和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>兄弟
解説
「兄貴、オレもう我慢できない」
生真面目な生活を送る高校教師、悠のもとに転がり込んできた疎ましい人物……それは、若手俳優の黒崎祥こと弟の涼司だ。中学時代から芸能界に入り、今では“抱かれたい男ナンバーワン”として人気の涼司。だが二人には獣じみた過去が……。5年前、力ずくで涼司に嬲られたあの夜……。兄を貶め征服する弟……その存在に怯え囚われる兄。そこにあるのは憎しみ、執着それとも…? 歪んだ禁忌なる究極愛!
生真面目な生活を送る高校教師、悠のもとに転がり込んできた疎ましい人物……それは、若手俳優の黒崎祥こと弟の涼司だ。中学時代から芸能界に入り、今では“抱かれたい男ナンバーワン”として人気の涼司。だが二人には獣じみた過去が……。5年前、力ずくで涼司に嬲られたあの夜……。兄を貶め征服する弟……その存在に怯え囚われる兄。そこにあるのは憎しみ、執着それとも…? 歪んだ禁忌なる究極愛!
目次
兄弟
兄
兄
抄録
「涼司……ここに、女を、連れ込んだのか」
僕の口は、勝手にそう動いていた。
そう、これは明らかに情事の痕だった。玄関を入った瞬間に感じた、産毛が逆立つようなこの感覚。それは僕自身が涼司に味わわされた、興奮と性欲に乱れた後の空気だった。
「……そうだけど。それが何?」
涼司は目を細め、唇の片端を吊り上げた。それが僕を嗤った表情だと気づくのに数秒かかった。
「ふざけるなよ……涼司!!」
頭の後ろから火を当てられたように目の前が赤くなった。どうしてこんなことができるのか。僕は涼司を殺してやりたいと思った。
「人の部屋で、何やってるんだ!! ふざけるな、最悪だ!!」
「兄貴が来ないのが悪いんだろ」
涼司は淡々と答える。
「二時間待ってたけど、来なかったじゃん。仕方ないから女誘うだろうが」
「それなら外でいいだろ! わざわざ人の部屋に連れてきてすることか!」
「だってこの部屋、興奮すんだもん」
涼司の言葉に、息が止まる。
「兄貴の匂いすんじゃん、ここ。当たり前だけどさ、兄貴がずっといたんだし。オレさ、無条件で勃っちまうんだよね。ここにいると」
涼司が何かを喋っている。僕の頭はそれを言語として解することができず、ただ馬鹿みたいに突っ立ってぼんやりしている。
「オレさ、分かったんだよ、兄貴」
涼司の手が伸びてくる。
僕を抱きしめ、耳に口を押しつける。僕ははっと息を呑む。
「兄貴ってさ、ずっとオレのこと嫌いじゃん。昔からそうだったけど、今も。虫でも見るみてえに嫌そうな顔して、そのくせ怯えて怖がってたよな」
涼司の手が器用に僕のジャケットを履がす。
「何、するんだ、やめろ!」
僕は叫んでその手を遮ろうとするけれど、涼司は無視した。力ずくの小競り合いに僕が敵うはずはなく、シャツの前をむしるように強引に開かれる。涼司は僕の唸り声を遮るように喋り続ける。
「オレは兄貴と元通りになりたかったんだ……変になっちまった関係を戻したかったんだ。だけど、兄貴はだめなんだよな。オレのことが信じられないんだ」
暴れる身体を抱きしめられ、必死で離れようと涼司の腕に爪を立てる。肉に食い込み血が滲む。痛いはずなのに涼司は僕を離さない。開いた胸元から涼司の汗の匂いがする。僕はそれを頭の片隅で懐かしいと感じる。
「でもさ、兄貴って何かを信じたことなんか、ないだろ? 信じられないんだ。信じるのって、不安だもんな。裏切られるかもしれないし」
僕の耳に言葉を注ぎ込みながら、分厚い手が僕の体中を這い回る。全身に鳥肌が立ち、煮えるような頭で涼司を引き履がそうとする。けれどやっぱりビクともしない。怒りは次第に恐怖に変わる。全力疾走した後のように心臓が暴れている。ゼエゼエと息を荒らげる。見開いた目の縁に涙が溜まる。
「兄貴が安心できる唯一の時間、教えてやろうか? それってさ、兄貴が想定してるいちばん悪い状態のときだよ」
「やめろ……涼司、やめてくれ!」
