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くちびるに蝶の骨〜バタフライ・ルージュ〜

くちびるに蝶の骨〜バタフライ・ルージュ〜

著: 崎谷はるひ
発行: フロンティアワークス
レーベル: ダリア文庫e シリーズ: バタフライ・キス
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★★★☆82
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解説

 SEの柳島千晶は、ホストクラブ『バタフライ・キス』で王将と呼ばれるオーナーの柴主将嗣と恋人関係にある。しかし千晶は、大学時代片想いをしていた王将に、強引に関係を結ばされたため、愛情があると思えないでいた。大学を卒業してもその関係は続いたが、ホストである王将を信じきれず、何度も逃げようとする千晶。その度捕らえられ、王将に淫らな『お仕置き』をされるが――?

※ 本文にイラストは含まれていません。

目次

くちびるに蝶の骨〜バタフライ・ルージュ〜
あとがき

抄録

 目のまえの男が、ただそこに立っているだけで醸しだす、ぐらりとするほど強烈な色香から目を逸らし、千晶は口早に言った。
「めずらしいと思っただけだ。ほとんど帰ってこないし」
 言いながら靴を脱いだ千晶は、玄関からもっとも近い位置にある自分の部屋に逃げこもうと、足早に歩いた。だが自室のドアを開くより早く、壁につかれた長い腕が行く手を遮る。
「なんだよ、王将」
「なんだよって、なにがだ」
 困ったように笑ってみせながら、千晶は彼の源氏名を呼んだ。いまではすっかり、こちらの名前のほうが彼になじんでしまっていて、本名を口にすると違和感があるくらいだ。
 ホストクラブ『バタフライ・キス』のオーナー、柴主将嗣。彼はかつて『王将』という源氏名でホストをしていた。ひと晩に一千万稼いだという伝説すらある、新宿の顔とも言える男だ。
 長身に逞(たくま)しい体つき。目鼻のくっきりした、派手な造り。南米やイタリア系の外国の血が混じっているのではないかと噂されるラテン系ハンサムだ。じつのところは純日本人で、出身は北国のほうだというのはあまり知られていない。
 彼について語られるのは、オーナーとしての経営手段の辣腕ぶり、圧倒的なカリスマと強烈な存在感――そして滴るような色香で手に入れた、財と地位。
 常に余裕の笑みをたたえ、その源氏名のとおり誰かのうえに君臨するのが似合う、不敵な男。
 そしてただひとりの、千晶の男。
「おまえ、なに焦ってるんだ? なんで逃げようとする」
 色気のある厚い唇を笑いの形に歪めた将嗣に、千晶は言い訳がましく口を開いた。
「暑くて汗かいたんだよ。風呂に入って、着替えたいんだ」
 嘘ではない。この年の残暑は長く、秋に入ってからも真夏日が続いていた。スーツを纏った身体は汗じみて、自分でも肌のべたつきが気になる。
 目のまえにいる男は、風呂あがりだろうにあまい香水のにおいをさせていた。誰かの移り香ではなく、彼自身が好んでつけるそれは、かつてのパトロネスのひとりが、わざわざフランスで調香させたオリジナルのフレグランスだ。いまでは同じ香りを将嗣本人が注文しているらしく、ひと瓶いくらか知らないが、おそらく千晶の月給くらい軽く飛んでいくのだろう。
(すごい違いだ)

*この続きは製品版でお楽しみください。

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