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解説
幼い頃に両親を飛行機事故で亡くしたマサトは、辺鄙な村に住む祖父と二人で暮らしていた。だが、十歳になったある日、そろそろ学校に通うべきだと、町の養護院に入れられることになる。最初は寂しさと戸惑いを感じていたが、施設でも学校でも一緒のアキラや、クラスで同じ班になったミキやシンジと心を通わせ、しだいに新しい生活にも慣れていった。そんな中、マサトたちが生き物係として掃除をしていた飼育小屋で、事件は起こる。可愛がっていた妊娠ウサギが他のウサギたちに惨殺されたのだ。警察や保健所はウサギが「何かの病気に感染した」と発表した。だがマサトは見ていた。死んだはずの妊娠ウサギが蘇り、仲間に復讐する姿を。それがただの病気などではないことを。しかし、その怪事件はこれから起こる悲劇の前触れにすぎなかった。そしてその悲劇すらも、絶望的な破滅の序曲でしかないのだが……。
幼年期、少年期、青年期……死に侵された国の狂気と悲しみが主人公の成長とともに語られる、空前の暗黒ヒューマンドラマ・上巻!
幼年期、少年期、青年期……死に侵された国の狂気と悲しみが主人公の成長とともに語られる、空前の暗黒ヒューマンドラマ・上巻!
目次
プロローグ
一章 孤独な少年(幼年期)
二章 境界を越えて(少年期)
一章 孤独な少年(幼年期)
二章 境界を越えて(少年期)
抄録
飼育小屋の真ん中にウサギたちが集まっている。彼らは何かに集中していて、僕たちのことには気づいていないようだ。
白い体毛を赤く染めたウサギたち。中心にいるやつほど赤い。それは異様な光景だった。
赤いウサギ。なぜウサギが赤いのか。すぐには意味がわからなかった。
血だと理解したとたん、思わず「あっ」という声がもれてしまった。その音に反応したのか、一匹のウサギがこちらを振り向く。
顔も真っ赤に染まっていた。よく見ると、その口元から血がしたたって……。
ブー……ブー……。
奇妙な音。それがウサギの鳴き声だと気づいたのは、その音に合わせて体が震えていたからだ。ウサギの鳴き声を聞いたのはこれがはじめてだった。
鳴き声はどうやら人間が来たことを仲間に伝えるものだったらしい。ウサギたちが小屋の中央から移動しはじめた。僕たちを警戒しているのか、こちらには向かわず、小屋の隅に散っていく。
ウサギたちの去った小屋の中央。
何かある。赤いグロテスクな塊。
お腹の大きな、あの妊娠ウサギの死骸だった。
妊娠ウサギの全身は血で染まっていた。体中をズタズタに引き裂かれ、破れた腹部から腸が引きずり出されている。小さなウサギのどこにこれほどの血が流れていたのかと思うほど、その下には大きな血だまりが出来ていた。
「こんな、ことって……」
妊娠ウサギが仲間に殺された。
ウサギたちは小屋の隅に集まり、じっと互いの身を寄せ合っている。まるで何かに怯えているような様子だった。
ミキは口を大きく開けたまま上手く息ができないらしく浅い呼吸を繰り返していた。彼女の目は、妊娠ウサギの死体に釘づけになっている。僕とアキラもまた凍りついたように、飼育小屋の無残な光景を見つめていた。
そのとき、僕の視界で何かが動いた。
そんな馬鹿な。
今、動いたように見えたのは。
ありえない。動くはずがない。
僕は今、目にした光景を否定しようとした。
だが──動いた。また、動いた。間違いない。
これはもう目の錯覚とかそういうことじゃない。
お腹の破裂した妊娠ウサギがたしかに動いている。
生きているはずのない血みどろウサギが動いている。
頭がゆっくりと持ち上がる。すでに完全に動いている。
僕と目が合った。その瞳は、黒と赤をかき混ぜたような、濁った色をしていた。それが生きているとは、こうして目の前で見ていても信じられない。
