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著者プロフィール
狂気 太郎(きょうき たろう)
『想師』で第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。ほか灰崎抗名義で『殺戮の地平』(学習研究社・刊)ほか発表。
『想師』で第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。ほか灰崎抗名義で『殺戮の地平』(学習研究社・刊)ほか発表。
解説
鱗のあるエイのような生き物に、燃える枯れ木のようなもの。目の前にいる異形の者たちは〈別の視点〉から見た、まぎれもない人間の姿だ。その奇怪ないでたちは彼らの性質を示していた。それは無数にある〈世界の真実〉を自分の想念により再構築したヴィジョン。視点の角度を変える技『旋視』で見ることができる。草薙遼は「想師」と呼ばれる特殊能力者だった──。
想師として裏の仕事を請け負う草薙のところに、ある日「娘を犯して殺したヤクザをできる限り残酷に殺してほしい」との依頼が舞い込む。クソ野郎どもには死の鉄槌を下さねばならない。意識を解き放つことで、より強力な想念世界から現実に干渉できる『転視』を使い、ヤクザの組事務所に乗り込む草薙。だがそこで待っていたのは、破壊と殺戮の想師・九鬼凍刃《くきとうじん》との出会いだった。数千の死人を従える魔術師や、知識欲に魂を捧げたカバリストとの対決を経て、草薙は血塗られた宿命の相手、九鬼との世界の命運をかけた壮絶な殺し合いに挑む……。上巻。
圧倒的な破壊と殺戮! 想像力の限界突破! 衝撃のデビュー作、ついに狂気太郎名義で電子書籍化!
※ 本書は2002年に学習研究社から発行された『想師』に若干の修正を行ったものです。
想師として裏の仕事を請け負う草薙のところに、ある日「娘を犯して殺したヤクザをできる限り残酷に殺してほしい」との依頼が舞い込む。クソ野郎どもには死の鉄槌を下さねばならない。意識を解き放つことで、より強力な想念世界から現実に干渉できる『転視』を使い、ヤクザの組事務所に乗り込む草薙。だがそこで待っていたのは、破壊と殺戮の想師・九鬼凍刃《くきとうじん》との出会いだった。数千の死人を従える魔術師や、知識欲に魂を捧げたカバリストとの対決を経て、草薙は血塗られた宿命の相手、九鬼との世界の命運をかけた壮絶な殺し合いに挑む……。上巻。
圧倒的な破壊と殺戮! 想像力の限界突破! 衝撃のデビュー作、ついに狂気太郎名義で電子書籍化!
※ 本書は2002年に学習研究社から発行された『想師』に若干の修正を行ったものです。
目次
第一章 想師
第二章 呪術
第三章 死者達の宴
第二章 呪術
第三章 死者達の宴
抄録
「ひゃろおおおおおおおお」
と、それは高い声で鳴いた。獣の脇腹が裂け、赤い血がしたたっている。俺の鉤爪がつけた傷だ。一方、噛まれた俺の左腕は、浅く血がにじむ程度だった。分厚く硬い皮膚もこんな時には役に立つ。
「どうしよう。困ったな。さっきまで大人しかったのに」
青年がぼんやりとつぶやく。
俺は武器になるものを探した。すぐ近くに、一メートルほどの小さな木が生えていた。蔓にも絡みつかれず真っ直ぐに伸びている。濃い茶色の樹皮は、かなり頑丈そうに見えた。澄んだ赤の葉は純粋な強さを示す。
俺はそれを両手で掴んで引き抜いた。この場所に根を張っていたわけではないらしく、意外にあっさりと抜けた。
「ひゃるうううううううううう」
赤い獣が再び俺目掛けて跳躍してきた。俺は木の尖った先端を獣に向け、渾身の力で突き出した。
「ぎゃぶぶぶぶ」
硬質な木が槍となって獣の口を貫《つらぬ》いた。俺は勢いのついた獣の体重に押されたが、両足をふんばって耐えた。木が獣の内部にめり込んでいく。返り血が俺の顔にもかかる。やがて槍は胴体を突き抜け、血まみれの先端が尻から飛び出した。
赤毛の怪物は、太い足を痙攣させながら崩れ落ちた。俺はその死体を見下ろして息をつく。
眼鏡の青年が言った。
「江島組はすぐそこだよ」
「ありがとう。じゃあな」
俺は簡単に礼を言い、一人で奥へと進んだ。青年は俺に手を振っていた。憎めない男だ。
暗い赤みを増したジャングルを掻《か》き分け、すぐに平らな草地に出た。五、六メートル四方の広さで、短い草だけが灰色の地面を覆っている。
