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著者プロフィール
真崎 ひかる(まさき ひかる)
11月15日生まれ。蠍座のO型。香川県出身・在住。
11月15日生まれ。蠍座のO型。香川県出身・在住。
解説
北アルプスで山荘の管理人を務める朝陽の前に、死んだ恋人そっくりな、新人山岳警備隊員の塩見が現れる。……せっかく長い月日が記憶を薄めてくれていたのに。やっと、いないことに慣れてきたのに。平穏な生活を望む朝陽の前に突如現れた、無視できない存在。心をかき乱され苛立ちを覚える朝陽だったが、一目ぼれしたとひたむきに想いを寄せてくる塩見に次第に惹かれていく。愛する人を再びなくすことの怖さから、朝陽は塩見を拒み続けるのだが──。
目次
■ 白の彼方へ
■ 青の果てまで
■ 山小屋の怪
あとがき
■ 青の果てまで
■ 山小屋の怪
あとがき
抄録
意外にも、朝陽の言葉に反応したのは塩見だった。
「そんなこと、ないです。朝陽さんは本当に美人です!」
勢いよく顔を上げながら、体育会系の人間が持つ歯切れのいい声でそう言い放った塩見を、立ったままだった朝陽は唖然と見下ろした。
浅田も、珍しくポカンとした顔で塩見を見ている。
「……」
朝陽は、ふらふらとイスに腰を下ろし……テーブルに肘をついて手の中に顔を隠した。
浅田のように冗談交じりではなく、真面目な顔で面と向かって『美人』だと言われたのは初めてだ。
「ッ……ッ…」
なんとか声は噛み殺しているが、肩の震えは誤魔化せないだろう。
朝陽が笑っていることに気づいたのか、塩見は焦ったように言葉を続ける。
「本当ですよっ。俺、こんなにキレイな人、初めて見ました」
本人は一生懸命に言っているのだろうけど、今度は浅田が噴き出した。
「ぶっ…、あっはっはっは! イキナリ一目惚れ宣言か? やれやれ、頑張って口説いてみろ! 朝陽は手強いぞ」
バンバンとテーブルを手のひらで叩きながら、遠慮なく爆笑している。その上、無責任にも塩見を煽る始末だ。
完全にこの事態をおもしろがっている。
「な、なんで浅田さんまで笑うんですか? 俺はただ、本当のことを言っただけで……。一目惚れ…って、本人を目の前にしてそんなこと言わないでくださいよ」
戸惑ったように塩見が言葉を連ねるにつれ、朝陽は胸の中に冷たいものが満ちてくるのを感じた。
塩見の声も、浅田の爆笑も、どこか遠いところから聞こえてくるみたいだ。
見れば見るほど似ている。
でも、性格は慎重で物静かだった彼とは正反対らしい。
……せっかく、長い月日が記憶を薄めてくれていたのに。やっと、いないことに慣れてきたのに。
塩見自身が悪いわけではない。理不尽な逆恨みだとわかっているけれど、突然現れて朝陽の心をかき乱す塩見が憎たらしくなってきた。
「塩見さん、失礼ですけどおいくつですか?」
笑いを引っ込めた朝陽が、深呼吸で息を整えて静かな声で問いかけると、塩見は勢いよくイスから立ち上がった。
「塩見岳(がく)、もうすぐ二十五歳です。上市署の地域課に所属していますが、四月一日づけで山岳警備隊に任命されました。よろしくお願いします」
何度も繰り返したあいさつなのだろう。テープレコーダーを聞かされているみたいな、妙にピシッと整った言葉だ。
……見るからに年下なので、歳を聞いた上で子供扱いをして、冷たく突き放してやるつもりだったのに…なんだかおかしい。
それに、もう一つ引っかかるところがあった。
「塩見…ガク、ってもしかして……」
語尾を濁した朝陽の言葉を継いだのは、浅田だった。
「そうそう、コイツの名前ってまんま塩見岳なんだよ。山の申し子みたいだよなぁ?」
おもしろがっている表情でそう言いながら、クックッと笑った浅田に、塩見は複雑そうな表情を浮かべた。
「いえ…その、最初は違ったんです。両親の離婚で、母方の姓に変わったので…。いくらうちの親父が山好きでも、息子に山の名前をそのままつけるなんてことはしませんよ。……たぶん」
自信のなさそうな、たぶん…というつぶやきと苦笑いは、山が好きだという父を慕っているのだろうと伝わってくる。
山岳警備隊へ足を踏み入れるくらいだから、塩見もかなりの山好きに違いない。
「あ、朝陽さんも山の名前ですよね」
「……字は違うけどね」
記憶に残る彼と、同じことを口にする塩見を見上げて、朝陽はわざと感情を込めずに薄笑いを浮かべた。
人形のようだと形容される自分が、こういう表情を作った時の効果はわかっているつもりだ。
感情のない目が冷たくて、怖い……と。塩見も同じ感想を抱くだろう。
