 人ならざるものかと、男は一瞬恐怖にかられた。
 だが、どうもそんな雰囲気でもない。少女の血色のある頬は、むしろ健康的に見えた。
 ただし少女は無表情であった。
 少女は車のすぐ前に立ちはだかり、フロントガラスの奥を、運転席の男のほうをじっと見た。
(迷子か……?)

*この続きは製品版でお楽しみください。

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