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著者プロフィール
椹野 道流(ふしの みちる)
星座:魚座、血液型:O型、誕生日:2月25日、趣味:猫。うちの猫なら24時間見ていたい。
星座:魚座、血液型:O型、誕生日:2月25日、趣味:猫。うちの猫なら24時間見ていたい。
解説
天草から帰って執筆活動に励む天本森のもとに、父トマスについての新たな情報が届く。若き日の父を知るイギリス人が、京都に住んでいるというのだ。だが、敏生とともにさっそく会いに行くと、すでに姿はなく、ただひとつ天本あてに小さな油絵が残されていた。神戸まで足をのばし、久しぶりに龍村と再会した二人は、彼が怪奇現象に見舞われているのを聞いて協力することになるのだが……。大人気シリーズ最新作!
目次
一章 夢よりもなお
二章 孤高の炎
三章 誘う指先
四章 弱く照らすもの
五章 消えゆくもの、残るもの
二章 孤高の炎
三章 誘う指先
四章 弱く照らすもの
五章 消えゆくもの、残るもの
抄録
その日の夕方、天本森は、自宅リビングのソファーで洗濯物を畳んでいた。
ここしばらく彼を苦しめていた小説が昨夜ようやく完成し、文字通り昏倒すること半日。どうにか復活した彼は、溜まりに溜まった家事を片付けるべく、昼過ぎから忙しく動き回る羽目になった。
とりあえず洗濯機を回しながら家じゅうに掃除機をかけ、洗い上がった衣類を干してから、乾くのを待つ間に今度は拭き掃除、そして太陽を浴びて気持ちよく乾いた洗濯物を取りこんで畳む……と、まるで敏腕主婦そのものの無駄のない動きである。
無論、森が執筆作業で忙しい間は、同居人であり、作家としての森にとってはアシスタント、術者としての森にとっては弟子、そしてプライベートでは恋人である琴平敏生がある程度のことはしてくれていた。
とはいえ、簡単な食事を作るとか店屋物をとるとか、食に関することはそれなりにマメな敏生なのだが、その他のことについてはわりと無精というか、家の中がどんなに荒れていようと、何日同じ服を着ることになろうと、まったく気にならないらしい。
それどころか、普段はうるさく小言を言う森が仕事に専念していて何も言わない、もとい言えないのをいいことに、じつにのびのびと散らかし放題の生活を送っていたようだ。
もう三足めの片方だけの靴下を手に、森は軽く嘆息して立ち上がった。
「まったく……。あいつのこの悪癖は、何度叱っても治らないとみえる」
そんな愚痴をこぼしながら、さっきまで座っていたソファーの背もたれに手を掛け、ぐいと後ろに倒す。案の定、ソファーの下には脱いだままの丸まった靴下が転がっていた。それを拾い上げ、森はもう一度、今度は肺が空っぽになるほど深い溜め息をついた。
妙なところで自然児の敏生は、基本的に家の中では裸足で過ごしたいらしく、外から帰宅するとすぐさま靴下を脱いでしまう。それをランドリーバスケットに入れてくれるなら何の問題もないのだが、何度注意してもリビングに放り出していくのだ。
目についたものは森がブツクサ言いながら回収するのだが、一部はこうしてソファーの下に押し込まれ、気付かれないまま放置されるというわけだった。
「俺は幼稚園児の親か!」
そんな愚痴が思わず零れたそのとき、軋む門扉を開閉する音が微かに聞こえてきた。どうやら敏生が帰宅したらしい。
いつものらりくらりと注意を聞き流されて終わるので、今日こそは玄関先で厳しく言ってやろうと、森は靴下を掴んですっくと立ち上がった。玄関で仁王立ちになって待ちかまえ、扉が開くと同時に、入ってきた人物の鼻先に汚れた靴下を突きつける。
「帰ってそうそうで何だが、敏生、君、靴下をソファーの下に放り込むのを何度やめろと言えば……あっ」
一息に叱りつけようとした森は、ギョッとして口を噤んだ。そこに立っていたのは、敏生だけではなかったのだ。
敏生の傍らで、ポカンとした顔をして森を見ているのは……あろうことか、森が術者として所属する「組織」のエージェント、早川知足であった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ここしばらく彼を苦しめていた小説が昨夜ようやく完成し、文字通り昏倒すること半日。どうにか復活した彼は、溜まりに溜まった家事を片付けるべく、昼過ぎから忙しく動き回る羽目になった。
とりあえず洗濯機を回しながら家じゅうに掃除機をかけ、洗い上がった衣類を干してから、乾くのを待つ間に今度は拭き掃除、そして太陽を浴びて気持ちよく乾いた洗濯物を取りこんで畳む……と、まるで敏腕主婦そのものの無駄のない動きである。
無論、森が執筆作業で忙しい間は、同居人であり、作家としての森にとってはアシスタント、術者としての森にとっては弟子、そしてプライベートでは恋人である琴平敏生がある程度のことはしてくれていた。
とはいえ、簡単な食事を作るとか店屋物をとるとか、食に関することはそれなりにマメな敏生なのだが、その他のことについてはわりと無精というか、家の中がどんなに荒れていようと、何日同じ服を着ることになろうと、まったく気にならないらしい。
それどころか、普段はうるさく小言を言う森が仕事に専念していて何も言わない、もとい言えないのをいいことに、じつにのびのびと散らかし放題の生活を送っていたようだ。
もう三足めの片方だけの靴下を手に、森は軽く嘆息して立ち上がった。
「まったく……。あいつのこの悪癖は、何度叱っても治らないとみえる」
そんな愚痴をこぼしながら、さっきまで座っていたソファーの背もたれに手を掛け、ぐいと後ろに倒す。案の定、ソファーの下には脱いだままの丸まった靴下が転がっていた。それを拾い上げ、森はもう一度、今度は肺が空っぽになるほど深い溜め息をついた。
妙なところで自然児の敏生は、基本的に家の中では裸足で過ごしたいらしく、外から帰宅するとすぐさま靴下を脱いでしまう。それをランドリーバスケットに入れてくれるなら何の問題もないのだが、何度注意してもリビングに放り出していくのだ。
目についたものは森がブツクサ言いながら回収するのだが、一部はこうしてソファーの下に押し込まれ、気付かれないまま放置されるというわけだった。
「俺は幼稚園児の親か!」
そんな愚痴が思わず零れたそのとき、軋む門扉を開閉する音が微かに聞こえてきた。どうやら敏生が帰宅したらしい。
いつものらりくらりと注意を聞き流されて終わるので、今日こそは玄関先で厳しく言ってやろうと、森は靴下を掴んですっくと立ち上がった。玄関で仁王立ちになって待ちかまえ、扉が開くと同時に、入ってきた人物の鼻先に汚れた靴下を突きつける。
「帰ってそうそうで何だが、敏生、君、靴下をソファーの下に放り込むのを何度やめろと言えば……あっ」
一息に叱りつけようとした森は、ギョッとして口を噤んだ。そこに立っていたのは、敏生だけではなかったのだ。
敏生の傍らで、ポカンとした顔をして森を見ているのは……あろうことか、森が術者として所属する「組織」のエージェント、早川知足であった。
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