和書>小説・ノンフィクション>文芸>古典文学
解説
1「記紀《きき》」という本
「古事記」は西暦712(和銅5)年に、「日本書紀」はそれから8年後の720(養老4)年に完成したとされる、日本最古の書物、天皇の命令によってつくられた歴史書です。
この2書をあわせて「記紀」と呼び、日本古代の歴史・文学はここからはじまりました。
2「日本書紀」は、
「日本書紀」は、「古事記」と同様に天地生成から書きはじめられています。まだ天と地が分かれていなかった頃、「そのうちの、澄んで明らかなところがひろがって天となり、重くて濁ったものが集まって地となった」というのです。これは「古事記」の説と同じですが、以下「日本書紀」はそれまでの言い伝えや書き遺しを、全30巻に集成しました。
はじめの2巻が「神代の部」、その後が「人皇の部」で、この本が朝廷の正史として、歴史講義のテキストとしてつくられたことは明らかです。
「記紀」を読んで、古代の日本人が地球や神々の世界や人間のはじまりをどのように想像したか、を考えるのはたのしいことです。
3平明な口語で読めるんです!
小説家・文芸評論家・フランス文学者と、いくつもの顔をもった福永武彦は、日本古典も深く味読した文学者でした。
ここに集録した「日本書紀」、次に刊行する「古事記」の2書は、平明で、もっとも良質な現代口語。すらすら読めて、記紀の世界の核心部に入って行けます。
「古事記」は西暦712(和銅5)年に、「日本書紀」はそれから8年後の720(養老4)年に完成したとされる、日本最古の書物、天皇の命令によってつくられた歴史書です。
この2書をあわせて「記紀」と呼び、日本古代の歴史・文学はここからはじまりました。
2「日本書紀」は、
「日本書紀」は、「古事記」と同様に天地生成から書きはじめられています。まだ天と地が分かれていなかった頃、「そのうちの、澄んで明らかなところがひろがって天となり、重くて濁ったものが集まって地となった」というのです。これは「古事記」の説と同じですが、以下「日本書紀」はそれまでの言い伝えや書き遺しを、全30巻に集成しました。
はじめの2巻が「神代の部」、その後が「人皇の部」で、この本が朝廷の正史として、歴史講義のテキストとしてつくられたことは明らかです。
「記紀」を読んで、古代の日本人が地球や神々の世界や人間のはじまりをどのように想像したか、を考えるのはたのしいことです。
3平明な口語で読めるんです!
小説家・文芸評論家・フランス文学者と、いくつもの顔をもった福永武彦は、日本古典も深く味読した文学者でした。
ここに集録した「日本書紀」、次に刊行する「古事記」の2書は、平明で、もっとも良質な現代口語。すらすら読めて、記紀の世界の核心部に入って行けます。
目次
日本書紀神代の部
一 宇宙の初め(本文)
二 同、別伝(一書の一)
三 同、別伝(一書の二)
四 同、別伝(一書の五)
五 神世七代(本文)
六 二神の婚姻・国生み(本文)
七 同、別伝(一書の一)
八 同、別伝(一書の二)
九 同、別伝(一書の五)
一〇 神々の誕生(本文)
一一 同、別伝(一書の一)
一二 火神の誕生(本文)
一三 同、別伝(一書の二)
一四 同、別伝(一書の三)
一五 同・黄泉国・禊ぎ、別伝(一書の四)
一六 黄泉国、別伝(一書の七)
一七 黄泉国・禊ぎ、別伝(一書の八)
一八 うけもちの神、別伝(一書の九)
一九 ‘うけい’の勝負(本文)
二〇 同、別伝(一書の一)
二一 同、別伝(一書の二)
二二 天岩屋戸(本文)
二三 同、別伝(一書の一)
二四 同、別伝(一書の二)
二五 同・‘うけい’、別伝(一書の三)
二六 八岐《やまた》の大蛇《おろち》(本文)
二七 同、別伝(一書の二)
二八 同・樹種《こだね》、別伝(一書の四)
二九 樹種《こだね》、別伝(一書の五)
三〇 大国主神、別伝(一書の六)
三一 高天原の使たち・国譲り・降臨(本文)
三二 同、別伝(一書の一)
三三 同、別伝(一書の二)
