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著者プロフィール
天花寺 悠(てんげじ はるか)
兵庫県出身。星座:天秤座。血液型:A型。趣味:読書。本を読んでいる時が一番幸せ。誕生日:10月20日。
兵庫県出身。星座:天秤座。血液型:A型。趣味:読書。本を読んでいる時が一番幸せ。誕生日:10月20日。
解説
祖母に別荘の掃除を頼まれた高校生の高宮翼は、そこで見つけた大きな鏡に吸い込まれ、気が付くとそこは月鏡の国だった!? 訳もわからぬまま自分そっくりな日鏡の国の王女・絵莉に、月鏡の国の王子とのお見合いの代役を押し付けられた翼は、戸惑いながらも両国間の和平の為に王女になりすます。不安げな翼に、月鏡の近衛隊・リオンは婚約に依存はないのかと問うが、状況を懸念した翼は『婚約の儀』を交わす決意をして……!?
※ 本文にイラストは含まれていません。
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目次
イジワル騎士と月夜にキス!
あとがき
あとがき
抄録
「だぁぁ、違う! 確かに、絵莉も――本当はショートカットみたいだけど。そういう問題じゃなくて! 僕はれっきとした男なの、オ・ト・コ!」
業を煮やした翼はままよとばかりに背中のドレスのファスナーに手をやり、ジャッと下ろす。
ケンカを売る勢いで上半身を露わにした翼に、思わずといったように身を乗り出した王子が半ば呆然と呟く。
「姫が――男……」
さすがに事態を理解したのか、リオンの表情もさっと険しくなった。
「これは――どういうことですか?」
その鋭い眼光に、途端にそれまでの勢いを失いながら、翼は首をすくめる。
「だから……言ったじゃないか。僕はこの世界の人間じゃないんだ。――なんかの手違いで、鏡の向こうからこっちに来ちゃったんだよ」
「!」
途端に、二人は小さく目配せをしたようだった。
黒い髪を掻き上げ、すっと姿勢を正したリオンが油断なく目を光らせる。
「――鏡の向こうから?」
「うん……そう」
その場の言い逃れは許さないといった、刃のような雰囲気に、蛇に睨まれた蛙の気分になりながら、うなだれた翼は首を揺らした。
翼は古びた別荘の屋根裏で掃除をしていたのだ。そこで縁に月の紋章の彫られた鏡を見つけて、何気なくそれに手を伸ばしたら、身体ごと吸い込まれてしまって。
しどろもどろに説明した翼に、ゆっくりと近づいてきたリオンは、アメジストの瞳を瞬かせた。
「なるほど……鏡の向こうの世界は実在すると?」
「っていうか、僕にしてみれば、僕のいた世界が唯一で、鏡の向こうにこんな国があるなんてことの方が信じられないし」
榛色の瞳を潤ませて、翼は掌に爪を立てる。
(ひょっとして、これがパラレルワールドってやつなのかな)
だとすれば、絵莉と自分が瓜二つなのも説明がつく気がする。この世界の自分が絵莉だというのも、なんだか複雑だが。
「……」
「……」
「……」
三者三様、それぞれの物思いに沈み、部屋の中に沈黙が落ちる。と――。
ドン、ドン、ドン。
外側から、控えの間の扉が激しく叩かれる音がした。
『王子、何やら叫び声がしましたが、ご無事ですか?』
弾かれたように肩を跳ね上げた三人は、無言で顔を見合わせる。
一拍遅れて、さっとドアに寄った王子が低い声で言い放った。
「問題ない――私は無事だ!」
一方、背筋を緊張させたリオンは、きりりと眉を上げ、翼の方に向き直る。
「――話は分かりました。そういうことでしたら、あなたは急ぎ最上階の鏡の間へ向かいなさい。そこの右手の扉が反対側の廊下につながっています」
「! 信じてくれるの……!?」
翼の肩を抱くようにして早口で囁いたリオンに、翼はぱっと表情を明るくした。
「それは後ほど、自分の目で判断することといたします。私も追って鏡の間へ向かいますから」
「う、うん」
そっけなく肩をすくめられて、脱いでいたドレスの身頃をもう一度もそもそと着込みながら、翼は真剣な表情で頷く。
「――とにかく、ここで姫が替え玉だったとばれるのはうまくない。この縁談はあなたが考えているより、ずっと意味のあるものです」
『そうして、隙あらばこの縁談をなきものにしようと画策している輩が多いのです』
リオンが険しい顔で何やら呟いたが、独り言のようなそれの後半部分は聞き取れなかった。