涼司は僕の悲鳴を合図にするかのように、思いきり僕を突き飛ばす。大きく視界が回転し、僕はソファに背中から無様に倒れる。間髪入れずに涼司がのしかかってきて、ソファと涼司の間に挟まれる。裸の肌が直接、押しつけられた涼司の体温を感じている。歯の根が合わなくなる。極度の恐怖と興奮に唇が震え出す。
「涼司……頼むから、涼司……」
「地面に身体押しつけてないと不安なんだろ? もう落ちるところがないって思うまで、兄貴は不安なんだ。いいよ何も言わなくて。オレ分かってるからさ」
「りょ……、うっ」
熱い唇に口を吸われる。
*この続きは製品版でお楽しみください。
僕の口は、勝手にそう動いていた。
そう、これは明らかに情事の痕だった。玄関を入った瞬間に感じた、産毛が逆立つようなこの感覚。それは僕自身が涼司に味わわされた、興奮と性欲に乱れた後の空気だった。
「……そうだけど。それが何?」
涼司は目を細め、唇の片端を吊り上げた。それが僕を嗤った表情だと気づくのに数秒かかった。
「ふざけるなよ……涼司!!」
頭の後ろから火を当てられたように目の前が赤くなった。どうしてこんなことができるのか。僕は涼司を殺してやりたいと思った。
「人の部屋で、何やってるんだ!! ふざけるな、最悪だ!!」
「兄貴が来ないのが悪いんだろ」
涼司は淡々と答える。
「二時間待ってたけど、来なかったじゃん。仕方ないから女誘うだろうが」
「それなら外でいいだろ! わざわざ人の部屋に連れてきてすることか!」
「だってこの部屋、興奮すんだもん」
涼司の言葉に、息が止まる。
「兄貴の匂いすんじゃん、ここ。当たり前だけどさ、兄貴がずっといたんだし。オレさ、無条件で勃っちまうんだよね。ここにいると」
涼司が何かを喋っている。僕の頭はそれを言語として解することができず、ただ馬鹿みたいに突っ立ってぼんやりしている。
「オレさ、分かったんだよ、兄貴」
涼司の手が伸びてくる。
僕を抱きしめ、耳に口を押しつける。僕ははっと息を呑む。
「兄貴ってさ、ずっとオレのこと嫌いじゃん。昔からそうだったけど、今も。虫でも見るみてえに嫌そうな顔して、そのくせ怯えて怖がってたよな」
涼司の手が器用に僕のジャケットを履がす。
「何、するんだ、やめろ!」
僕は叫んでその手を遮ろうとするけれど、涼司は無視した。力ずくの小競り合いに僕が敵うはずはなく、シャツの前をむしるように強引に開かれる。涼司は僕の唸り声を遮るように喋り続ける。
「オレは兄貴と元通りになりたかったんだ……変になっちまった関係を戻したかったんだ。だけど、兄貴はだめなんだよな。オレのことが信じられないんだ」
暴れる身体を抱きしめられ、必死で離れようと涼司の腕に爪を立てる。肉に食い込み血が滲む。痛いはずなのに涼司は僕を離さない。開いた胸元から涼司の汗の匂いがする。僕はそれを頭の片隅で懐かしいと感じる。
「でもさ、兄貴って何かを信じたことなんか、ないだろ? 信じられないんだ。信じるのって、不安だもんな。裏切られるかもしれないし」
僕の耳に言葉を注ぎ込みながら、分厚い手が僕の体中を這い回る。全身に鳥肌が立ち、煮えるような頭で涼司を引き履がそうとする。けれどやっぱりビクともしない。怒りは次第に恐怖に変わる。全力疾走した後のように心臓が暴れている。ゼエゼエと息を荒らげる。見開いた目の縁に涙が溜まる。
「兄貴が安心できる唯一の時間、教えてやろうか? それってさ、兄貴が想定してるいちばん悪い状態のときだよ」
「やめろ……涼司、やめてくれ!」
涼司は僕の悲鳴を合図にするかのように、思いきり僕を突き飛ばす。大きく視界が回転し、僕はソファに背中から無様に倒れる。間髪入れずに涼司がのしかかってきて、ソファと涼司の間に挟まれる。裸の肌が直接、押しつけられた涼司の体温を感じている。歯の根が合わなくなる。極度の恐怖と興奮に唇が震え出す。
「涼司……頼むから、涼司……」
「地面に身体押しつけてないと不安なんだろ? もう落ちるところがないって思うまで、兄貴は不安なんだ。いいよ何も言わなくて。オレ分かってるからさ」
「りょ……、うっ」
熱い唇に口を吸われる。
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