三四 同、別伝(一書の六)
三五 海幸山幸・豊玉姫(本文)
三六 同、別伝(一書の一)
三七 同、別伝(一書の三)
三八 同、別伝(一書の四)
三九 系図(本文)
日本書紀人皇の部
四〇 〔神武〕東への道
四一 〔同〕征旅の歌
四二 〔同〕秋津洲
四三 〔崇神〕三輪の酒宴
四四 〔同〕四道将軍
四五 〔同〕三輪山の神
四六 〔同〕出雲振根
四七 〔景行〕望郷歌
四八 〔同〕御木の小橋
四九 〔同〕日本武尊、熊襲を伐つ
五〇 〔同〕日本武尊、東国を伐つ
五一 〔同〕日本武尊の死・白鳥
五二 〔神功皇后〕忍熊王の乱
五三 〔同〕酒の歌
五四 〔応神〕葛野の歌
五五 〔同〕髪長姫
五六 〔同〕国樔の歌
五七 〔同〕兄姫の歌
五八 〔同〕枯野の歌
五九 〔仁徳〕大山守命の乱
六〇 〔同〕桑田の玖賀姫
六一 〔同〕皇后磐姫命と八田皇女
六二 〔同〕菟餓野の鹿
六三 〔同〕雌鳥皇女の恋
六四 〔同〕雁の卵
六五 〔履中〕大坂の少女
六六 〔允恭〕衣通郎女の少女
六七 〔同〕軽の兄妹
六八 〔安康〕大前小前宿禰の歌
六九 〔雄路〕眉輪王の復讐
七〇 〔同〕蜻蛉の歌
七一 〔同〕葛城山の猪
七二 〔同〕泊瀬山の歌
七三 〔雄路〕大工の御田と采女
七四 〔同〕歯田根命と采女
七五 〔同〕大工の真根と采女の相撲
七六 〔同〕将軍尾代の歌
七七 〔顕宗〕二人の少年の舞
七八 〔同〕角刺の宮
七九 〔同〕老婆の置目
八〇 〔武烈〕歌垣・影媛の歌
八一 〔継体〕勾大兄皇子と春日皇女
八二 〔同〕毛野の臣と目頬子
八三 〔欽明〕大葉子の歌
八四 〔推古〕蘇我馬子の寿歌
八五 〔同〕聖徳太子と飢えた旅人
八六 〔舒明〕蘇我蝦夷と境部の臣の親子
八七 〔皇極〕八《や》の舞
八八 〔同〕童謡二首(猿の歌)
八九 〔同〕童謡三首(蘇我氏滅亡の暗示)
九〇 〔同〕常世の神
九一 〔孝徳〕蘇我造媛の死
九二 〔同〕我が飼う駒
九三 〔斉明〕建王を悼《いた》む歌
九四 〔同〕童謡(新羅遠征軍敗北の暗示)
九五 〔同〕天皇を悼む歌
九六 〔天智〕童謡(‘つめ’の遊びの歌)
九七 〔同〕童謡(橘の歌)
九八 〔同〕童謡三首(吉野の鮎、その他)
一 宇宙の初め(本文)
二 同、別伝(一書の一)
三 同、別伝(一書の二)
四 同、別伝(一書の五)
五 神世七代(本文)
六 二神の婚姻・国生み(本文)
七 同、別伝(一書の一)
八 同、別伝(一書の二)
九 同、別伝(一書の五)
一〇 神々の誕生(本文)
一一 同、別伝(一書の一)
一二 火神の誕生(本文)
一三 同、別伝(一書の二)
一四 同、別伝(一書の三)
一五 同・黄泉国・禊ぎ、別伝(一書の四)
一六 黄泉国、別伝(一書の七)
一七 黄泉国・禊ぎ、別伝(一書の八)
一八 うけもちの神、別伝(一書の九)
一九 ‘うけい’の勝負(本文)
二〇 同、別伝(一書の一)
二一 同、別伝(一書の二)
二二 天岩屋戸(本文)
二三 同、別伝(一書の一)
二四 同、別伝(一書の二)
二五 同・‘うけい’、別伝(一書の三)
二六 八岐《やまた》の大蛇《おろち》(本文)
二七 同、別伝(一書の二)
二八 同・樹種《こだね》、別伝(一書の四)
二九 樹種《こだね》、別伝(一書の五)
三〇 大国主神、別伝(一書の六)
三一 高天原の使たち・国譲り・降臨(本文)
三二 同、別伝(一書の一)
三三 同、別伝(一書の二)
三四 同、別伝(一書の六)
三五 海幸山幸・豊玉姫(本文)
三六 同、別伝(一書の一)
三七 同、別伝(一書の三)
三八 同、別伝(一書の四)
三九 系図(本文)
日本書紀人皇の部
四〇 〔神武〕東への道
四一 〔同〕征旅の歌
四二 〔同〕秋津洲
四三 〔崇神〕三輪の酒宴
四四 〔同〕四道将軍
四五 〔同〕三輪山の神
四六 〔同〕出雲振根
四七 〔景行〕望郷歌
四八 〔同〕御木の小橋
四九 〔同〕日本武尊、熊襲を伐つ
五〇 〔同〕日本武尊、東国を伐つ
五一 〔同〕日本武尊の死・白鳥
五二 〔神功皇后〕忍熊王の乱
