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ダリア 〜呪いのタトゥー〜

ダリア 〜呪いのタトゥー〜


発行: キリック
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆4
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解説

 その店のタトゥーシールをつけると願いごとが叶うんだって──。
 一部の女子高生のあいだでまことしやかにささやかれている噂があった。学校でその話を聞いた波多野愛梨は、放課後さっそくシールが売っている雑貨屋『ドロップ』へと足を運ぶ。願いごとはすでに決まっていた。顔も背丈も体形も同じ、彼女の双子の姉妹・英莉と、差をつけること。一卵性双生児というだけでも目立つのに、ふたりはこれまでずっと服装や髪型はもちろん通う高校から部屋の家具の配置まで、何もかも〈おそろい〉にさせられてきたのだ。ジンクスでも何でも頼りたい。愛梨はもう我慢の限界だった。右腕、肩の下あたりにつけた真っ赤なダリア。それに向かって彼女は願う。それが呪いのタトゥーシールだとも知らずに……。

目次

ダリア 〜呪いのタトゥー〜

抄録

 愛梨はビクッと体を縮め、反射的に振り向いた。
 いつのまにか、すぐ後ろに人が立っていた。
 背の高い、影のような女だった。Vネックのゆったりした黒い服を着、黒いショールを肩にかけている。ショールの先にはフリンジが付いていて、まるで黒い鳥の羽のように見えた。
「いらっしゃいませ」
 ささやくように密やかに、女は言った。
 年齢は、三十前後だろうか……とも愛梨は思ったが、実際のところよくわからなかった。どこか年齢不詳な感じがするのだ。毛先が長めのショートカットの黒髪で、少しばかり頬がこけているが美人ではある。切れ長の目が特徴的で、瞳孔が目立たないほどに、真っ黒な瞳をしていた。
 そして、まるで女の一部であるかのように、黒いものが肩から生えている──
「ごめんなさい、驚かせたようですね。体に見合わず声が大きいもので」
 物静かに話す女の顔のすぐ横で、一匹の奇怪な生き物が、濡れたような黒い瞳を愛梨に向けていた。
 女の左肩に、鳥がとまっていたのだ。文鳥ほどの大きさだがやけにずんぐりとした体つきで、太い口ばしと鋭いカギヅメを備えていた。体長以上に長い羽根が、アンバランスな印象を強めている。その羽毛も脚も口ばしもすべて漆黒で、黒い服の女と一体化していた。
「ここの店長さんですか?」
 くるくると首をひねる鳥に気を取られつつ、愛梨はおずおずと尋ねた。
「はい、店長の黒沼《くろぬま》です」
「あの……」
 愛梨は声をひそめた。なんとなく、カウンターの二人には聞かれたくなかったから。
「願いが叶う、タトゥーシールがあるって聞いたんだけど……」
「ありますよ。こちらへどうぞ」
 店主の黒沼は、しなやかな身ごなしでカウンター内に入った。古いタイプの黒いレジスターの後ろを通り抜け、パンク店員のそばまで行き、その背後にある壁の暗幕をめくる。
 布の向こうに、扉のない出入り口がぽっかりと開いた。てっきり壁になっていると思っていたが、奥にも部屋があったのだ。
 黒沼は一歩、部屋の奥に入り、手で布を持ち上げた状態で愛梨に目配せした。すると、例の鳥がまたギャアと鳴いて羽を広げる。
 招きに従い、愛梨もカウンターの内部に足を進めた。
 奥の部屋に入ろうとしたとき、パンク店員の背が、ふと彼女の目に入った。
 店員の首の、後ろの部分に、翼の柄の刺青があった。頚骨を中心に、二枚の翼を広げた形。色は黒一色だが、羽毛を一本一本精緻《せいち》に描写した、凝った図案である。
(あれも、タトゥーシールかな……)
 思いながら、愛梨は戸口をくぐった。直後に黒沼が黒い布を下ろした。
 バックヤードかと思いきや、次の部屋もまた、表の店舗と同じくらいの広さがあった。
 やはり天井から無数のランプが吊るされて、照明となっている。窓はなかった。あったとしても黒い布で覆われているのでわからない。
 こちらの部屋では、三方の壁に寄せて、三つの棚が置いてあった。空いた中央のスペースにコブラン織りの布を張ったカウチが一脚と、円形の黒いガラスのテーブルが一台。
「お好きな柄を選んでください」
 長い指で、黒沼が棚を指し示した。
 そこにはたくさんのシートが、重ならないよう並べて陳列されていた。タトゥーシールだ。白い台紙とともに、一つ一つ透明の袋に入っている。
「うわあ、いっぱいある!」
 愛梨は目を輝かせ、棚に駆け寄った。
 先ほど店員の首にあったのとそっくりな翼から、薔薇、蝶、ハート、ドクロ、ドラゴン……さまざまな図柄があった。黒一色のものもあれば、赤、紫、青、緑、と色彩豊かなものもある。そのどれもが繊細で、優美なデザインだった。彼女はさながら、美術展にでも来たような気分になった。
「あれ、でも、十字架の柄はないの? 一番ありそうなのに」
 ふと気づき、愛梨は尋ねた。
「……ええ。クロスは人気があって、今は切らしているんですよ」
 少し離れたところで、黒沼が答えた。
「ふーん……」
 まあ、特にクロス柄を所望しているわけではない。愛梨は棚に沿って歩き、図柄の吟味を続けた。
 じきに、ひときわ目を引く一枚に出くわした。
「これ……」
 愛梨は足を止め、魅入られでもしたように手を伸ばした。
 それは一輪の、赤い花のタトゥーシールだった。細かい花びらが鱗のように幾重にも並び、放射状に広がって、完璧な丸い形を作っている。
 直径五センチ程度のワンポイントサイズだが、血のような赤い色のせいだろうか、毒々しいほどに艶《あで》やかで、存在感と迫力があり、実際以上の大きさに感じられた。
「ダリアですね」
 黒沼が言った。
「ダリア……」
 愛梨はつぶやいた。
 なにかが、彼女の記憶の片隅をかすめた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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