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和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>ファンタジー
剛 しいら(ごう しいら) 東京都出身。千葉県在住。6月9日生まれ。血液型はA型。 最近の趣味は、椎茸栽培。元々はあんまり好きじゃなかったのに、自分で育てた椎茸は、なぜか格別においしいです。今度は別のキノコにも挑戦してみようかな。だけどそうなると、毎日キノコ料理ばかりになりそう。
孤独な青年は、自らの手で「愛人」を作りだした――。 天才的な頭脳を持っていた博士のクローンとして「生み出され」たアーサーは、育ての父親・高原卿へ叶わぬ想いを抱き続け、ついに最大の禁忌を犯す。自身が作り上げた、自分だけを愛し、見つめてくれるロボット・アダムとの偽りの恋に、次第にのめりこんでいくアーサー。しかしある日それを高原卿に知られてしまい!? 「黒衣の公爵」番外編!
青銅の愛人 あとがき
時はヘブン移民暦、五百二十年。一日が二十時間、一年が三百五日で過ぎていくこの星で、もっとも嵐の多い九の月だった。 海を生計の場とする南紅大国の民にとって、この季節は滅多にない休養の時期になる。海洋生物を捕獲する船団は、港に船を停泊させ、それぞれの家でのんびりと過ごすのだ。 頑強に作られているとはいえ、海岸沿いに建てられた家々は、嵐の被害に遭うこともある。そのため刻々と変化する天気概況が、常時各家に送られていた。さらに船で暮らす船上民は、安全な海域へと誘導される。嵐によって人的被害が出ることはほとんどなかった。 人々を守っているのは『アダム』だ。かつてはこの国を支配していたコンピューターは、ある時からこの世界の支配権を人間に返した。北青王国のように、コンピューター『イブ』にすべてを支配されることを嫌った国民によって、忠実なる僕の地位に戻ったのだ。 海に張り出すような形で建てられた家で、天井まで続く窓の側に立ちながら、アーサー・ビノシュは荒れる海を見つめている。 赤毛の長い髪はくるくるとした巻き毛で、どこか哀しげな瞳は榛色だった。色は白く、手足はほっそりとしている。身長は百七十センチくらいしかなくて、南紅大国では十四、五歳の少年の大きさだった。 けれどアーサー・ビノシュは、この日、十八歳になった。ヘブンでは成人となる年齢だ。 「アダム……嵐のレベルは?」 アーサーの質問に、百九十センチを超える黒髪の美丈夫は答える。 「レベル8です、アーサー。残念ですが、嵩原卿の専用艇では、この嵐の中ご自宅に戻ることは出来ません」 「別に……いいんだ」 誕生日だというのに、父は王宮から戻って来られない。そうなるとアーサーは、たった一人で自分の成人を祝うことになる。 いや、正確には一人ではない。人間以外のものならこの家には大勢いるが、それを人として数えたら何人にもなるだろう。 執事(しつじ)ロボットのミカサと、キッチンのロボットが数体。嵩原卿の身の回りの世話をしている、童子型ロボットのカジャが一体。そしてこの国の核となるコンピューター、『アダム』の持つ情報をコピーして作り上げた、ロボットのアダムが一体だった。 アーサーはこの国の先代の王、嵩原海人の息子ということになっている。さっさと長男の天人に王座を譲り、今は科学院の学者となってしまった嵩原卿だが、正妃との間に十人、三人の皇妃との間に七人の子供がいる子だくさんだった。 正妃が亡くなった後は、皇妃の中から次の正妃を選ぶことはせず、彼女らに十分な資産を与えて親元に帰した。そして今は、この海辺の家で、アーサーだけと暮らしている。 アーサーに母親はいない。なぜならアーサーは、五百年近く前に亡くなったアーサー・ビノシュのクローンだったからだ。 完全な人工子宮で育てられたから、代理母もいなかった。育ててくれたのは、かなり高齢の乳母だ。当時はまだ、育児ロボットのソラタイプが開発される前で、アーサーは穏やかな老婦人と、ミカサ型のロボットに世話してもらって大きくなった。 普通の子供のように、学校に行くなどしたことはない。何しろこの家から、ほとんど出ることなく育ったのだ。たまに訪れる父と、父の友人の博士達だけが、子供時代のアーサーが知っている人間だった。 それには理由がある。北青王国を支配していたコンピューター『イブ』の暴走を食い止めるためには、それをプログラミングしたアーサー・ビノシュの生体認証が必要だった。『イブ』が暴走を始めた時点で、両国の王達は秘密会議を行い、人類の故郷である地球から運ばれてきた、アーサー・ビノシュの冷凍精子使い、クローンを生み出したのだ。 『イブ』にその存在を知られてはいけない。だからアーサーは、嵩原卿に守られ、ほとんど人と会うこともなく十六歳まで育てられた。 どうやらオリジナルのアーサー・ビノシュという男は、かなり知能の高い男だったらしい。クローンでありながら、アーサーも同じように知能は高く、十歳の時に嵩原卿に出生の秘密のすべてを聞かされたが、自分の運命を瞬時に悟った。 アーサーのおかげで、今から二年前、『イブ』の暴走は食い止められたのだ。 『イブ』を無力化した後、北青王国はアーサーが新たにプログラミングしたコンピューター『モーゼ』によって、広大な国を機能させている。混乱はまだ続いているが、世界は少しずつ修復に向かっていた。 ところがそうなると、アーサーにとって生きている意味はあまりなくなってきた。 オリジナルのアーサー・ビノシュの精子共々、アーサーの精子も保存されていた。もしここでアーサーがいなくなっても、また全く同じ遺伝子を持ったクローンが何人でも再生出来るのだ。 用無しになったと思えるのに、アーサーはこの先も生きていかねばならない。 *この続きは製品版でお楽しみください。
【XMDF形式】
※注意 同一の書籍でもファイル形式が異なるものは別商品として取り扱っております。
デジタル初版:2009年10月8日
ジャンル:和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>ファンタジー 著: 剛しいら 発行: 学習研究社 レーベル: もえぎ文庫 シリーズ: 黒衣の公爵
和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>ファンタジー |
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