「…それで、塩見くんはおれにどうしてもらいたいのかな? 姿形だけを褒められても、あまりいい気分じゃないんだけど」
こうして突き放す言い方をしておけば、これ以上近づこうなどと思わないはずだ。
朝陽は、常に心が波立つことのない、平穏な日常を愛していた。塩見のような、見るからに熱血なタイプに振り回されるのは、ごめんだ。
「すみません……。そう言われても、仕方がないですよね」
*この続きは製品版でお楽しみください。
「そんなこと、ないです。朝陽さんは本当に美人です!」
勢いよく顔を上げながら、体育会系の人間が持つ歯切れのいい声でそう言い放った塩見を、立ったままだった朝陽は唖然と見下ろした。
浅田も、珍しくポカンとした顔で塩見を見ている。
「……」
朝陽は、ふらふらとイスに腰を下ろし……テーブルに肘をついて手の中に顔を隠した。
浅田のように冗談交じりではなく、真面目な顔で面と向かって『美人』だと言われたのは初めてだ。
「ッ……ッ…」
なんとか声は噛み殺しているが、肩の震えは誤魔化せないだろう。
朝陽が笑っていることに気づいたのか、塩見は焦ったように言葉を続ける。
「本当ですよっ。俺、こんなにキレイな人、初めて見ました」
本人は一生懸命に言っているのだろうけど、今度は浅田が噴き出した。
「ぶっ…、あっはっはっは! イキナリ一目惚れ宣言か? やれやれ、頑張って口説いてみろ! 朝陽は手強いぞ」
バンバンとテーブルを手のひらで叩きながら、遠慮なく爆笑している。その上、無責任にも塩見を煽る始末だ。
完全にこの事態をおもしろがっている。
「な、なんで浅田さんまで笑うんですか? 俺はただ、本当のことを言っただけで……。一目惚れ…って、本人を目の前にしてそんなこと言わないでくださいよ」
戸惑ったように塩見が言葉を連ねるにつれ、朝陽は胸の中に冷たいものが満ちてくるのを感じた。
塩見の声も、浅田の爆笑も、どこか遠いところから聞こえてくるみたいだ。
見れば見るほど似ている。
でも、性格は慎重で物静かだった彼とは正反対らしい。
……せっかく、長い月日が記憶を薄めてくれていたのに。やっと、いないことに慣れてきたのに。
塩見自身が悪いわけではない。理不尽な逆恨みだとわかっているけれど、突然現れて朝陽の心をかき乱す塩見が憎たらしくなってきた。
「塩見さん、失礼ですけどおいくつですか?」
笑いを引っ込めた朝陽が、深呼吸で息を整えて静かな声で問いかけると、塩見は勢いよくイスから立ち上がった。
「塩見岳(がく)、もうすぐ二十五歳です。上市署の地域課に所属していますが、四月一日づけで山岳警備隊に任命されました。よろしくお願いします」
何度も繰り返したあいさつなのだろう。テープレコーダーを聞かされているみたいな、妙にピシッと整った言葉だ。
……見るからに年下なので、歳を聞いた上で子供扱いをして、冷たく突き放してやるつもりだったのに…なんだかおかしい。
それに、もう一つ引っかかるところがあった。
「塩見…ガク、ってもしかして……」
語尾を濁した朝陽の言葉を継いだのは、浅田だった。
「そうそう、コイツの名前ってまんま塩見岳なんだよ。山の申し子みたいだよなぁ?」
おもしろがっている表情でそう言いながら、クックッと笑った浅田に、塩見は複雑そうな表情を浮かべた。
「いえ…その、最初は違ったんです。両親の離婚で、母方の姓に変わったので…。いくらうちの親父が山好きでも、息子に山の名前をそのままつけるなんてことはしませんよ。……たぶん」
自信のなさそうな、たぶん…というつぶやきと苦笑いは、山が好きだという父を慕っているのだろうと伝わってくる。
山岳警備隊へ足を踏み入れるくらいだから、塩見もかなりの山好きに違いない。
「あ、朝陽さんも山の名前ですよね」
「……字は違うけどね」
記憶に残る彼と、同じことを口にする塩見を見上げて、朝陽はわざと感情を込めずに薄笑いを浮かべた。
人形のようだと形容される自分が、こういう表情を作った時の効果はわかっているつもりだ。
感情のない目が冷たくて、怖い……と。塩見も同じ感想を抱くだろう。
「…それで、塩見くんはおれにどうしてもらいたいのかな? 姿形だけを褒められても、あまりいい気分じゃないんだけど」
こうして突き放す言い方をしておけば、これ以上近づこうなどと思わないはずだ。
朝陽は、常に心が波立つことのない、平穏な日常を愛していた。塩見のような、見るからに熱血なタイプに振り回されるのは、ごめんだ。
「すみません……。そう言われても、仕方がないですよね」
*この続きは製品版でお楽しみください。
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