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ホラー短編傑作選 兇

ホラー短編傑作選 兇


発行: キリック
シリーズ: ホラー短編傑作選 兇
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★21
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解説

 どうせ死ぬならみんなの前で派手に死のう。激増した自殺者対策に政府主導で始まったスイート・スーサイド・ナイトは、公開自殺の模様を放送する国民的人気番組。そこに出演して華々しい最期を遂げるのが七瀬紗央里の夢なのだが……『スイート・スーサイド・ナイト』著:狂気太郎
 勝てば賞金一千万円。借金で首が回らなくなった秋山理人が参加したのは、二人のプレイヤーが目の前に拘束された「マリオ」と呼ばれる人間の命を削り合う悪魔のようなゲームだった……『マリオ・ゲーム』著:青山祐
 宮本くんが好きな子は誰ですか? 学校でいつからともなく流行りだした〈携帯こっくりさん〉にその質問をした日から、小松原真利のまわりでおかしなことが起こりはじめる。こっくりさんとは何なのか? 連続する怪現象との関係は? ……『召喚 〜携帯こっくりさんの怪〜』著:Thus
 ガリガリに痩せこけ、強烈な体臭を放つ貝木美衣は、みんなに「怪奇ミイラ女」と呼ばれ、クラスでいじめられていた。それを見かねて注意したことから、優等生でお嬢様の則子はいじめの中心人物の洋子と貝木の自宅を訪れることになる。だが、そこで二人を待っていたのは〈世にもおぞましい物語〉だった……『怪奇ミイラ女 ─学校のおぞましい話より─』著:梅津裕一

 最凶、解禁。気鋭のホラー作家四人が贈る電子限定、絶恐ホラーアンソロジー!!

目次

『スイート・スーサイド・ナイト』狂気太郎
『マリオ・ゲーム』青山祐
『召喚 〜携帯こっくりさんの怪〜』Thus
『怪奇ミイラ女』梅津裕一

抄録

 ピッ……ピッ……ピッ……。
 赤い液体がチューブの中を流れていく。それを秋山理人《あきやまりひと》は見つめていた。手足が椅子に固定されていて、身体はほとんど動かせない。ただ、目の前の光景を目にし、音を聞いて、声を出すことは許されている。
「ぁぁぁ……ぉぉぉ……」
 くぐもった呻き声。
 それは部屋の中央にいる男の声だった。三十前後と思われるそいつは、中肉中背、どこにでもいそうな、特徴のない顔をしていた。
 部屋は壁も床もまっ白だった。中央に備え付けられた巨大な金属台が、天井にある無数の照明の光を鈍く照り返している。そして、その巨大な金属台の上に、男はバンザイのかたちであお向けに寝かされていた。上半身、裸で。
 両手足がそれぞれ、台の四隅に手錠で繋がれている。裸の上半身に丸い吸盤のようなものをいくつも張りつけ、そこに細いコードが伸びていた。首筋には透明なチューブが取り付けられている。おそらくその接合部には注射針のようなものが使われているに違いない。
 その金属台の脇に、やはり白い服を着た男が立っている。
 白服の前にはワゴンが置かれていて、五十センチ四方ほどの電動式ポンプのような装置が載っている。男の首筋から続くチューブの反対側は、その装置につながっていた。チューブを通して、男の血液を吸い上げるためだ。
 それだけじゃなかった。
 ピッ……ピッ……ピッ……。
 装置は絶えず電子音を発していた。男の全身に取り付けられたコードによって、心拍や血圧のチェックもしているのだ。
 チューブ内の血流が止まった。
『カウントします』
 突然、ゲームマスターの声がした。と同時に、白い壁の一角が光り出す。埋め込まれた電光掲示板。そこに、青いデジタル数字が浮かび上がった。
 六〇という表示。五九になった。みるみるうちに数字が小さくなっていく。一秒刻みの正確なカウント。
 頼む。回ってくるな。くたばってくれ。……が、理人の悲痛な叫びは届かず、カウンターは一分間進み、〇になった。
 中央の男──マリオはまだ生きている。鳴り続けている電子音。それがその証拠だ。おかげで、ゲームはまだ終わらない。
 くそっ。せっかくヤツのターンだったのに。
 理人はマリオが載っている金属台から対戦相手の小田原《おだわら》へと視線を移した。
「くっくっく」
 小田原は、笑っていた。
 今年で二十五になった理人と同年代ぐらいだろう。胸にラインストーンで大きな髑髏《どくろ》をあしらった黒いTシャツの上に、白いパーカーを羽織り、下は迷彩のワークパンツにスニーカーを履いている。がっしりとした長身の男で、剃っているのか頭はスキンヘッドだった。両耳を埋め尽くすさまざまな形のピアスがやたらと目につく。眉が薄く、目の細い、酷薄な印象の男だった。
『秋山さんのターンです』
 再び、ゲームマスターが告げた。機械で変調されたとがった声は、ゲームの進行だけを淡々と伝えるだけだ。どこから聞こえるのか、はっきりとはわからない。部屋の壁のどこかにスピーカーが埋め込まれているのだろう。そしておそらくは、一部始終を撮影するカメラもある。
 この狂った勝負を見て愉しんでいる誰かがいなければ、こんなゲームが成立するはずもないのだ。
 ゲームは先攻の理人から始まった。最初のターン保持者となった理人は「三〇〇」を指定し、自分のターンを終えた。もちろん、その程度でマリオが死ぬことはなかった。
 次の小田原のターン。ヤツは「一五〇〇」と言い放った。常軌を逸している。理人にはそう思えた。
 だが、血が抜き終わった今も、マリオはまだ生きている。
 マリオからは、理人と小田原が指定した、合計一八〇〇CCもの血液がすでに抜かれている。心拍を示す電子音の間隔もずいぶん長くなってきた。
 もうマリオは虫の息だ、と理人は思う。
 おそらくあと一〇〇か二〇〇で死ぬ。いや、このまま放置しておくだけでもそうなるだろう。
 ちょっと待て。そうなるとここは一〇〇しかないじゃないか。早く言わなければ。
「一〇〇だっ」
 カウントが終わるまでもってくれ。
 ワゴンのかたわらに立つ白服が、装置の操作を行い、チューブを血が流れはじめた。マリオの命が抜かれていく。
 それは理人にとって信じられないほど長い時間だった。(青山祐『マリオ・ゲーム』より)

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