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夜の砂漠に護られて【イラスト入り】

夜の砂漠に護られて【イラスト入り】


発行: リブレ
レーベル: ビーボーイノベルズ シリーズ: 夜の砂漠に咲かされて
価格:850pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆7
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著者プロフィール

 遠野 春日(とおの はるひ)
 2月5日生まれの水瓶座。出身地は西方、東京都在住。血液型は「調べてないけどO型のはず」。趣味は舞台鑑賞、習い事はヨガと英会話。

解説

「その事務的で不粋な黒いスーツを脱がせたら、俺が知っているうちで最もそそる男になるだろう」
 砂漠の王国のきらびやかなパーティーで、美貌の日本人青年・開に目を留めた王族のバシール。快楽に泣かせてみたくて、一夜かぎりの甘い情事に誘うが、冷ややかにかわされてしまう。まだ愛や官能を知らないような冷たく冴えた瞳に、バシールは強烈な欲望と征服欲を感じて!? アラブ貴公子のエロティックラブ!!

※ 本作品はイラスト入りです。電子書籍化して配信するにあたり一部単行本と異なる仕様がございます。

目次

夜の砂漠に護られて

抄録

 エレベータでロビー階に下りた開は、そのまままっすぐ部屋に戻るつもりでエントランスに向かった。
 すでに午前零時を過ぎているが、この国の夜は遅くまで賑わうらしく、ラウンジの席は半分以上が埋まり、グラスを触れ合わせる音やさざ波のような話し声、甲高い笑い声などが聞こえた。
 特に意味もなくそちらに気を取られ、開は珍しく上の空で二重になった自動扉を通ってロータリーに出ていた。
「開」
 どこからか名前を呼ばれ、開は一瞬にして神経を尖らせ、声のした方向を見た。
 たった今傍らを通り過ぎたばかりの停車車両のドアが開き、運転席から誰かが降り立った。
 開は警戒を解かずに男の顔を見据え、遅ればせながらそれがカフィーヤを外したバシールだと気がついた。
 誰だかわかった以上、知らぬ振りして立ち去るわけにはいかず、仕方なく開は手招きされるまま濃紺色のポルシェに近づいた。
「こんなところでまでお会いするとは奇遇ですね」
 運転席側には回らず、ロータリーに立ったまま、車を挟んだ形で向き合って話す。
 バシールもまたいったん帰宅してから出てきたらしく、ポロシャツを身に着けたラフな格好だ。
 会場で会ったときには見えていなかった髪があるせいか、正装していたときより若く、男らしい色香が増したように感じる。
「なんだか今夜はすぐに寝つけそうになくて、夜の散歩に出てきた。白状すると、きみの雇い主がこのホテルに滞在していることは知っていたので、万にひとつの確率でもう一度きみに会えたらと考えなかったわけではない」
「そうですか。その程度ならやはり奇遇は奇遇ですね」
「もしかして俺がきみの跡を尾けてきたと思ったのか?」
「ええ、少しだけ」
 開は正直に肯定し、バシールを苦笑いさせた。
「面白いな、きみは。無遠慮で妙に冷静で、見てくれを裏切る剛胆さだ。よかったらちょっと乗らないか。せっかくだから好きな場所まで送ってやろう」
「それが殿下の手ですか」
 にこりともせずに開は失礼を承知で聞く。
「いや。今夜はもうそんな気はしない」
 べつだん怒った様子もなくバシールは答える。だが、開は言葉のとおりには受け取れないなと疑ってかかっていた。車になど乗ったらどこに連れていかれるかわからない。走りだしたが最後、車内は閉じた空間だ。もしくは、兄弟仲のよさからして、ガーリーがいないときにバシールが一人で抜け駆けをするのはなしだという協定ができており、本当に何もされない可能性もなきにしもあらずだが、いずれにせよ開はバシールを信じる気は毛頭なかった。
「せっかくですが、行き先は歩いて五分とかからない場所なので、ご厚意だけ受け取らせていただきます」
「とことん俺は信用されてないみたいだな」
 バシールは参ったようなことを言いながら、少しも堪えていない顔をする。
 開はいっそバシールの自負心の強さに感嘆した。生まれてこのかた誰にも拒絶されてこなかったとすれば、こんなふうにもなれるのだろうか。
「なら、明日の晩、食事でも一緒にどうだ?」
 蹴っても蹴ってもバシールは懲りずに次の提案をしてくる。
 そのうち断るのが嫌になってうっかり承諾してしまいかねないと開は憂慮した。弱気になったら負けということだ。
「明日のことは明日にならないとわかりません」
 開はできるだけ冷淡に躱す。
 はっきり返事をすればまた次の案を出され、次第にノーと言い辛くなるのは想像に難くない。
「なるほどそう来たか」
 バシールにも開の考えが読めたらしい。ニヤリと小気味よさそうに唇の端を上げる。
「ならば、明日また出直そう」
「……よほどお暇とみえますね」
 開は呆れてしまい、ついまた無礼な発言をしてしまった。
「アラブの王族はたいていこんなものだよ」
 それが事実なのかバシールが適当に言っただけなのかわからず、開は相槌を打つ代わりに疲れたような溜息をついた。
 バシールは毎日遊んで暮らせる身分かもしれないが、開は違う。
「お願いですから振り回さないでください」
 開は本気でそれだけバシールに頼むと、さっさと踵を返してその場を離れた。
 なんだか今日は精神的にも肉体的にも疲弊している。
 この国の慣れない気候や時差も少なからず影響しているのだろう。
 春と秋が極端に短く、空気が乾燥した暑い国──嫌いではないが特に好きだとも感じられない。
 蠣崎老の用事が無事に済めば、今後そうそう足を踏み入れる機会もない国だ。
 開はこのときサアドゥッ・ディーンをそんなふうに捉えていた。
 早く日本に帰って久々の休暇を取り、育ての親である叔父夫婦に会いに行きたい。
 めったになくそんなことを考え、日本に思いを馳せる。
 よもやこの先、予期せぬ事態が起きて思いがけない選択をすることになろうとは、開はまるで予測していなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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