ついに妊娠ウサギが完全に起き上がる。何かを探すように首をめぐらしている。
それは、はらわたをはみ出させているとは思えない動きだった。仲間のウサギたちを見つけると、大きく歯をむき出しにして、彼らに飛びかかっていった。腸を引きずりながら。痛みなどまるで感じていない様子で。
ウサギたちが暴れだした。
目の前で何が起こっているのかわからない。
逃げまどう仲間を、蘇った妊娠ウサギが襲う。
噛みつき、引っかき、新たな鮮血が小屋に飛び散る。
ウサギたちはほとんど抵抗できなかった。妊娠ウサギからなんとか逃れようと、小屋の中を行ったり来たりするだけだ。次々とウサギたちが殺されていく様子を、僕たちはただ呆然と見ていることしかできなかった。”
*この続きは製品版でお楽しみください。
白い体毛を赤く染めたウサギたち。中心にいるやつほど赤い。それは異様な光景だった。
赤いウサギ。なぜウサギが赤いのか。すぐには意味がわからなかった。
血だと理解したとたん、思わず「あっ」という声がもれてしまった。その音に反応したのか、一匹のウサギがこちらを振り向く。
顔も真っ赤に染まっていた。よく見ると、その口元から血がしたたって……。
ブー……ブー……。
奇妙な音。それがウサギの鳴き声だと気づいたのは、その音に合わせて体が震えていたからだ。ウサギの鳴き声を聞いたのはこれがはじめてだった。
鳴き声はどうやら人間が来たことを仲間に伝えるものだったらしい。ウサギたちが小屋の中央から移動しはじめた。僕たちを警戒しているのか、こちらには向かわず、小屋の隅に散っていく。
ウサギたちの去った小屋の中央。
何かある。赤いグロテスクな塊。
お腹の大きな、あの妊娠ウサギの死骸だった。
妊娠ウサギの全身は血で染まっていた。体中をズタズタに引き裂かれ、破れた腹部から腸が引きずり出されている。小さなウサギのどこにこれほどの血が流れていたのかと思うほど、その下には大きな血だまりが出来ていた。
「こんな、ことって……」
妊娠ウサギが仲間に殺された。
ウサギたちは小屋の隅に集まり、じっと互いの身を寄せ合っている。まるで何かに怯えているような様子だった。
ミキは口を大きく開けたまま上手く息ができないらしく浅い呼吸を繰り返していた。彼女の目は、妊娠ウサギの死体に釘づけになっている。僕とアキラもまた凍りついたように、飼育小屋の無残な光景を見つめていた。
そのとき、僕の視界で何かが動いた。
そんな馬鹿な。
今、動いたように見えたのは。
ありえない。動くはずがない。
僕は今、目にした光景を否定しようとした。
だが──動いた。また、動いた。間違いない。
これはもう目の錯覚とかそういうことじゃない。
お腹の破裂した妊娠ウサギがたしかに動いている。
生きているはずのない血みどろウサギが動いている。
頭がゆっくりと持ち上がる。すでに完全に動いている。
僕と目が合った。その瞳は、黒と赤をかき混ぜたような、濁った色をしていた。それが生きているとは、こうして目の前で見ていても信じられない。
ついに妊娠ウサギが完全に起き上がる。何かを探すように首をめぐらしている。
それは、はらわたをはみ出させているとは思えない動きだった。仲間のウサギたちを見つけると、大きく歯をむき出しにして、彼らに飛びかかっていった。腸を引きずりながら。痛みなどまるで感じていない様子で。
ウサギたちが暴れだした。
目の前で何が起こっているのかわからない。
逃げまどう仲間を、蘇った妊娠ウサギが襲う。
噛みつき、引っかき、新たな鮮血が小屋に飛び散る。
ウサギたちはほとんど抵抗できなかった。妊娠ウサギからなんとか逃れようと、小屋の中を行ったり来たりするだけだ。次々とウサギたちが殺されていく様子を、僕たちはただ呆然と見ていることしかできなかった。”
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