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忠犬は猫がとっても好きだから

忠犬は猫がとっても好きだから


発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆8
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解説

 国語教師として教壇に立つ傍ら詩人としても活躍する臨夢は、大学時代の先輩・塁に絶賛片思い中。普段は気の良い友人のふりをして、密かな想いは詩に託す。そんな出すことのないラブレターは詩集という形で塁に渡る。しかし、詩集を読んだ塁から「詩に出てくる『あなた』って、誰か特定のモデルがいるのか?」なんて聞かれてしまったからさあ大変! 臨夢は迷った末「います」と答えると……。
※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

 塁は、膝に載せた本に視線を落としている。パラパラとページをめくる。
 臨夢は少々、尻がむずがゆい。詩の形にしたラブレターを、当の片恋の相手その人に読まれるというのは、妙な気分だ。もちろん、その事実を口にはできないけれど。
「これ、あとで家に帰ってゆっくり読むな。──でも、この本、本当にもらっちゃっていいのか?本屋で買ったほうがよければそうするけど──」
「いえっ、いいんです!もらってください!先輩にもらってもらえるだけで、俺、すごくうれしいんで!」
「そうか?……じゃあ、ありがたく」
 塁は、『割れないガラス』を大事そうにブリーフケースにしまった。品のいいデザインのブリーフケースは、どこのブランドだか分からないが、塁の着ているスーツや靴と、トータルで雰囲気がマッチしている。
(さすが先輩だなあ……趣味いいなあ……)
 臨夢は塁の美点を再確認。いっそう、この、目の前の人に対する憧れを強くする。
「授賞式とか、あるのか?」
 塁が、からになった臨夢の猪口を見て、冷酒をついでくれる。
「あ、どうも。──授賞式は、あるみたいです。晴れがましい席って、俺は苦手なんですけど……。なに着ていったらいいか困るし」
「ふつうにスーツでいいだろ。学校だって、スーツでいってるんだろう?」
「そうですけど、合わせるワイシャツとかネクタイとか……」
 臨夢の言葉に、塁はくすりと笑いをもらす。
「まあ、やっぱり多少は華やかめのコーディネートがいいんだろうな。森井が主役なんだし。あまり迷うようなら、事前に俺が見てやろうか?」
「え、ホントですか?お願いします!」
「うん」
「ところで先輩。この酒、美味いですねえ」
「だろう?純米大吟醸の『空《くう》』っていう酒なんだけど。これを飲ませてみたくて、きょうはここにしたんだ」
「へえー。ありがとうございます。ホント美味いです。あと、このイワシの刺身もすごく美味い」
「イワシは今が旬だものな」
 言いながら、自分の猪口を手に取った塁の左手に、臨夢の視線は吸い寄せられる。
 節の目立たない、指の長い、きれいな左手。
 その薬指には、金属の輪はまだない。
(いつか……あそこに指輪が光る日がくるのかな……。そしたら俺……俺……)
 脳は、それ以上考えることを拒否したようで。
 思考停止で、ぼんやりと臨夢は自分の手もとに視線を落とした。
「森井?」
「あ……、はい」
 声のほうを慌てて向くと、塁は不思議そうにこちらを見ていた。
「どうかしたか?」
「いえっ、なんでもないです!」
 とっさに笑顔を取り繕って、臨夢は慌てて首を横に振った。
「あ、そうだ、先輩。エスニック料理は好きですか?」
「うん、かなり好き」
「この前、同僚の女の先生に、おいしいメキシコ料理の店があるって教えてもらったんですけど、いってみませんか?」
「へえ、いいな!連れてってくれ」
 即答してから、塁は、肩を竦めて苦笑した。
「男二人で食事ってのも、よく考えるとちょっとむなしいかな?」
 ズキリと、臨夢の胸が痛む。すぐに言葉が出てこない。
 臨夢の苦しげな表情に気づかず、塁は米ナスの田楽を小皿に取りながら、つづけた。
「ま、恋人もいないんじゃ、出かけたいところがあったら一人でいくか、友だちといくしかないものな」
「……先輩、彼女いないんですか?」
「ああ。今のところは。森井は?」
 ふと顔を上げた塁と視線が合って、臨夢はドキリとする。
 一瞬だけ──ほんの一瞬だけ、本当のことを言ってしまいたいと、心がうずいた。
 だが、思いとどまった。
「俺も、いません」
「しようがないな、俺たち」
 そう言って、塁は困ったような顔でもう一度苦笑した。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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