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著者プロフィール
梅津 裕一(うめつ ゆういち)
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
解説
ひきこもりや素行の悪い児童を更生する野外キャンプに参加した、互いに名前も顔も知らない少年少女十二名。だが、彼らを待ち受けていたのは、なまぬるい社会復帰プログラムなどではなく、現代日本の常識では考えられない過酷な〈難民キャンプ〉生活だった。
何も聞かされず山奥の廃校に連れてこられた十二人は、到着早々、スタッフを名乗る軍服姿の怪しい大人たちから奇妙な説明を受ける──ここは我々『白国』兵士が守る白国領土内の難民キャンプであり、君たちは『黒国』の侵攻によって国を追われた『青国』『赤国』の難民であると。用意されていたキャンプの〈設定〉は冗談めいていたが、戸惑っているうちに全員くじを引かされ、気づけば六人ずつ青国と赤国に組分けさせられていた。馬鹿げたプログラムと思いながらも遊び半分で付き合う参加児童たち。ところが、水と食料と情報が制限され、両国の対立をあおる事件が続くと、彼らは自分が日本人であったことも忘れ、青国人、赤国人としていがみ合うようになる。それはやがて、民族差別、民族対立を生み、さらには血で血を洗う○○○○へと……。植え込まれた民族意識に躍らされる十二名の運命は? そして、この狂気じみたキャンプの目的はいったい?
人はここまで残酷になれる……鬼才・梅津裕一が放つ史上最凶のバトルロイヤル・ホラー、上巻!
何も聞かされず山奥の廃校に連れてこられた十二人は、到着早々、スタッフを名乗る軍服姿の怪しい大人たちから奇妙な説明を受ける──ここは我々『白国』兵士が守る白国領土内の難民キャンプであり、君たちは『黒国』の侵攻によって国を追われた『青国』『赤国』の難民であると。用意されていたキャンプの〈設定〉は冗談めいていたが、戸惑っているうちに全員くじを引かされ、気づけば六人ずつ青国と赤国に組分けさせられていた。馬鹿げたプログラムと思いながらも遊び半分で付き合う参加児童たち。ところが、水と食料と情報が制限され、両国の対立をあおる事件が続くと、彼らは自分が日本人であったことも忘れ、青国人、赤国人としていがみ合うようになる。それはやがて、民族差別、民族対立を生み、さらには血で血を洗う○○○○へと……。植え込まれた民族意識に躍らされる十二名の運命は? そして、この狂気じみたキャンプの目的はいったい?
人はここまで残酷になれる……鬼才・梅津裕一が放つ史上最凶のバトルロイヤル・ホラー、上巻!
抄録
ブラッディがつぶやいた。
あるいはこちらの味方をしてくれるのかとも思ったが、彼の言葉の異常さに気づいた。
なぜわざわざ「生きている相手」などと指摘する必要があるのだろうか。
クリムゾンがラテン系の伊達男のように肩をすくめた。
「ブラッディ、俺はあんたと違ってこれでも『健全な性欲の持ち主』なんだ」
つまりブラッディは「不健全な性欲の持ち主」ということになる。
「お前らにも警告しておいてやるよ」
クリムゾンが口の端を吊り上げた。
「ブラッディ……こいつ、なかなかすごいよ。お前ら、昔あった事件、覚えているか? 小学五年生が家族四人全員惨殺したって……」
そのニュースはスカイの記憶に鮮明に残っていた。年々、凶悪化していると言われる少年犯罪だが、世間に与えた衝撃という意味でそれは別格だった。
当時小学五年生の少年が、両親と姉、妹を殺し、解体したのである。現場で鑑識作業を行った警察職員や刑事たちのなかには、いまでも精神の失調を訴えカウンセリングを受けている者もいるという。現場は血の池地獄としかいいようのない光景だったらしい。
だが少年が刑事罰を受けることはなかった。
