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ネメシス

ネメシス

著: 山藍紫姫子
発行: フロンティアワークス
レーベル: ダリア文庫e シリーズ: 背徳の聖者たち
価格:735円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★★★★13
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著者プロフィール

 山藍 紫姫子(やまあい しきこ)
 9月7日水曜日生まれ。乙女座のA型。

解説

 神父服を身に纏い、暗殺の仕事を管理する美しい男・桜庭。そんな桜庭に、組織No.2の鷹司は執着していた。自らに生き写しな片腕・ドールをも使った淫靡な手管で、鷹司は桜庭の身と心を溶かし、2人は恋仲に。蜜月を味わう2人だったが、敵対する組織・ネメシスが不穏な動きを始め……。その上、鷹司が見知らぬ美貌の男と密会していたと知り、桜庭は淫らな身体で彼の愛を試そうと……。

※ 本文にイラストは含まれていません。

目次

ネメシス
あとがき

抄録

「桜庭くん、土師は総帥と出かけたので、わたしが君をマンションへ送ってゆこう」
 電話を終えた鷹司が、『時計の間』にいる桜庭のところへ戻ってきて言った。
 四ノ宮へ来る時にはドールと来たのだが、その後、彼は処理に向かったため、帰りは執事の土師が送ってくれる予定になっていたのだ。
「ありがとうございます」
 礼を言って椅子から立ちあがった桜庭が、落ちこんで元気のない様子なのに気づいた鷹司は、肩に手をかけて身体を引き寄せ、もう一方の手を腰に回して抱きしめた。
「総帥が、しかるべき時期が来るまで自宅で待機していろと言ったのは、君を護るためだ。今夜の幹部会は荒れるだろうからな、君も出席すれば無傷ではいられないだろう」
 タリオと競合する組織ネメシスの存在を、夜刀は上部会以外の幹部には報せていなかった。
 擁する使徒が、ネメシスと現場で遭遇する可能性があるにも拘わらず、彼ら(ネメシス)の存在が隠されていたのだ。今夜はじめて知る事実に、幹部たちが怒らない道理がなかった。
 唯一、ネメシスの存在を知っていながらターゲットを奪われた桜庭は、防ぎようがなかったとはいえ、追及を受け、嘲笑の的となる恐れがあった。
 桜庭は、こうやって護られているのだというありがたみと、自分の不甲斐なさに、溜め息が洩れた。
「これは不幸な偶然だった。君はなにも心配しなくていいのだ」
 優しい声の鷹司は、胸に抱いていた桜庭の首筋に指を這わせ、顎を持ちあげて口唇に触れた。
「わたしがついているのだからな」
 人差し指で、桜庭の下唇をかるく捲るようにして開かせた鷹司は、顔を斜めに近づけてきた。
 重なった口唇が、火傷しそうなほど熱く感じられた桜庭は、眸を閉じた。
 上部会が終わり、当主が出かけて留守のいま、『時計の間』に入れる資格があるのは、四ノ宮の実子である鷹司と養子の桜庭くらいだ。
 久し振りに逢った恋人同士がキスする場所としては、好都合だった。
 鷹司は、血の気を失い、凍えたような桜庭の口唇を貪ってから、首筋に手を入れて頭を抱き寄せた。
「昨日、ゲートタワーホテルで会ったな…」
 耳許でそう囁かれた瞬間、桜庭は現在自分が抱えている問題が、ネメシスにターゲットを奪われただけではなかったことを想い出させられた。
 そこへ、桜庭自身が訊きたくても訊けずにいた事柄を、鷹司が話題にしてくれたのだ。後は少しだけ誘導すれば、真相が明らかになると思った。
「鷹司さんは、絢爛豪華な方と一緒でしたね」
 ルキヤに言わせると、「気持ち悪くなるくらい綺麗…」は褒め言葉にはならないらしいため、桜庭なりに言葉を選んだ。
 煌びやかに輝き、華やかで美しい男――で間違いなかった。さらに言葉を付け足すとしたら、エロティックでミステリアス。
 絢爛豪華の形容だけで納得したのだろう、鷹司は笑って答えた。
「昔の知りあいだよ。マカオのカジノで逢ったので、一緒に帰国しただけだ」
「昨夜はあの方と一緒だったのですか?」
 本当は、どの程度の知りあいなのか、マカオに一週間ちかく滞在していたどの時点で逢ったのか、自分の予定を切りあげてまで彼と一緒に帰国したのはなぜか、ホテルでいちゃついていた――ように見えたのはどうしてか? なにもかも詳しく聞きだしたいのだが、怖くてできなかった。
 内心穏やかでいられない桜庭を、鷹司はまったく理解していない様子で、さらりと答えた。
「珍しいダイヤが欲しいというので星河氏を紹介したのだが、君が気にする必要などない相手だ。それよりも、帰国してすぐに連絡できず、悪かった」
 はぐらかされた気がして、桜庭は却って動揺が深まった。
 絢爛豪華な青年の名前すら、鷹司は教える気がないのだ。ならば、「昨夜は、彼と寝たのか?」と訊いて、鷹司が答えるとは、とても思えなかった。
 以前鷹司は、桜庭がダンテに惹かれたのではないかと勘ぐり、桜庭の肉体を翻弄して白状させようとしたことがある。
 あの時の鷹司の気持ちが、いまの桜庭には理解できるばかりか、感じている嫉妬心は数百倍も強いと思うのだが、聖グレゴ園での過去や白須洋一と彼の使徒に穢された事件、戸隠での犬たちとの戯れや、シメールとの情事を考えると、桜庭自身も貞淑な恋人とは言えない。
 嫉妬という黒衣で身も心も覆われていながらも、自分には問い詰める資格と、どのような答えを聞いても平静でいられる自信がないと思う桜庭は、黙るしかなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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