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シビトノクニ 下

シビトノクニ 下


発行: キリック
シリーズ: シビトノクニ
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★3
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解説

 成長したマサトは大学の研究室にいた。専攻は生物学。高校入学と同時にひとり暮らしを始め、アルバイトをしながら勉強に励み、奨学金 で大学院まで進んだ彼は、日夜ある研究に勤しんでいた。そんな折、突然かかってきた一本の電話。それをきっかけに、〈あの夏の日〉以来関係をこじらせ疎遠になっていたアキラと、予期せぬ再会を果たす。だが、その日を境にマサトの日常は再び壊れはじめ、さらなる絶望と狂気の渦に呑み込まれていくのだった……。

 幼年期、少年期、青年期……死に侵された国の狂気と悲しみが主人公の成長とともに語られる、空前の暗黒ヒューマンドラマ・下巻!

目次

三章 屍人の国(青年期)
エピローグ

抄録

 頭蓋骨に回転式のノコギリの刃を入れる。激しい震動。揺れ動く刃を調節しながら真っ直ぐ切り進めていく。少しぐらい手元が狂ったところで気にすることはない。どうせもう死んでいるのだから。
 ドリルで開けた六点の穴に沿ってノコギリを次々と入れていく。回転音が解剖室の内部に満ちる。ゴリゴリという感触が滑らかになったところで刃を抜いた。六角形に切り抜いた頭蓋骨の蓋をそっと外す。
 脳が露出した。
 薄い肌色をしている。正確には、それは脳ではない。表面を覆う硬膜だ。
 メスを入れる。切れ目に沿ってきれいに剥がすと、ようやく姿を現した。
 人間の脳。 
 頭蓋骨と脳膜に守られた脳は乳白色をしていて、豆腐のように脆《もろ》い。
 全体をざっと見回す。損傷はないようだ。
 大脳皮質の一部をメスでスライスする。ほとんど手ごたえはない。採取したサンプルを保管用のシャーレに入れる。
 これで今日は五体目だ。それでも解剖待ちの死体はまだまだある。
 時計を見ると、午後三時を過ぎていた。そこで僕はようやく朝から何も食べていないことを思い出し、一息入れることにした。
 ゴム手袋とマスク、それに手術着を脱いで焼却箱に放り込む。隅のシンクで手を洗い、消毒してから、ここでの普段着である白衣を羽織り、解剖室を出た。
 リノリウムの廊下を歩く。
 疲れが溜まっていた。このK大学のウイルス研究室にもう何日も泊まり込んでいる。
 扉を開けて研究室に入る。室内には一人しかいなかった。隅のほうに坂本という研究生がいるだけだ。パソコンのキーボードを叩いている。
「おつかれさん」
 僕が声をかけると、作業に没頭していた坂本が僕に気づいて顔を上げた。
「あ……ああ。おつかれ」
 坂本は僕と同じ、このK大学の生物学科に所属する大学院生だ。僕とは同期で、ともに修士課程の二回生になる。肥満体の坂本は、突き出た腹がデスクの縁に押されて苦しそうだ。ただ、そんな彼もこの研究室ではかなり優秀な部類に入る。
「論文の進み具合はどうだい?」
 坂本はゆくゆくは博士課程に進むつもりで、修士論文の作成に取り組んでいる。
「……まあまあだよ」
 そう言うと、彼はそそくさと立ち上がって研究室を出ていった。
 僕は誰もいなくなった研究室で小さくため息をつく。この研究室で僕は敬遠される存在なのだ。
 以前は坂本とも仲が良かったが、僕がこの研究に取り組みはじめてから、今のように態度を変えた。だがそれも無理からぬことだった。
 気分を変えようと、研究室の隣にある飼育室へと向かう。そこには実験用のラットが飼われている。
 飼育室は十畳ほどの窓のない部屋だ。壁際にある備え付けの棚には、ラットの入った檻がところ狭しと並んでいる。壁の高い位置にある換気ダクトから常に新鮮な空気が送り込まれ、室温や湿度は最適な状態に保たれていた。
 僕が飼育室に入ると、ラットたちが甲高い声で鳴きだした。餌をねだっているらしい。檻を覗き込むと、僕を見つめ返してきた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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