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青銅の愛人

青銅の愛人

著: 剛しいら
発行: 学研
レーベル: もえぎ文庫 シリーズ: 黒衣の公爵
価格:578円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★★★★5
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著者プロフィール

 剛 しいら(ごう しいら)
 東京都出身。千葉県在住。6月9日生まれ。血液型はA型。
 最近の趣味は、椎茸栽培。元々はあんまり好きじゃなかったのに、自分で育てた椎茸は、なぜか格別においしいです。今度は別のキノコにも挑戦してみようかな。だけどそうなると、毎日キノコ料理ばかりになりそう。

解説

 孤独な青年は、自らの手で「愛人」を作りだした――。
 天才的な頭脳を持っていた博士のクローンとして「生み出され」たアーサーは、育ての父親・高原卿へ叶わぬ想いを抱き続け、ついに最大の禁忌を犯す。自身が作り上げた、自分だけを愛し、見つめてくれるロボット・アダムとの偽りの恋に、次第にのめりこんでいくアーサー。しかしある日それを高原卿に知られてしまい!? 「黒衣の公爵」番外編!

目次

青銅の愛人
あとがき

抄録

 時はヘブン移民暦、五百二十年。一日が二十時間、一年が三百五日で過ぎていくこの星で、もっとも嵐の多い九の月だった。
 海を生計の場とする南紅大国の民にとって、この季節は滅多にない休養の時期になる。海洋生物を捕獲する船団は、港に船を停泊させ、それぞれの家でのんびりと過ごすのだ。
 頑強に作られているとはいえ、海岸沿いに建てられた家々は、嵐の被害に遭うこともある。そのため刻々と変化する天気概況が、常時各家に送られていた。さらに船で暮らす船上民は、安全な海域へと誘導される。嵐によって人的被害が出ることはほとんどなかった。
 人々を守っているのは『アダム』だ。かつてはこの国を支配していたコンピューターは、ある時からこの世界の支配権を人間に返した。北青王国のように、コンピューター『イブ』にすべてを支配されることを嫌った国民によって、忠実なる僕の地位に戻ったのだ。
 海に張り出すような形で建てられた家で、天井まで続く窓の側に立ちながら、アーサー・ビノシュは荒れる海を見つめている。
 赤毛の長い髪はくるくるとした巻き毛で、どこか哀しげな瞳は榛色だった。色は白く、手足はほっそりとしている。身長は百七十センチくらいしかなくて、南紅大国では十四、五歳の少年の大きさだった。
 けれどアーサー・ビノシュは、この日、十八歳になった。ヘブンでは成人となる年齢だ。
「アダム……嵐のレベルは?」
 アーサーの質問に、百九十センチを超える黒髪の美丈夫は答える。
「レベル8です、アーサー。残念ですが、嵩原卿の専用艇では、この嵐の中ご自宅に戻ることは出来ません」
「別に……いいんだ」
 誕生日だというのに、父は王宮から戻って来られない。そうなるとアーサーは、たった一人で自分の成人を祝うことになる。
 いや、正確には一人ではない。人間以外のものならこの家には大勢いるが、それを人として数えたら何人にもなるだろう。
 執事(しつじ)ロボットのミカサと、キッチンのロボットが数体。嵩原卿の身の回りの世話をしている、童子型ロボットのカジャが一体。そしてこの国の核となるコンピューター、『アダム』の持つ情報をコピーして作り上げた、ロボットのアダムが一体だった。
 アーサーはこの国の先代の王、嵩原海人の息子ということになっている。さっさと長男の天人に王座を譲り、今は科学院の学者となってしまった嵩原卿だが、正妃との間に十人、三人の皇妃との間に七人の子供がいる子だくさんだった。
 正妃が亡くなった後は、皇妃の中から次の正妃を選ぶことはせず、彼女らに十分な資産を与えて親元に帰した。そして今は、この海辺の家で、アーサーだけと暮らしている。
 アーサーに母親はいない。なぜならアーサーは、五百年近く前に亡くなったアーサー・ビノシュのクローンだったからだ。
 完全な人工子宮で育てられたから、代理母もいなかった。育ててくれたのは、かなり高齢の乳母だ。当時はまだ、育児ロボットのソラタイプが開発される前で、アーサーは穏やかな老婦人と、ミカサ型のロボットに世話してもらって大きくなった。
 普通の子供のように、学校に行くなどしたことはない。何しろこの家から、ほとんど出ることなく育ったのだ。たまに訪れる父と、父の友人の博士達だけが、子供時代のアーサーが知っている人間だった。
 それには理由がある。北青王国を支配していたコンピューター『イブ』の暴走を食い止めるためには、それをプログラミングしたアーサー・ビノシュの生体認証が必要だった。『イブ』が暴走を始めた時点で、両国の王達は秘密会議を行い、人類の故郷である地球から運ばれてきた、アーサー・ビノシュの冷凍精子使い、クローンを生み出したのだ。
『イブ』にその存在を知られてはいけない。だからアーサーは、嵩原卿に守られ、ほとんど人と会うこともなく十六歳まで育てられた。
 どうやらオリジナルのアーサー・ビノシュという男は、かなり知能の高い男だったらしい。クローンでありながら、アーサーも同じように知能は高く、十歳の時に嵩原卿に出生の秘密のすべてを聞かされたが、自分の運命を瞬時に悟った。
 アーサーのおかげで、今から二年前、『イブ』の暴走は食い止められたのだ。
『イブ』を無力化した後、北青王国はアーサーが新たにプログラミングしたコンピューター『モーゼ』によって、広大な国を機能させている。混乱はまだ続いているが、世界は少しずつ修復に向かっていた。
 ところがそうなると、アーサーにとって生きている意味はあまりなくなってきた。
 オリジナルのアーサー・ビノシュの精子共々、アーサーの精子も保存されていた。もしここでアーサーがいなくなっても、また全く同じ遺伝子を持ったクローンが何人でも再生出来るのだ。
 用無しになったと思えるのに、アーサーはこの先も生きていかねばならない。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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