「リオン……!」
不意に、扉の側の王子が警告を発するように鋭い声を上げる。
気づけば、王子が取り繕ったにもかかわらず、小部屋一つ隔てたドアの外は、ものものしい人の気配でずいぶんと騒がしくなってきていた。
小さく顎を引いたリオンが、ぐいと翼の背中を押す。
「行け! ここは私が食い止める……!」
「う、うん……!」
頬を紅潮させた翼は、指示された扉をくぐり、するりと部屋から忍び出ると、長い無人の廊下を駆け出した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
業を煮やした翼はままよとばかりに背中のドレスのファスナーに手をやり、ジャッと下ろす。
ケンカを売る勢いで上半身を露わにした翼に、思わずといったように身を乗り出した王子が半ば呆然と呟く。
「姫が――男……」
さすがに事態を理解したのか、リオンの表情もさっと険しくなった。
「これは――どういうことですか?」
その鋭い眼光に、途端にそれまでの勢いを失いながら、翼は首をすくめる。
「だから……言ったじゃないか。僕はこの世界の人間じゃないんだ。――なんかの手違いで、鏡の向こうからこっちに来ちゃったんだよ」
「!」
途端に、二人は小さく目配せをしたようだった。
黒い髪を掻き上げ、すっと姿勢を正したリオンが油断なく目を光らせる。
「――鏡の向こうから?」
「うん……そう」
その場の言い逃れは許さないといった、刃のような雰囲気に、蛇に睨まれた蛙の気分になりながら、うなだれた翼は首を揺らした。
翼は古びた別荘の屋根裏で掃除をしていたのだ。そこで縁に月の紋章の彫られた鏡を見つけて、何気なくそれに手を伸ばしたら、身体ごと吸い込まれてしまって。
しどろもどろに説明した翼に、ゆっくりと近づいてきたリオンは、アメジストの瞳を瞬かせた。
「なるほど……鏡の向こうの世界は実在すると?」
「っていうか、僕にしてみれば、僕のいた世界が唯一で、鏡の向こうにこんな国があるなんてことの方が信じられないし」
榛色の瞳を潤ませて、翼は掌に爪を立てる。
(ひょっとして、これがパラレルワールドってやつなのかな)
だとすれば、絵莉と自分が瓜二つなのも説明がつく気がする。この世界の自分が絵莉だというのも、なんだか複雑だが。
「……」
「……」
「……」
三者三様、それぞれの物思いに沈み、部屋の中に沈黙が落ちる。と――。
ドン、ドン、ドン。
外側から、控えの間の扉が激しく叩かれる音がした。
『王子、何やら叫び声がしましたが、ご無事ですか?』
弾かれたように肩を跳ね上げた三人は、無言で顔を見合わせる。
一拍遅れて、さっとドアに寄った王子が低い声で言い放った。
「問題ない――私は無事だ!」
一方、背筋を緊張させたリオンは、きりりと眉を上げ、翼の方に向き直る。
「――話は分かりました。そういうことでしたら、あなたは急ぎ最上階の鏡の間へ向かいなさい。そこの右手の扉が反対側の廊下につながっています」
「! 信じてくれるの……!?」
翼の肩を抱くようにして早口で囁いたリオンに、翼はぱっと表情を明るくした。
「それは後ほど、自分の目で判断することといたします。私も追って鏡の間へ向かいますから」
「う、うん」
そっけなく肩をすくめられて、脱いでいたドレスの身頃をもう一度もそもそと着込みながら、翼は真剣な表情で頷く。
「――とにかく、ここで姫が替え玉だったとばれるのはうまくない。この縁談はあなたが考えているより、ずっと意味のあるものです」
『そうして、隙あらばこの縁談をなきものにしようと画策している輩が多いのです』
リオンが険しい顔で何やら呟いたが、独り言のようなそれの後半部分は聞き取れなかった。
「リオン……!」
不意に、扉の側の王子が警告を発するように鋭い声を上げる。
気づけば、王子が取り繕ったにもかかわらず、小部屋一つ隔てたドアの外は、ものものしい人の気配でずいぶんと騒がしくなってきていた。
小さく顎を引いたリオンが、ぐいと翼の背中を押す。
「行け! ここは私が食い止める……!」
「う、うん……!」
頬を紅潮させた翼は、指示された扉をくぐり、するりと部屋から忍び出ると、長い無人の廊下を駆け出した。
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