和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>外国人
著者プロフィール
藤原 万璃子(ふじわら まりこ)
出身地 東京/星座 牡牛座/血液型 O型/趣味 旅行、観劇、音楽鑑賞、読書、ワイン/誕生日 5月11日
シャレード文庫、パレット文庫、アズ・ノベルズ等で作品を発表。
出身地 東京/星座 牡牛座/血液型 O型/趣味 旅行、観劇、音楽鑑賞、読書、ワイン/誕生日 5月11日
シャレード文庫、パレット文庫、アズ・ノベルズ等で作品を発表。
解説
ブラッキーに誘われ、欧州で最も有名なバレエ団の日本公演へはるばる赴いたハルキ。旅程を嗅ぎつけたタケシをやむをえず同道させながらも期待に胸膨らませてネオ・トキオに降り立った彼を待っていたのは、命さえあずけたパートナー、愛してやまないシャルル・アジャンだった。特殊工作員であるシャルルの登場に、今回の舞台が危険と秘められた計画に満ちているのを察したハルキだが……。
目次
■ 紅葉最前線
■ ボディガード
あとがき
■ ボディガード
あとがき
抄録
「いや、だからさ……いくら足がないからって、何もポルシェの新車買わなくても……ポルシェじゃなくたって、もっと使いやすくてリーズナブルな車種が、日本にもいっぱいあるのに……」
だからなんだっていうんだろう。こいつにそんな理屈が通るわけのないことは、俺がいちばんよく知っているはずなのに。
「……日本はな、道が狭いんだ」
ハンドルに肘を乗せて、さらに頬杖をついて、シャルルはぽつりとそう言った。
「もともと国土が狭いところへもってきて、人口密度が極端に高い。地代が高いのはもちろん、ハイウェイですら上下四車線しかない。だから、日本で車に乗ろうと思ったら、小回りのきく車種でなければだめなんだ。さらにだ、我々がこれから行くところは山の中ときている。当然、山道を走るためには馬力のある車が望ましい。むろん、スピードは出ないよりは出た方がいいし、車体はコンパクトでもシートは座り心地がよくなければ困る。これらすべての条件を満たす車を、おまえはこれ以外に考えつくか?」
理路整然と言って、シャルルはじっと俺を見つめた。確かに、筋は通ってるような気もするけど……なんかヘンだな。どこか間違ってるような気がするんだけど……でも、これ以上ぐずぐず言ってたらあとでどんな“説得”をされるかわかったものではないので、俺はふるふると首をふりながら口もとにひきつった笑みを浮かべる。
それこそ、そういう日本の風土に合った車はたくさんあると思うんだけど……まあ、しかたない。今さら何を言っても無駄だ。シャルルが選んだのはこの車なんだから。
「……けちなまねはしたくなかった。せっかく、おまえと箱根に行くんだから」
狭い車内で猫のようにするりと身を寄せてきながら、シャルルは俺の耳もとでそう囁いた。ばっ……ばかっ! そんなさりげないふりして、人の耳たぶ噛むなあ!
「……気に入ったか」
確認するみたいにもう一度囁かれて、俺はしょうことなしにこくこくと頷いた。だって、そう言わないとあとが怖いんだもん。まあ、確かに……一概に、いやなだけでもなかったんだけどね。
「荷物は後ろに置け。邪魔だ」
頷く俺を見て、意味ありげににやりと含み笑いをしながら――シャルルは後部シートを顎でしゃくった。いや、俺もそうしようとは思ったんだけどさ、シャルルのバッグやら大きなカーゴボックスやら、荷物が山積みになってるので遠慮してたんだ。
「……いいよ。膝に乗せてるから」
そう大きくもなかったし、俺は膝の上でボストンバッグを抱え直した。シャルルが、再びちらりと俺を見やる。
「……私が邪魔なんだ」
……は?
「……これではさわれないだろう」
すっと、また身を寄せてきたと思ったら――さもあたりまえのように、奴は俺の左の膝頭に右手をすべらせやがった。なっ、なっ……なんつーことするんだっ!