現行の少年法では、十四歳未満の少年犯罪を罰することはできない。そのため少年法の改正を含むさまざまな議論が起きたが、結局、少年がそれからどこで暮らしているかは一部の人間以外にはわからないままだ。
もちろんどんな顔をしているかも、名前も、少年法により公表されることはなかった。
「まいったよなあ……俺より『レベルの高い』奴が同じ国にいるんだもん。ブラッディが、その犯人なんだってよ」
クリムゾンの科白にスカイは思わず唾を呑み込んだ。事実だとすれば危険、などというなまやさしい言葉では片づけられない相手だ。
「おまけに警察とかは、あんまりヤバいってんでマスコミに発表してないけど、ブラッディの野郎……姉貴と妹の死体と、やっちゃったんだってよ」
かすかにクリムゾンの顔が引きつったのを、スカイは見逃さなかった。
自分で殺した実の姉妹と、ブラッディは性行為をしたのだ。しかも小学五年生のときに。
はったりかもしれないが、ブラッディの洞穴のような両の瞳を見ていると、この少年ならそれくらいのことはやりかねない、という気がしてくる。
中学一年生のようにも、あるいは発育の遅い高校生のようにも見える。得体の知れぬ存在、という表現がぴったりだった。常に一緒にいる赤国の者たちは、無意識のうちにブラッディを警戒していることだろう。
*この続きは製品版でお楽しみください。
あるいはこちらの味方をしてくれるのかとも思ったが、彼の言葉の異常さに気づいた。
なぜわざわざ「生きている相手」などと指摘する必要があるのだろうか。
クリムゾンがラテン系の伊達男のように肩をすくめた。
「ブラッディ、俺はあんたと違ってこれでも『健全な性欲の持ち主』なんだ」
つまりブラッディは「不健全な性欲の持ち主」ということになる。
「お前らにも警告しておいてやるよ」
クリムゾンが口の端を吊り上げた。
「ブラッディ……こいつ、なかなかすごいよ。お前ら、昔あった事件、覚えているか? 小学五年生が家族四人全員惨殺したって……」
そのニュースはスカイの記憶に鮮明に残っていた。年々、凶悪化していると言われる少年犯罪だが、世間に与えた衝撃という意味でそれは別格だった。
当時小学五年生の少年が、両親と姉、妹を殺し、解体したのである。現場で鑑識作業を行った警察職員や刑事たちのなかには、いまでも精神の失調を訴えカウンセリングを受けている者もいるという。現場は血の池地獄としかいいようのない光景だったらしい。
だが少年が刑事罰を受けることはなかった。
現行の少年法では、十四歳未満の少年犯罪を罰することはできない。そのため少年法の改正を含むさまざまな議論が起きたが、結局、少年がそれからどこで暮らしているかは一部の人間以外にはわからないままだ。
もちろんどんな顔をしているかも、名前も、少年法により公表されることはなかった。
「まいったよなあ……俺より『レベルの高い』奴が同じ国にいるんだもん。ブラッディが、その犯人なんだってよ」
クリムゾンの科白にスカイは思わず唾を呑み込んだ。事実だとすれば危険、などというなまやさしい言葉では片づけられない相手だ。
「おまけに警察とかは、あんまりヤバいってんでマスコミに発表してないけど、ブラッディの野郎……姉貴と妹の死体と、やっちゃったんだってよ」
かすかにクリムゾンの顔が引きつったのを、スカイは見逃さなかった。
自分で殺した実の姉妹と、ブラッディは性行為をしたのだ。しかも小学五年生のときに。
はったりかもしれないが、ブラッディの洞穴のような両の瞳を見ていると、この少年ならそれくらいのことはやりかねない、という気がしてくる。
中学一年生のようにも、あるいは発育の遅い高校生のようにも見える。得体の知れぬ存在、という表現がぴったりだった。常に一緒にいる赤国の者たちは、無意識のうちにブラッディを警戒していることだろう。
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