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著者プロフィール
狂気 太郎(きょうき たろう)
第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。灰崎抗名義で『想師』(学習研究社・刊)ほか発表。
第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。灰崎抗名義で『想師』(学習研究社・刊)ほか発表。
解説
ある財界人が主催するパーティーに招かれた各界の著名人十六名。彼らが謎の老紳士から余興にと言われて参加したのは『デビル・ボード』と呼ばれる悪魔のボードゲームだった。勝者の報酬は大願成就。だが、プレイヤーたちは自分の番がくるたびにゲーム盤の世界に吸い込まれ、凶暴な猛獣、悪辣なトラップ、強大なモンスターと「生身」で対峙しなくてはならない。ゲームでの敗北はすなわち、死を意味するのだ。次々と、無残に、あっけなく、死んでいくプレイヤーたち。そんな中、ホラー小説家の洞成一《うつおせいいち》は、小説での空想体験と病的な用心深さにより、なんとか死の危機を回避していくが……。
鬼才・狂気太郎が悪魔的な筆致で書き下ろした最凶のデスゲーム小説、下巻!
鬼才・狂気太郎が悪魔的な筆致で書き下ろした最凶のデスゲーム小説、下巻!
目次
第五章 人は簡単に死ぬ
第六章 ルールの裏
第七章 玉座
エピローグ
第六章 ルールの裏
第七章 玉座
エピローグ
抄録
「かしこまりました。それでは少しばかり本音を表現させていただきます」
顔を上げたとき、秋山の表情は一変していた。うわっつらの微笑は消え、いやそれは口の両端を限界まで吊り上げたもの凄い笑みになっていた。見開いた目も吊り上がり頬も額もしわが歪み果て、これが人間かと思わせる表情だった。いや、それぞれの造作を見れば特殊な変形効果などは使っていない、人間に可能なものだ。だがやはり違うのだ。猛烈な悪意の放射を受け、洞はポカンと口を開けたまま息をすることも忘れていた。
「はははーっ、この間抜けどもが」
舌を出して秋山が嘲笑った。声音はざらついていたが、それでも人間の、秋山の声だった。
と、秋山の姿が霞んだ。いや残像だ。後ろ向きにもの凄い勢いでバック転を数度、壁にぶつかるかと思われたところで蹴ったか押し戻したか空中をクルクル回ってあざやかに着地した先は山本岡田のソファーだった。足ではない、きれいに逆立ちして両手を背もたれのてっぺんにつけている。あっけに取られる山本の顔、そのすぐ横に逆さになった秋山の顔があった。舌を出せば山本の頬をなめることもできたろう。山本の手からパサリ、とアフロが落ちた。
「今でも自分が特別な存在なんて思ってるのかい。この蛆虫《うじむし》ども」
見事なバランスで微動だにせず、ささやくような低い声で秋山は告げた。重い静寂の中、その声はよく響いた。
秋山が腕の力だけで跳んだ。宙返りで姿勢を戻し隣の大門平四郎のソファーへ。背もたれのてっぺんを蹴ってすぐ隣の戸倉のソファーへ。軽快なスキップで移動していく。
「ははっ、この馬鹿め。馬鹿め。もっと死ね。間抜け。クズ。どんどん死ね。蛆虫。ははっ。臆病者。蛾の小便。糞虫の糞が。ははっ」
洞の背もたれも踏んで秋山はあっというまに部屋を一周してしまった。
眉をひそめる近江の顔。興味深そうに見上げる桜坂。
と、秋山が高く跳び、天井の隅に張りついてしまった。ずり落ちかけると壁の高所にあったランプの台座をつかみぶら下がる。クルリと翻《ひるがえ》って体の前面をこちら側に向け、秋山は駄目押しを食らわせた。
「せいぜいあがけ。必死に戦ってみっともない死にざまを見せてみろ。ははっ、はははははは」
「もう充分です」
冷たく告げたのは戸倉達利だった。そのとたん秋山は床にすべり戻り、いつもの澄まし顔で「お騒がせいたしました」と一礼した。
