マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションボーイズラブ小説オレ様

花嫁は漆黒に墜とされる

花嫁は漆黒に墜とされる


発行: イースト・プレス
レーベル: アズ・ノベルズ シリーズ: 花嫁は緋色に囚われる
価格:850pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 水瀬 結月(みなせ ゆづき)
 出身地 / 兵庫県、星座/天秤座 血液型/A型、趣味/ふかふか布団で昼寝です! 誕生日/10月23日

解説

 「おまえは何度、惚れ直させれば気が済むのだろうな?」骨董商の凌は香港の資産家、塔眞一族の三男・貴砺の伴侶。罠から始まった関係も、今ではすっかり揺るぎないものに……。そんなある日、長男の怜人から禁断の家宝、黒劉の謎を解いてみせよと挑まれた凌は、一族の秘密に深く関わることになり、遂に会社を辞めパートナーとして生きる決意を……。二人の甘く迸る愛を縦軸に、側近である王と石動のスリリングな出会いも明らかに……艶めくウエディングミステリー♪
※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

目次

第一部 黒劉
第二部 四年前・夏
第三部 花嫁は漆黒に墜とされる

抄録

 子どもの頃から、夢は「お父さんの代わりに家族を守ること」と「紗友美を大事にしてくれる人に嫁がせること」だった。自身に関しては「できれば骨董《こっとう》関係の仕事に就きたい」と三番目にようやく出てくるだけで、金持ちになりたいという願望もなければ、地位や名声を手に入れたいなどという野心もなかった。
 あまりにも欲がない上に、なまじ容姿が整っていたせいで、人形みたいだとか精彩を欠いているとか、皮肉めいたこともよく言われたものだ。だがそれさえも、凌にとっては取るに足りないことだった。折り目正しく暮らしてさえいれば世間に迷惑をかけることもないし、実際に家族は幸せなのだから。
 それが自分の生き方だと思っていた。
 ほんの二年前までは。
 ――この人と、出逢うまでは。
「凌」
 真正面に立った貴砺が、凌のネクタイを手に取った。
「着替える間も惜しいくらい、私に会いたかったのか?」
 傲慢《ごうまん》な笑みを頬に刷《は》き、ネクタイの先に軽くキスをする。艶《つや》やかな漆黒の髪が幾筋か額に零れる様に、胸の奥がコトンと揺れた。恋心などとっくに落ち着いていいはずなのに、毎日ふとした瞬間に、恋人にまた恋をする。
「そういうわけじゃないんですけど……。玄関でメイドから、貴砺さんが待っているって聞いたから」
「凌。素直になるがいい」
 くいっとネクタイを引かれ、貴砺の方へ引き寄せられる。足が敷居を跨《また》ぎそうになった。しかし恋人の胸に抱きとめられた凌はのしかかられて後退《あとずさ》り、貴砺とともに廊下に出てしまう。
「んっ」
 抵抗する暇もなく、唇を奪われた。強引なくちづけから逃れようと、凌は懸命に背を反らした。けれどその分、さらにのしかかられてしまう。まるでワルツでも踊っているかのような体勢で思うさま唇を貪《むさぼ》られ、凌の頬が紅潮した。
「……っ、貴砺さん! 人前ではいやだっていつも言ってるじゃないですか」
 なんとか唇を離して訴えるが、彼はまったく動じていない。それどころか舌舐《したなめず》りする肉食獣のように獰猛《どうもう》さを孕《はら》んだ眸《ひとみ》で、凌を見つめた。
 ドキッと胸が高鳴る。彼の、この――何ものにも染められることのない漆黒の双眸に自分だけが映っていると、どうしようもなく気持ちが惹《ひ》き寄せられてしまうのだ。
 魅せられて、囚《とら》われる。虜《とりこ》になってしまう。
 ……なぜか、脳裏に二年前のことが甦《よみがえ》った。そういえば、はじめて至近距離で視線を絡めた時にも同じことを感じたと。どうしてそんなことを思い出したのかわからない。
 ただあの時、貴砺に出逢えてよかったと心から思う。二十四年もよく出逢わずにいられたと、二十六歳になった今、そう思う。
「ん……」
 魔法にかかったように瞳《ひとみ》を閉じて、凌は自分から唇を寄せていた。しかし目指す場所に触れる寸前で我に返る。
「今の、なしです!」
「そんな我がままを私が許すとでも?」
「すみません。でも王《ワン》さんが……」
「心配ない」
 ゆったりと片頬を上げた貴砺は、顎《あご》をしゃくって背後を示した。貴砺の肩越しに、半開きの扉が見える。秘書であり貴砺の右腕でもある王月林《ユエリン》は、どうやら主人の暴挙を察して見ないようにしてくれたらしい。
 凌は安堵《あんど》の吐息を零す。誰《だれ》に見られてもいやなことには変わりないが、王だけは別格に気まずいのだ。彼がいつも貴砺に付き従っていて顔を合わせる頻度が高いということも理由の一つだが、それよりも凌にとって王が教師のような存在だという理由の方が大きい。上流階級のマナーから塔眞家の「花嫁」のしきたりまで、凌は王に教わった。そのせいか、今でも王の目があると、つい居住まいを正してしまうのだ。刷り込みというものだろうか。
「凌」
 催促されて、凌は貴砺の頬にそっと手を添えた。そして顔を傾け、彼の腕の中で背伸びを――。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。