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著者プロフィール
狂気 太郎(きょうき たろう)
第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。灰崎抗名義で『想師』(学習研究社・刊)ほか発表。
第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。灰崎抗名義で『想師』(学習研究社・刊)ほか発表。
解説
ある財界人が主催するパーティーに招かれた各界の著名人十六名。彼らが謎の老紳士から余興にと言われて参加したのは『デビル・ボード』と呼ばれる悪魔のボードゲームだった。勝者の報酬は大願成就。だが、プレイヤーたちは自分の番がくるたびにゲーム盤の世界に吸い込まれ、凶暴な猛獣、悪辣なトラップ、強大なモンスターと「生身」で対峙しなくてはならない。ゲームでの敗北はすなわち、死を意味するのだ。次々と、無残に、あっけなく、死んでいくプレイヤーたち。そんな中、ホラー小説家の洞成一《うつおせいいち》は、小説での空想体験と病的な用心深さにより、なんとか死の危機を回避していくが……。
鬼才・狂気太郎が悪魔的な筆致で書き下ろした最凶のデスゲーム小説、上巻!
鬼才・狂気太郎が悪魔的な筆致で書き下ろした最凶のデスゲーム小説、上巻!
目次
プロローグ
第一章 悪魔のボードゲーム
第二章 直径十センチの魔界
第三章 違うものを見ている
第四章 ハンティング
第一章 悪魔のボードゲーム
第二章 直径十センチの魔界
第三章 違うものを見ている
第四章 ハンティング
抄録
模型の外から身を屈め、そのマスを見つめている男が一人。丸い銀縁眼鏡の奥で、青い目は嘲笑に細められていた。五十代か六十代であろう、整った顔には笑いじわが刻まれ、見事な白髪に、顎からは白髭も伸びていた。高級スーツは上品なたたずまいにふさわしいが、同時にどこかしら禍々しさのようなものを男は漂わせていた。
広い部屋だった。中央にある島の模型を囲むように、十六の椅子が並んでいる。十五人の男女が座っていたが、誰も模型を見てはいなかった。
全員、死んでいたからだ。
見事なプロポーションの女は首から上がなかった。引きちぎられたような粗い断面よりこぼれた血は、白いドレスを真紅に染めている。
タキシードの中年男は全身に穴が開いていた。傷はすべて前面から背部まで貫通しているようで、トンネルになった左眼窩《がんか》からは向こう側の壁が見え、潰れた眼球が後頭部で糸を引いてぶら下がっていた。
別の男は金髪の脳天から鳩尾《みぞおち》まで縦に割れていた。分かれた上半身が肘置きを越えて左右に垂れている。
二十数個に分解された死体もあった。椅子の上に積み重ねてある。
黒焦げで座る死体もあった。服まで残さず焼けているが、なぜか椅子には焦げ目一つない。
下半身が溶けた死体もあった。内臓を食いちぎられた死体もあった。皆、高級スーツやドレス、豪華なアクセサリーで身を飾っていたが、今はただの惨殺死体だった。
手にカードの束を握る死体があった。一部のカードは足元の床に散らばっている。拳銃や剣の絵が描かれたもの、すべての面が同じ目になったダイスの絵もあった。海に置かれたカードと違い、裏側は青地だ。
静かだった。血みどろの死体からしたたる血の音だけが、一定のペースで続いていた。
銀縁眼鏡の男はまばたきもせず、脱獄囚の駒を見据えていた。
やがて、ひとりでに、駒が傾いていき、前のめりに、倒れた。コトン、と、硬い音がした。
銀縁眼鏡の男はゆっくりと笑みを深めていった。背筋を伸ばし、一つだけ空いていた椅子を振り返る。
いつのまにか男が座っていた。黒人だ。Tシャツとジーパンのラフな服装だが、腕時計はダイヤを埋め込んだあからさまな高級品だった。
男の右肘から先は、肉が削げ落ちて半分以上骨だけになっていた。
男の顔はなかった。首筋の肉と頭蓋骨の一部ごと奪い去られ、崩れた前頭葉が露出していた。出血がシャツを広がっていくがすでに勢いは弱く、呼吸も止まっている。左手にあったカードの束がバラバラと床に落ちていく。
満足げに白い眉を上げ、眼鏡の男は英語で呟いた。
「四十六ターンでゲーム終了でございます。今回も勝利者はなし、ということで。惜しゅうございました。規定ポイントには達しておられたのに」
眼鏡の男は十六の椅子をめぐり、死体の手や床からカードを回収していった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
広い部屋だった。中央にある島の模型を囲むように、十六の椅子が並んでいる。十五人の男女が座っていたが、誰も模型を見てはいなかった。
全員、死んでいたからだ。
見事なプロポーションの女は首から上がなかった。引きちぎられたような粗い断面よりこぼれた血は、白いドレスを真紅に染めている。
タキシードの中年男は全身に穴が開いていた。傷はすべて前面から背部まで貫通しているようで、トンネルになった左眼窩《がんか》からは向こう側の壁が見え、潰れた眼球が後頭部で糸を引いてぶら下がっていた。
別の男は金髪の脳天から鳩尾《みぞおち》まで縦に割れていた。分かれた上半身が肘置きを越えて左右に垂れている。
二十数個に分解された死体もあった。椅子の上に積み重ねてある。
黒焦げで座る死体もあった。服まで残さず焼けているが、なぜか椅子には焦げ目一つない。
下半身が溶けた死体もあった。内臓を食いちぎられた死体もあった。皆、高級スーツやドレス、豪華なアクセサリーで身を飾っていたが、今はただの惨殺死体だった。
手にカードの束を握る死体があった。一部のカードは足元の床に散らばっている。拳銃や剣の絵が描かれたもの、すべての面が同じ目になったダイスの絵もあった。海に置かれたカードと違い、裏側は青地だ。
静かだった。血みどろの死体からしたたる血の音だけが、一定のペースで続いていた。
銀縁眼鏡の男はまばたきもせず、脱獄囚の駒を見据えていた。
やがて、ひとりでに、駒が傾いていき、前のめりに、倒れた。コトン、と、硬い音がした。
銀縁眼鏡の男はゆっくりと笑みを深めていった。背筋を伸ばし、一つだけ空いていた椅子を振り返る。
いつのまにか男が座っていた。黒人だ。Tシャツとジーパンのラフな服装だが、腕時計はダイヤを埋め込んだあからさまな高級品だった。
男の右肘から先は、肉が削げ落ちて半分以上骨だけになっていた。
男の顔はなかった。首筋の肉と頭蓋骨の一部ごと奪い去られ、崩れた前頭葉が露出していた。出血がシャツを広がっていくがすでに勢いは弱く、呼吸も止まっている。左手にあったカードの束がバラバラと床に落ちていく。
満足げに白い眉を上げ、眼鏡の男は英語で呟いた。
「四十六ターンでゲーム終了でございます。今回も勝利者はなし、ということで。惜しゅうございました。規定ポイントには達しておられたのに」
眼鏡の男は十六の椅子をめぐり、死体の手や床からカードを回収していった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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