かがみ込んで、草むらの中に目を凝らすと、小さな生き物達が見えた。
それは、毒々しい黄と赤の混じった毛虫や、体長五センチほどの紫色の蟻や、緑色の蛇などだった。
俺は近江の資料を探ったが、ズボンに差し込んだはずの封筒は消えていた。そもそも今の俺はズボンを履いているどころか黒い怪物だ。世界を移動する際には、しばしばこういうことが起きる。もし写真が残っていれば、その内容がこの世界での姿を写している場合もあったのだが。
だが俺は、生き物達の中に奴らを見つけていた。
濃い赤と緑の色彩にまみれ、草地の中心に大型の卵が転がっていた。ダチョウの卵に似て、殻はかなり硬そうだ。
これが、江島剛だろう。あの禿げ上がった卵形の頭に一致する。視点をずらしても、ある部分は共通することが多いのだ。
卵の周囲を、一匹の針鼠がせわしなく回っている。体表は赤と黒。特に鋭い針先は赤が濃い。
これが、ナイフ使いの志村か。あの逆立てた髪。
元プロレスラーの太田はといえば、卵の傍らに拳ほどの大きさの赤い石があった。その凹凸は、無表情な人間の顔にも見える。
俺は念のため二、三分、じっと観察を続けた。ナビゲーターは現れない。つまり目的地はここなのだ。間違いない、こいつらだ。俺の直感はゴーサインを出した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
と、それは高い声で鳴いた。獣の脇腹が裂け、赤い血がしたたっている。俺の鉤爪がつけた傷だ。一方、噛まれた俺の左腕は、浅く血がにじむ程度だった。分厚く硬い皮膚もこんな時には役に立つ。
「どうしよう。困ったな。さっきまで大人しかったのに」
青年がぼんやりとつぶやく。
俺は武器になるものを探した。すぐ近くに、一メートルほどの小さな木が生えていた。蔓にも絡みつかれず真っ直ぐに伸びている。濃い茶色の樹皮は、かなり頑丈そうに見えた。澄んだ赤の葉は純粋な強さを示す。
俺はそれを両手で掴んで引き抜いた。この場所に根を張っていたわけではないらしく、意外にあっさりと抜けた。
「ひゃるうううううううううう」
赤い獣が再び俺目掛けて跳躍してきた。俺は木の尖った先端を獣に向け、渾身の力で突き出した。
「ぎゃぶぶぶぶ」
硬質な木が槍となって獣の口を貫《つらぬ》いた。俺は勢いのついた獣の体重に押されたが、両足をふんばって耐えた。木が獣の内部にめり込んでいく。返り血が俺の顔にもかかる。やがて槍は胴体を突き抜け、血まみれの先端が尻から飛び出した。
赤毛の怪物は、太い足を痙攣させながら崩れ落ちた。俺はその死体を見下ろして息をつく。
眼鏡の青年が言った。
「江島組はすぐそこだよ」
「ありがとう。じゃあな」
俺は簡単に礼を言い、一人で奥へと進んだ。青年は俺に手を振っていた。憎めない男だ。
暗い赤みを増したジャングルを掻《か》き分け、すぐに平らな草地に出た。五、六メートル四方の広さで、短い草だけが灰色の地面を覆っている。
かがみ込んで、草むらの中に目を凝らすと、小さな生き物達が見えた。
それは、毒々しい黄と赤の混じった毛虫や、体長五センチほどの紫色の蟻や、緑色の蛇などだった。
俺は近江の資料を探ったが、ズボンに差し込んだはずの封筒は消えていた。そもそも今の俺はズボンを履いているどころか黒い怪物だ。世界を移動する際には、しばしばこういうことが起きる。もし写真が残っていれば、その内容がこの世界での姿を写している場合もあったのだが。
だが俺は、生き物達の中に奴らを見つけていた。
濃い赤と緑の色彩にまみれ、草地の中心に大型の卵が転がっていた。ダチョウの卵に似て、殻はかなり硬そうだ。
これが、江島剛だろう。あの禿げ上がった卵形の頭に一致する。視点をずらしても、ある部分は共通することが多いのだ。
卵の周囲を、一匹の針鼠がせわしなく回っている。体表は赤と黒。特に鋭い針先は赤が濃い。
これが、ナイフ使いの志村か。あの逆立てた髪。
元プロレスラーの太田はといえば、卵の傍らに拳ほどの大きさの赤い石があった。その凹凸は、無表情な人間の顔にも見える。
俺は念のため二、三分、じっと観察を続けた。ナビゲーターは現れない。つまり目的地はここなのだ。間違いない、こいつらだ。俺の直感はゴーサインを出した。
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