洞はまだ呆然としていた。あまりにも極端で派手な振る舞いに、怒るべきなのか笑うべきなのか、それとも恐怖すべきなのかわからなくなった。秋山は冗談のつもりでやったのだろうか。洞は吹き出してしまいそうになったが、場の空気をこれ以上凍らせないためにこらえた。
だが山本が吹き出していた。
「ブーッ、プフッ。ハハッ。いやあ、勉強になりました。人を罵倒する際はそのくらいしっかりやるべきですよね。アクロバティック罵倒。うーむ、素晴らしい。私も練習しときますね」
手を伸ばしてアフロを拾い上げ、山本はまた吹き出した。
場の空気は苦々しいものになっていた。しかしもともと空気は最悪だったので、さらに悪くなったというわけでもなかった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
顔を上げたとき、秋山の表情は一変していた。うわっつらの微笑は消え、いやそれは口の両端を限界まで吊り上げたもの凄い笑みになっていた。見開いた目も吊り上がり頬も額もしわが歪み果て、これが人間かと思わせる表情だった。いや、それぞれの造作を見れば特殊な変形効果などは使っていない、人間に可能なものだ。だがやはり違うのだ。猛烈な悪意の放射を受け、洞はポカンと口を開けたまま息をすることも忘れていた。
「はははーっ、この間抜けどもが」
舌を出して秋山が嘲笑った。声音はざらついていたが、それでも人間の、秋山の声だった。
と、秋山の姿が霞んだ。いや残像だ。後ろ向きにもの凄い勢いでバック転を数度、壁にぶつかるかと思われたところで蹴ったか押し戻したか空中をクルクル回ってあざやかに着地した先は山本岡田のソファーだった。足ではない、きれいに逆立ちして両手を背もたれのてっぺんにつけている。あっけに取られる山本の顔、そのすぐ横に逆さになった秋山の顔があった。舌を出せば山本の頬をなめることもできたろう。山本の手からパサリ、とアフロが落ちた。
「今でも自分が特別な存在なんて思ってるのかい。この蛆虫《うじむし》ども」
見事なバランスで微動だにせず、ささやくような低い声で秋山は告げた。重い静寂の中、その声はよく響いた。
秋山が腕の力だけで跳んだ。宙返りで姿勢を戻し隣の大門平四郎のソファーへ。背もたれのてっぺんを蹴ってすぐ隣の戸倉のソファーへ。軽快なスキップで移動していく。
「ははっ、この馬鹿め。馬鹿め。もっと死ね。間抜け。クズ。どんどん死ね。蛆虫。ははっ。臆病者。蛾の小便。糞虫の糞が。ははっ」
洞の背もたれも踏んで秋山はあっというまに部屋を一周してしまった。
眉をひそめる近江の顔。興味深そうに見上げる桜坂。
と、秋山が高く跳び、天井の隅に張りついてしまった。ずり落ちかけると壁の高所にあったランプの台座をつかみぶら下がる。クルリと翻《ひるがえ》って体の前面をこちら側に向け、秋山は駄目押しを食らわせた。
「せいぜいあがけ。必死に戦ってみっともない死にざまを見せてみろ。ははっ、はははははは」
「もう充分です」
冷たく告げたのは戸倉達利だった。そのとたん秋山は床にすべり戻り、いつもの澄まし顔で「お騒がせいたしました」と一礼した。
洞はまだ呆然としていた。あまりにも極端で派手な振る舞いに、怒るべきなのか笑うべきなのか、それとも恐怖すべきなのかわからなくなった。秋山は冗談のつもりでやったのだろうか。洞は吹き出してしまいそうになったが、場の空気をこれ以上凍らせないためにこらえた。
だが山本が吹き出していた。
「ブーッ、プフッ。ハハッ。いやあ、勉強になりました。人を罵倒する際はそのくらいしっかりやるべきですよね。アクロバティック罵倒。うーむ、素晴らしい。私も練習しときますね」
手を伸ばしてアフロを拾い上げ、山本はまた吹き出した。
場の空気は苦々しいものになっていた。しかしもともと空気は最悪だったので、さらに悪くなったというわけでもなかった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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