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王子隷属1

王子隷属1

著: 矢城米花 画: 陸裕千景子
発行: 二見書房
レーベル: シャレード文庫 シリーズ: 王子隷属
価格:840円(税込)
10ポイント還元
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆14
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解説

 綺国の第一王子だが妾腹の身分である蔡紹維は、敵国との戦に乗じて叔父の蔡義寿が反乱を起こしたため、王太子で弟・勇圭とともに逃れていた。しかし湧魔谷に迷い込み、二人は魔物に襲われてしまう。そこで、紹維は亡き母に与えられたお守りに頼ろうと白玉を割ると、中から仙狐の朱炎流が現れる。無事に命を救われるが、精気を得るためと無理やりに身体を蹂躙されてしまう。さらに毒に倒れた勇圭を助ける代わりに紹維は炎流の“奴隷”になる取引をすることになり――。一方、道士・張黒牙は、紹維を狙い不穏な動きを見せる。仙狐の炎流に隷属する契約を結んだ王子・紹維の運命は――。

目次

王子隷属1〜仙狐異聞〈1〉
王子隷属1〜仙狐異聞〈2〉
仙狐囚縛

抄録

「ちっ。もう終わりか……ん?」
 罵った狐が、紹維と勇圭の方を見やった。
「ああ、そうか。こいつがいたか」
 満足げな声で呟いたあと、狐は地面に生えていた草を食いちぎり、宙に放り投げた。草の切れ端が、はらりと狐の体に落ちかかった。
 次の瞬間には狐の姿は消え、代わりに一人の男がその場所に立っていた。
 背が高く逞しい体つきだ。ただ立っているだけなのに、いざとなれば目にもとまらぬ俊敏さを示すだろうと思わせる雰囲気がある。吊(つ)り上がった金色の瞳や、朱金色の蓬髪に、隠しきれない野性味がにじみ出ていた。そして頭頂部には三角形の耳が二つ、突っ立っている。
 魔物たちが囁きかわした『仙狐』という言葉を、紹維は思い出した。
 確かに、普通の狐よりはるかに大きく、朱色の毛皮は炎にも似た色で美しかった。人語を喋り、魔物を一掃した力の持ち主だ。ただの狐であるはずがない。
 ただ、言い伝えによると仙狐というのは天宮の試験に合格し、厳しい修行を積み、高徳にして清廉な存在のはずなのだが――それにしては柄が悪そうだ。衣服の着方がいい加減だし、さっきの戦いの余韻か、瞳に獣じみた光が宿っている。
(……いや。見た目で人を……人ではないか。とにかく外見で判断してはならない。勇圭と私を救ってくれたことに違いはない)
 紹維は勇圭を寝かせ、地に膝をついたまま男へ向き直って、額が土に触れるほど深く頭を下げた。
「ありがとうございます。弟と自分を救っていただき、なんとお礼を申し上げて……」
 紹維の言葉は途中で途切れた。
 近づいてきた男に肩をつかんで引き起こされたからだ。しかも次には顎に指をかけられ、仰向かされた。
「悪かねェな。いや、極上物だ」
 金色の瞳が、値踏みするように紹維の顔を眺め回した。髷を結わない炎色の髪から突き出た三角耳が、ぴくぴくと動く。
「名前は? 年はいくつだ?」
「紹維……蔡、紹維。綺国の王子です。今年十九になりま……」
 なぜそんなことを尋ねるのだろうと思いながらの返事は、途中で止まった。口を塞がれたせいだった。
「!?」
 何が起こったのか、理解できなかった。
 男の唇が自分の口に重なっている。唇を舐め歯を探っているのは、熱く濡れた舌だ。
 口づけられたと気づいた瞬間、紹維は夢中で男を突きのけた。
「な、なんのつもりで……!!」
 袖で口元を拭って叫んだ。一歩退いた男が紹維を見下ろし、肩をそびやかす。
「味見だ。……何を血相変えてやがる。生娘か、てめェは」
 紹維の体が燃え上がるように熱くなった。怒りと屈辱のせいだった。女にたとえられるのは、元から好きではない。
「いきなり、このような淫らな真似を……守り神のすることか!?」
 神に対する言葉遣いではなくなっているのも気づかず、紹維は男をなじった。
「守り神? なんのこったよ」
「母はあの白玉を、何かに襲われた時に助けてくれるお守りだと言っていた!」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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