「……な?」
にっこりと――水も滴るようなほほえみを浮かべながらそう言って、シャルルは俺のバッグをとり上げるなり、さっさと後部シートに放り投げる。ううう、どうしよう。
もしかして……こいつ、ものすごく機嫌いいんじゃないのか。ポルシェも大荷物も、俺を驚かせるためのセッティングじゃないのか。てことは……これだけですむはずは、ない。
「そ、それはそうと……ずいぶんな荷物だな。何が入ってるんだ、このボックス?」
気をとり直して、俺は後部シートに目をやりながらそう言った。サングラスをかけ直し、今まさにアクセルを踏みこもうとしていたシャルルは、俺を見てにやりと笑う。
「ああ……酒だ」
酒? そんなもん、宿で頼めばいいもんじゃないのか。そりゃあ、ふたり揃ってウワバミな俺たちのこと、持ちこみした方が安上がりなのは必至だけど、たかだか二泊三日の旅行にポルシェの新車買っちまうような奴が、こんなとこでやりくり上手になってどーすんだっての。だいたい、そもそも持ちこみさせてくれる旅館なんて聞いたことないぞ。まったく、非凡な人間の考えるこたあ理解に苦しむぜ。
「宿の方が、アルコール類をあまり置いていないらしくてな。その代わり持ちこみも自由なので、お言葉に甘えて自給自足させてもらうことにしたというわけだ」
そう言って、シャルルは勢いよくアクセルを踏みこんだ。エンジンはすばらしい立ち上がりを見せ、ポルシェはすべるようにスタートする。
走り出すと同時に、オートハーネスが伸びてきて優しく身体(からだ)をシートに固定する。まるで、しなやかな女の腕に抱きとめられたみたいだ。
しかし……変わってんな。アルコール類があまり置いてなくて、持ちこみ自由の宿かあ。リゾートスパというよりは、温泉療法施設みたいなとこかな。
「ふうん。……で、何?」
*この続きは製品版でお楽しみください。
だからなんだっていうんだろう。こいつにそんな理屈が通るわけのないことは、俺がいちばんよく知っているはずなのに。
「……日本はな、道が狭いんだ」
ハンドルに肘を乗せて、さらに頬杖をついて、シャルルはぽつりとそう言った。
「もともと国土が狭いところへもってきて、人口密度が極端に高い。地代が高いのはもちろん、ハイウェイですら上下四車線しかない。だから、日本で車に乗ろうと思ったら、小回りのきく車種でなければだめなんだ。さらにだ、我々がこれから行くところは山の中ときている。当然、山道を走るためには馬力のある車が望ましい。むろん、スピードは出ないよりは出た方がいいし、車体はコンパクトでもシートは座り心地がよくなければ困る。これらすべての条件を満たす車を、おまえはこれ以外に考えつくか?」
理路整然と言って、シャルルはじっと俺を見つめた。確かに、筋は通ってるような気もするけど……なんかヘンだな。どこか間違ってるような気がするんだけど……でも、これ以上ぐずぐず言ってたらあとでどんな“説得”をされるかわかったものではないので、俺はふるふると首をふりながら口もとにひきつった笑みを浮かべる。
それこそ、そういう日本の風土に合った車はたくさんあると思うんだけど……まあ、しかたない。今さら何を言っても無駄だ。シャルルが選んだのはこの車なんだから。
「……けちなまねはしたくなかった。せっかく、おまえと箱根に行くんだから」
狭い車内で猫のようにするりと身を寄せてきながら、シャルルは俺の耳もとでそう囁いた。ばっ……ばかっ! そんなさりげないふりして、人の耳たぶ噛むなあ!
「……気に入ったか」
確認するみたいにもう一度囁かれて、俺はしょうことなしにこくこくと頷いた。だって、そう言わないとあとが怖いんだもん。まあ、確かに……一概に、いやなだけでもなかったんだけどね。
「荷物は後ろに置け。邪魔だ」
頷く俺を見て、意味ありげににやりと含み笑いをしながら――シャルルは後部シートを顎でしゃくった。いや、俺もそうしようとは思ったんだけどさ、シャルルのバッグやら大きなカーゴボックスやら、荷物が山積みになってるので遠慮してたんだ。
「……いいよ。膝に乗せてるから」
そう大きくもなかったし、俺は膝の上でボストンバッグを抱え直した。シャルルが、再びちらりと俺を見やる。
「……私が邪魔なんだ」
……は?
「……これではさわれないだろう」
すっと、また身を寄せてきたと思ったら――さもあたりまえのように、奴は俺の左の膝頭に右手をすべらせやがった。なっ、なっ……なんつーことするんだっ!
「……な?」
にっこりと――水も滴るようなほほえみを浮かべながらそう言って、シャルルは俺のバッグをとり上げるなり、さっさと後部シートに放り投げる。ううう、どうしよう。
もしかして……こいつ、ものすごく機嫌いいんじゃないのか。ポルシェも大荷物も、俺を驚かせるためのセッティングじゃないのか。てことは……これだけですむはずは、ない。
「そ、それはそうと……ずいぶんな荷物だな。何が入ってるんだ、このボックス?」
気をとり直して、俺は後部シートに目をやりながらそう言った。サングラスをかけ直し、今まさにアクセルを踏みこもうとしていたシャルルは、俺を見てにやりと笑う。
「ああ……酒だ」
酒? そんなもん、宿で頼めばいいもんじゃないのか。そりゃあ、ふたり揃ってウワバミな俺たちのこと、持ちこみした方が安上がりなのは必至だけど、たかだか二泊三日の旅行にポルシェの新車買っちまうような奴が、こんなとこでやりくり上手になってどーすんだっての。だいたい、そもそも持ちこみさせてくれる旅館なんて聞いたことないぞ。まったく、非凡な人間の考えるこたあ理解に苦しむぜ。
「宿の方が、アルコール類をあまり置いていないらしくてな。その代わり持ちこみも自由なので、お言葉に甘えて自給自足させてもらうことにしたというわけだ」
そう言って、シャルルは勢いよくアクセルを踏みこんだ。エンジンはすばらしい立ち上がりを見せ、ポルシェはすべるようにスタートする。
走り出すと同時に、オートハーネスが伸びてきて優しく身体(からだ)をシートに固定する。まるで、しなやかな女の腕に抱きとめられたみたいだ。
しかし……変わってんな。アルコール類があまり置いてなくて、持ちこみ自由の宿かあ。リゾートスパというよりは、温泉療法施設みたいなとこかな。
「ふうん。……で、何?」
*この続きは製品版でお楽しみください。
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