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解説
――眞鍋組の男は組長に従って男と結婚するべきだ!?
明和病院に勤める美貌の内科医・氷川諒一の恋人は、幼い頃から知っている寡黙で愛しい一面と、暴力団眞鍋組組長の顔を持つ橘高清和だ。藤堂組との抗争が一段落ついた眞鍋組の一行は、ホストクラブ『ジュリアス』を訪ねる。そこで男姐がいる眞鍋組組員の知られざる苦悩が明らかになる。一方で、清和の右腕・リキの過去を知る男が現れた!? シリーズ第7巻。
明和病院に勤める美貌の内科医・氷川諒一の恋人は、幼い頃から知っている寡黙で愛しい一面と、暴力団眞鍋組組長の顔を持つ橘高清和だ。藤堂組との抗争が一段落ついた眞鍋組の一行は、ホストクラブ『ジュリアス』を訪ねる。そこで男姐がいる眞鍋組組員の知られざる苦悩が明らかになる。一方で、清和の右腕・リキの過去を知る男が現れた!? シリーズ第7巻。
抄録
都内でも総合病院として名の通った明和病院に勤務する内科医の氷川諒一は、どんなに忙しくても患者には優しく接するように心がけている。しかし今、日本人形のようだと絶賛される氷川の顔は引き攣りまくり、患者に対する声音は刺々しかった。
「どうなさいました?」
氷川は怒鳴りたいのをぐっと堪え、目の前で苦しそうに頭を押さえている若い患者を睨んだ。
「頭が痛くて、腹も痛くて、咳も出るみたいっス」
指定暴力団・眞鍋組の若き精鋭として売り出し中のショウこと宮城翔は、下手な芝居を氷川の前で披露した。今朝、氷川を黒塗りのベンツで病院に送ってきた送迎係はほかでもないショウだ。いつもと同じようにショウは溌剌としていた。
「風邪薬でも出しておきましょう。お大事に」
仮病だとわかりきっているショウに薬を出す必要などないが、何もしないわけにはいかない。氷川はショウに退室するように促したが、彼は不思議そうな顔で首を傾げた。
「聴診器当ててお医者さんごっこしねぇんスか?」
聴診器を胸に当てろとばかりに、ショウはシャツを自分の手で軽く上げた。
「な、何がお医者さんごっこ……」
氷川は声を荒らげかけたがすぐに我に返った。こんなところでショウを怒鳴るわけにはいかない。
「え? だって、そうでしょう?」
「無用です」
氷川は冷たい声でショウに答えると、若い看護師を呼んで処方箋を渡した。
ショウは名残惜しそうだが、すごすごと診察室から出ていく。
氷川は大きな溜め息をつきながら、次の患者のカルテを見た。新患名に覚えはないが二十歳の男性ということにいやな予感が走る。案の定、新患として診察室に入ってきたのは眞鍋組の構成員である卓だった。クラッシュ加工が施されているアバクロンビー&フィッチのジーンズを穿いている卓に、ヤクザの匂いはまったくしない。
「失礼します」
卓は苦しそうに腹部を押さえているが、仮病だということはわかりきっている。このまま帰らせたいが、氷川はぐっと堪えて医者の顔で接した。
「どうされました?」
「ついさっきから腹が痛くて……」
演技派なのか、腹痛を訴える卓の額には汗が噴き出ているし、顔の歪み具合も見事だった。ショウよりもずっと病人らしい。卓の演技力を皮肉交じりに褒めてやりたい気分になってくるが耐えた。
「整腸剤でも出しておきましょう。お大事に」
氷川は卓を横目で睨みつけてから処方箋を書くと、また若い看護師を呼んだ。
卓はショウのようには文句を一言も漏らさずに、そそくさと診察室から出ていく。氷川の怒りに燃える心の内がわかるからだろう。賢明な態度である。
明和病院は高級住宅街が広がる小高い丘に建っているので、患者の大半は優雅なブルジョワだ。ジーンズ姿の若々しい青年の患者など珍しい。それなのに、氷川の外来診療は青木のように若々しい青年患者が多かった。
なんてことはない、眞鍋組の若い構成員たちがこぞって氷川の診察を指名しているのだ。その理由はただひとつ、眞鍋組の二代目組長の妻と遇されている氷川の護衛である。もっと詳しく言えば、氷川の見張りだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「どうなさいました?」
氷川は怒鳴りたいのをぐっと堪え、目の前で苦しそうに頭を押さえている若い患者を睨んだ。
「頭が痛くて、腹も痛くて、咳も出るみたいっス」
指定暴力団・眞鍋組の若き精鋭として売り出し中のショウこと宮城翔は、下手な芝居を氷川の前で披露した。今朝、氷川を黒塗りのベンツで病院に送ってきた送迎係はほかでもないショウだ。いつもと同じようにショウは溌剌としていた。
「風邪薬でも出しておきましょう。お大事に」
仮病だとわかりきっているショウに薬を出す必要などないが、何もしないわけにはいかない。氷川はショウに退室するように促したが、彼は不思議そうな顔で首を傾げた。
「聴診器当ててお医者さんごっこしねぇんスか?」
聴診器を胸に当てろとばかりに、ショウはシャツを自分の手で軽く上げた。
「な、何がお医者さんごっこ……」
氷川は声を荒らげかけたがすぐに我に返った。こんなところでショウを怒鳴るわけにはいかない。
「え? だって、そうでしょう?」
「無用です」
氷川は冷たい声でショウに答えると、若い看護師を呼んで処方箋を渡した。
ショウは名残惜しそうだが、すごすごと診察室から出ていく。
氷川は大きな溜め息をつきながら、次の患者のカルテを見た。新患名に覚えはないが二十歳の男性ということにいやな予感が走る。案の定、新患として診察室に入ってきたのは眞鍋組の構成員である卓だった。クラッシュ加工が施されているアバクロンビー&フィッチのジーンズを穿いている卓に、ヤクザの匂いはまったくしない。
「失礼します」
卓は苦しそうに腹部を押さえているが、仮病だということはわかりきっている。このまま帰らせたいが、氷川はぐっと堪えて医者の顔で接した。
「どうされました?」
「ついさっきから腹が痛くて……」
演技派なのか、腹痛を訴える卓の額には汗が噴き出ているし、顔の歪み具合も見事だった。ショウよりもずっと病人らしい。卓の演技力を皮肉交じりに褒めてやりたい気分になってくるが耐えた。
「整腸剤でも出しておきましょう。お大事に」
氷川は卓を横目で睨みつけてから処方箋を書くと、また若い看護師を呼んだ。
卓はショウのようには文句を一言も漏らさずに、そそくさと診察室から出ていく。氷川の怒りに燃える心の内がわかるからだろう。賢明な態度である。
明和病院は高級住宅街が広がる小高い丘に建っているので、患者の大半は優雅なブルジョワだ。ジーンズ姿の若々しい青年の患者など珍しい。それなのに、氷川の外来診療は青木のように若々しい青年患者が多かった。
なんてことはない、眞鍋組の若い構成員たちがこぞって氷川の診察を指名しているのだ。その理由はただひとつ、眞鍋組の二代目組長の妻と遇されている氷川の護衛である。もっと詳しく言えば、氷川の見張りだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。




















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