和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>白衣
解説
眞鍋組の影の実働部隊に所属する功刀淳ことエビは、一度も失敗したことがない男と言われている。そんなエビに、ある指令がくだった。それは、アラブの皇太子カーミルに誤って売った日本画の贋作を本物とすり替える、というものだ。ところが、常識知らずのアラブの皇太子の言動に、さすがのエビも振り回されて、恋されて!?
抄録
眞鍋の昇り龍に忠誠を誓い、サメが率いる影の実働部隊の一員になった時に『エビ』という名をもらった。名付け親は影の実働部隊を率いるサメだが、さして深い意味はないらしい。功刀淳は自分に与えられた名前を素直に受け入れた。
以来、エビとしての人生を歩んでいる。
六月初旬の深夜、エビは影の実働部隊の一員であるイワシとともに大型のクルーザーで海に出る。
日本海はどこか寂しくて物悲しい。特に夜はえも言われぬ虚しさが込み上げてきて、エビは荒い波に身を投げたくなる。だが、今夜、海の底に沈めるものはエビの華奢な身体ではない。
大型のクルーザーには人生の幕を下ろした夫婦が並んでいた。不夜城を牛耳る眞鍋の昇り龍に逆らった者たちの哀れな末路だ。
「馬鹿な奴らだ」
エビが甘い顔立ちを歪めて独り言のように呟くと、伏し目がちのイワシは軽く頷いた。
「眞鍋の昇り龍に逆らうなんて、正気の沙汰とは思えん。自分で死刑執行書にサインをしたようなもんだ」
闇社会に彗星の如く出現した眞鍋組の昇り龍こと橘高清和は苛烈だ。邪魔者は消せ、という男である。自分に歯向かう者はカタギであっても容赦なかった。清和の主義をエビは否定しない。綺麗事ですむ世界ではないからだ。
「死にたがっていると思ったが、死にたくなかったらしいな」
エビの脳裏に醜い記憶が蘇ってげんなりすると、イワシは肩を竦めた。
「警察を呼ぶぞ、には呆れた」
闘病中の組長に代わり、現在、眞鍋組の頭に立っているのは組長代行の清和だ。すでに切れ者として名を馳せているが、いかんせん、若すぎる。十九歳の清和を侮り、仕掛けてくる輩は少なくなかった。どこの暴力団の息もかかっていない一般人でさえ、時に清和に戦いを挑み、密かに裏で暴利を貪ろうとする。
新しい眞鍋組を模索している清和は、つい最近、倒産寸前の小さな商事会社を見込んで融資した。白髪の目立つ社長は涙を流して喜び、再建に向けて努力した。……とばかり思っていたのだが。
こともあろうに、社長は清和から投入された資金で個人名義の証券を購入し、私腹を肥やした。かつての企業家の誇りはどこに行ってしまったのか、会社が持っていた顧客の個人情報も売り、それ相応の金を手に入れていた。
社長の妻である副社長は弱みを握っていた若い女性社員に、眞鍋組の影をちらつかせて売春を強要した。
それも一度や二度ではない。何度も売春を強要されて、若い女性社員は心身ともに疲弊してしまった。
副社長は自社とわからないように細工をしたうえで、社内の女子トイレや女子更衣室に隠しカメラを設置して、若い女性社員を盗撮し、そちらの関係者に売った。早くもアダルトサイトでは評判になっている。
安いコーヒー豆を買い求め、値の張るカフェイン抜きのコーヒーとして販売しようと計画していた。
これらはすべて清和が資金を投資して、半月もたたないうちにあった出来事だ。
聡い清和が気づかないはずがない。三日前、命を受けてエビが速攻で調べた。すぐに社長夫妻の悪事の証拠を掴み、包み隠さず報告した。結果、悲惨な結末を迎えたのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
以来、エビとしての人生を歩んでいる。
六月初旬の深夜、エビは影の実働部隊の一員であるイワシとともに大型のクルーザーで海に出る。
日本海はどこか寂しくて物悲しい。特に夜はえも言われぬ虚しさが込み上げてきて、エビは荒い波に身を投げたくなる。だが、今夜、海の底に沈めるものはエビの華奢な身体ではない。
大型のクルーザーには人生の幕を下ろした夫婦が並んでいた。不夜城を牛耳る眞鍋の昇り龍に逆らった者たちの哀れな末路だ。
「馬鹿な奴らだ」
エビが甘い顔立ちを歪めて独り言のように呟くと、伏し目がちのイワシは軽く頷いた。
「眞鍋の昇り龍に逆らうなんて、正気の沙汰とは思えん。自分で死刑執行書にサインをしたようなもんだ」
闇社会に彗星の如く出現した眞鍋組の昇り龍こと橘高清和は苛烈だ。邪魔者は消せ、という男である。自分に歯向かう者はカタギであっても容赦なかった。清和の主義をエビは否定しない。綺麗事ですむ世界ではないからだ。
「死にたがっていると思ったが、死にたくなかったらしいな」
エビの脳裏に醜い記憶が蘇ってげんなりすると、イワシは肩を竦めた。
「警察を呼ぶぞ、には呆れた」
闘病中の組長に代わり、現在、眞鍋組の頭に立っているのは組長代行の清和だ。すでに切れ者として名を馳せているが、いかんせん、若すぎる。十九歳の清和を侮り、仕掛けてくる輩は少なくなかった。どこの暴力団の息もかかっていない一般人でさえ、時に清和に戦いを挑み、密かに裏で暴利を貪ろうとする。
新しい眞鍋組を模索している清和は、つい最近、倒産寸前の小さな商事会社を見込んで融資した。白髪の目立つ社長は涙を流して喜び、再建に向けて努力した。……とばかり思っていたのだが。
こともあろうに、社長は清和から投入された資金で個人名義の証券を購入し、私腹を肥やした。かつての企業家の誇りはどこに行ってしまったのか、会社が持っていた顧客の個人情報も売り、それ相応の金を手に入れていた。
社長の妻である副社長は弱みを握っていた若い女性社員に、眞鍋組の影をちらつかせて売春を強要した。
それも一度や二度ではない。何度も売春を強要されて、若い女性社員は心身ともに疲弊してしまった。
副社長は自社とわからないように細工をしたうえで、社内の女子トイレや女子更衣室に隠しカメラを設置して、若い女性社員を盗撮し、そちらの関係者に売った。早くもアダルトサイトでは評判になっている。
安いコーヒー豆を買い求め、値の張るカフェイン抜きのコーヒーとして販売しようと計画していた。
これらはすべて清和が資金を投資して、半月もたたないうちにあった出来事だ。
聡い清和が気づかないはずがない。三日前、命を受けてエビが速攻で調べた。すぐに社長夫妻の悪事の証拠を掴み、包み隠さず報告した。結果、悲惨な結末を迎えたのだ。
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