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黄色い部屋の謎

黄色い部屋の謎

著: ガストン・ルルー 翻訳: 宮崎嶺雄
発行: 東京創元社
価格:578円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン 
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著者プロフィール

 ガストン・ルルー(Gaston Leroux)
 1864〜1927
 フランスの作家。モーリス・ルブランと並び称されるフランス推理小説草創期の巨匠で、欧米では今なお多くのファンをつかんでいる。新聞記者を経て、《密室もの》の最高傑作として名高い『黄色い部屋の謎』を発表し、作家として大成功を収める。他に映画化等もされた『オペラ座の怪人』『黒衣夫人の香り』等がある。

解説

 フランス有数の頭脳、スタンガースン博士が住むグランディエ城の離れにある一室で、世にも恐ろしい惨劇は起きた。内部から完全に密閉された《黄色い部屋》から響く女性の悲鳴。ドアをこわして救援に駆けつけた者たちが目にしたのは、荒らされた室内と、血の海の中に倒れた博士の娘マチルドの姿だけ……令嬢を襲った憎むべき犯人はどこへ消えたのか? この驚くべき密室の謎と、その後も続発する怪事件に叡智をもって挑むのは、弱冠18歳の新聞記者ルールタビーユ。密室ミステリの金字塔にして、世界ベストテンの上位に名を連ねる、名作中の名作。

目次

1 そろそろわからなくなってくる
2 ここに初めてジョゼフ・ルールタビーユが姿を現わす
3 《一人の男が幽霊のように鎧戸を通り抜けた》
4 《荒涼たる自然に囲まれて》
5 ルールタビーユはロベール・ダルザック氏に一語を呈し、それがちょっとしたききめを表わす
6 柏の庭の奥で
7 ルールタビーユ、ベッド下の探検に出かける
8 予審判事がスタンガースン嬢を尋問する
9 新聞記者と探偵
……他。

抄録

 ジョゼフ・ルールタビーユの遭遇した奇怪極まる事件を、ここで語り始めるについては、私もある興奮を感じないではない。今日まで、ルールタビーユはそれに絶対に反対していたし、とうとう私も、最近十五年間におけるもっとも不可思議な探偵事件たるこの物語を、いつか公表できるということを、もうあきらめていたのであった。そればかりでなく、もし、あの高名なスタンガースン博士が最近レジオン・ドヌール勲章のグラン・クロアを授けられたことに関連して、一夕刊紙が、憐れむべき無知とも臆面もない背信行為ともいうべき記事の中で、ジョゼフ・ルールタビーユが永久に忘れ去られていてほしいと私に言っていた恐るべき事件を、ふたたび引合いに出すようなことさえしなかったならば、不可思議にして残忍かつセンセーショナルな数々のドラマを生み出した、そしてわが友ルールタビーユがみずから深くその渦中に立ち入った、《黄色い部屋》の事件と呼ばれる奇々怪々な事件について、世間の人々はその《すべての真相》を、ついに知らずじまいになったであろうとさえ想像されるのである。
 《黄色い部屋》! 十五年ほど前にはあれほどおびただしい量のインキを流れ出させたこの事件を、いったい誰が覚えていたであろうか? パリでは、何事もすぐ忘れられてしまう。ネーヴ裁判や、あの悲劇的なメナルド少年の惨死事件など、すでにその名さえ忘れ去られているではないか。そのくせ、当時、それらの公判の成行きに世間の耳目が集中したことといったら、おりから突発した内閣更迭の騒ぎさえ、全然気がつく者もなくすんでしまったくらいだったのである。ところで、《黄色い部屋》の事件は、ネーヴ裁判よりは、四、五年前のことであるが、さらに大きな反響を巻き起こしたものであった。実に何カ月かの間というもの、全世界の人々が、この難解な謎――私の知る限り、かつてわが国の警察の炯眼な洞察力に委ねられ、また裁判官たちの明識に訴えられたもののうちもっとも難解な――この謎に、すっかり心を奪われていた。手のつけようもないこの謎の解答を、誰も彼も捜し求めた。それはあたかも、老人のヨーロッパと青年のアメリカとが、劇的な一つの謎解きに熱中している観があった。それというのが、実際――私がこんなことを言えるのは、《このすべての物語には、作者の自尊心など全然はいりこむ余地がないから》であり、私はまったく特別な、ある資料のおかげで見直すことのできた事実を、ただそのまま書き写しているにすぎないからであるが――、事実あるいは空想の領域において、たとえば、「モルグ街の殺人」の作者エドガー・アラン・ポオや、その亜流、ないしお粗末なコナン・ドイル派などの創作の中にさえ、その不可思議さという点で、《黄色い部屋のあるがままの不可思議さ》に比肩しうるような何ものかを指摘することなど、到底できようとは思えないのである。
 誰一人として見破りえなかったものを、わずか十八歳のジョゼフ・ルールタビーユ、当時ある大新聞のささやかな探訪記者であった彼が探り出したのである! しかし、彼が重罪裁判所の法廷で、事件全体の鍵を明らかにした時には、すべての真相を口にしたわけではなかった。彼はただ、《解きえないものを解くために》、そして一人の無実の罪人を救い出すために、必要な点だけを明らかにしたのであった。彼がそのように沈黙を守らねばならなかった理由も、今日ではすでに消滅している。それどころか、わが友ルールタビーユは、今こそ語る《義務がある》のである。したがって、諸君も今やすべてを知ることができる。で、これ以上くだくだしい前置きはぬきにして、これから諸君の目の前に、《黄色い部屋》の謎を、グランディエの城の惨劇が起こった翌日、全世界の人々の目に映じたそのままの姿で提出することにしよう。
 一八九二年十月二十五日、締切りまぎわにはいったニュースとして、次のような略報が《ル・タン》紙に載った――

*この続きは製品版でお楽しみください。

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