マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションホラーホラー小説

想師 下

想師 下


発行: キリック
シリーズ: 想師
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★5
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 狂気 太郎(きょうき たろう)
 『想師』で第一回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞。ほか灰崎抗名義で『殺戮の地平』(学習研究社・刊)ほか発表。

解説

 鱗のあるエイのような生き物に、燃える枯れ木のようなもの。目の前にいる異形の者たちは〈別の視点〉から見た、まぎれもない人間の姿だ。その奇怪ないでたちは彼らの性質を示していた。それは無数にある〈世界の真実〉を自分の想念により再構築したヴィジョン。視点の角度を変える技『旋視』で見ることができる。草薙遼は「想師」と呼ばれる特殊能力者だった──。
 想師として裏の仕事を請け負う草薙のところに、ある日「娘を犯して殺したヤクザをできる限り残酷に殺してほしい」との依頼が舞い込む。クソ野郎どもには死の鉄槌を下さねばならない。意識を解き放つことで、より強力な想念世界から現実に干渉できる『転視』を使い、ヤクザの組事務所に乗り込む草薙。だがそこで待っていたのは、破壊と殺戮の想師・九鬼凍刃《くきとうじん》との出会いだった。数千の死人を従える魔術師や、知識欲に魂を捧げたカバリストとの対決を経て、草薙は血塗られた宿命の相手、九鬼との世界の命運をかけた壮絶な殺し合いに挑む……。下巻。

 圧倒的な破壊と殺戮! 想像力の限界突破! 衝撃のデビュー作、ついに狂気太郎名義で電子書籍化!

※ 本書は2002年に学習研究社から発行された『想師』に若干の修正を行ったものです。 

目次

第四章 回路
第五章 テロリズム
第六章 攻防
第七章 赤い闇、銀の光 

抄録

「私は、人類の滅亡に、協力しようと思います」
「本気か、凍刃」
 呻《うめ》くように、師匠が言った。
「本気ですよ。貨物船ゆうぐれ号が横浜港に到着するまで、まだ六日あります。私は、三日後にウィルスを強奪する予定です。それまでは、ウィルス回収に迫るアメリカと日本の手から、貨物船を守るつもりです」
 だが、それにしては、こいつの行動は不自然ではないのか。
「なぜ、そんな面倒なことをする。核ミサイルを投げ返すくらいの力を持っているなら、今すぐにでもウィルスを奪うことはできるだろうが。それに、そのことをなぜ俺達に知らせに来た」
 くく、く、と、九鬼は笑った。唇を軽くめくり上げた、耳障りな含み笑いだった。
「多少は歯応えがなければ、何事も面白くありませんから。あなたとはいずれゲームをしようと思っていましたので、ちょうど良い時に依頼が来ました。ジャッジメントウィルスと人類の滅亡は、なかなか面白い賞品でしょう」
 その黒い瞳の、狂気の渦が強くなる。
 待てよ。そういえばこの前の噴火処理中の事故と、転視室の崩壊は……。
「この間、転視室を襲ったのはお前か」
「そうですよ」
 九鬼は即答した。
「老公が手塩にかけて育てた想師が、ゲームの相手として相応しいかどうか確かめようと思いましてね。かなり手加減しましたが、なんとか及第点でしょう」
 こいつ……。
 九鬼凍刃は、まさに魔人だった。
「人生は、ゲームじゃない」
 俺は、やっとそれだけを口にした。
「ゲームでないとすれば、人生とは一体、何なのでしょうねえ」
 俺の目を見据え、九鬼は言った。今度は真剣な眼差しだった。
「世界は悪意で溢《あふ》れています。どんなに飾ったところで、人は自分の欲望のためにだけ動く生き物です。必要なものを手に入れるためには、他人を貶《おとし》め踏み台にしていかねばなりません。そして彼らはそれを全力で実行しているのですよ。皆の前では善を語りながら裏で悪事を行う者がいかに多いことか。快楽を求めて互いに悪意をなすりつけ、絡み合う醜い生物。それが人間の本質ですよ。まったく違う建前と本音にも、いい加減うんざりさせられました。私に残酷な仕事を押しつけておきながら、彼らは内心で私を『化け物』と侮蔑《ぶべつ》するのです。自分自身が化け物であることに、気づきさえせずに。何千回、何万回も、私はそう呼ばれ続けてきたのですよ。私の体には彼らの悪意が染みついて、落ちなくなってしまいました。たかが内臓をぶら下げたみすぼらしい棒人形達によってね。いえ、失礼、こっちの話です」
 九鬼は低く笑った後で、極大の憎悪を込めて、呪詛《じゅそ》の言葉を吐き出した。
「愛だ正義だ幸福だなどと、平気で語る輩が、私は、憎くて、憎くて、仕方がないのですよ」
 そして彼はコーヒーの残りを飲み干し、手袋を填めた手で、自分の首に触れた。血の気のない肌に皺《しわ》が寄り、肉から浮いた。
 九鬼凍刃の顔は、首筋も含めて仮面で完全に覆われていたのだ。薄い人工皮膚を静かに引きはがしてみせながら、九鬼は言った。
「老公。あなたの年齢の、まだ半分にしか達していないのに、もう、こんな体になってしまいましたよ」
 俺は、込み上げる吐き気を抑えるのに必死だった。隣で永次がウッと妙な声を洩らした。天承老師は目を細めたまま、黙って九鬼の顔を見ていた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。