五三 〔同〕酒の歌
五四 〔応神〕葛野の歌
五五 〔同〕髪長姫
五六 〔同〕国樔の歌
五七 〔同〕兄姫の歌
五八 〔同〕枯野の歌
五九 〔仁徳〕大山守命の乱
六〇 〔同〕桑田の玖賀姫
六一 〔同〕皇后磐姫命と八田皇女
六二 〔同〕菟餓野の鹿
六三 〔同〕雌鳥皇女の恋
六四 〔同〕雁の卵
六五 〔履中〕大坂の少女
六六 〔允恭〕衣通郎女の少女
六七 〔同〕軽の兄妹
六八 〔安康〕大前小前宿禰の歌
六九 〔雄路〕眉輪王の復讐
七〇 〔同〕蜻蛉の歌
七一 〔同〕葛城山の猪
七二 〔同〕泊瀬山の歌
七三 〔雄路〕大工の御田と采女
七四 〔同〕歯田根命と采女
七五 〔同〕大工の真根と采女の相撲
七六 〔同〕将軍尾代の歌
七七 〔顕宗〕二人の少年の舞
七八 〔同〕角刺の宮
七九 〔同〕老婆の置目
八〇 〔武烈〕歌垣・影媛の歌
八一 〔継体〕勾大兄皇子と春日皇女
八二 〔同〕毛野の臣と目頬子
八三 〔欽明〕大葉子の歌
八四 〔推古〕蘇我馬子の寿歌
八五 〔同〕聖徳太子と飢えた旅人
八六 〔舒明〕蘇我蝦夷と境部の臣の親子
八七 〔皇極〕八《や》の舞
八八 〔同〕童謡二首(猿の歌)
八九 〔同〕童謡三首(蘇我氏滅亡の暗示)
九〇 〔同〕常世の神
九一 〔孝徳〕蘇我造媛の死
九二 〔同〕我が飼う駒
九三 〔斉明〕建王を悼《いた》む歌
九四 〔同〕童謡(新羅遠征軍敗北の暗示)
九五 〔同〕天皇を悼む歌
九六 〔天智〕童謡(‘つめ’の遊びの歌)
九七 〔同〕童謡(橘の歌)
九八 〔同〕童謡三首(吉野の鮎、その他)
抄録
一〇 神々の誕生(本文)
二柱の神は、次に海原を生み、次に川を生み、次に山を生み、次に木の祖先である句句廼馳(ククノチ)を生み、次に草の祖先である草野姫(カヤノヒメ)を生んだ。この別名は、野槌(ノヅチ)。
そこでイザナギノ尊とイザナミノ尊とが相談して言うには、
「今までに大八洲国《おおやしまぐに》と、山川草木とを生んだ。この上は、どうして天下に君たる者を生まないわけがあろう?」
こう言って、ここに共同して日の神を生んだ。その名は、大日貴(オホヒルメノムチ)と言う。
一書には、天照大神(アマテラスオホミカミ)と言う。一書には、天照大日尊(アマテラスオホヒルメノミコト)と言う。
この御子は、その身体が光り輝いていて、天地四方にまで光が及んだ。そこで二柱の神が悦《よろこ》んで言うには、
「御子はたくさん生れたけれど、今までにこんな霊妙な御子はいなかった。この国に長くとどめておいてはいけない。これは当然天に送って、天上のことを教え込まなければいけない。」
こう言った。その頃は、天と地とが分れてからまもなくのことで、天地の間はさして離れてもいなかった。そこで‘おのころ’島に立てた柱を持ち上げて、この御子を天に差し上げた。
次に月の神を生んだ。
一書に、月弓尊(ツクユミノミコト)、月夜見尊(ツクヨミノミコト)、月読尊(ツクヨミノミコト)と言う。
その光は、日の光に次いで輝しかったので、日に添えて天を治めさせようと思って、この御子もまた天に送った。
次に蛭児《ひるこ》を生んだが、三年経っても足がまだ立たなかった。そこで岩のように堅い樟くすの木で作った、天《あめ》の磐樟船《いわくすぶね》に載せて、風のままに押し流して棄ててしまった。
次に素戔鳴尊(スサノヲノミコト)を生んだ。
一書に、神素戔鳴尊(カムスサノヲノミコト)、速素戔鳴尊(ハヤスサノヲノミコト)と言う。
この神は、その性質が勇猛で、怒り憤ることが多かった。またしょっちゅう泣き喚《わめ》いた。そして国の中の人民を多勢殺したり、また青々と草木の茂る山を、枯木の山と変えたりした。そこで、父母の二柱の神は、スサノヲノ尊に命じて、
「お前は道にはずれたことばかりしている。とても天下に君たるべき資格がない。遠い根国《ねのくに》に行ってしまえ。」
こう言って、ついに追い払った。
二柱の神は、次に海原を生み、次に川を生み、次に山を生み、次に木の祖先である句句廼馳(ククノチ)を生み、次に草の祖先である草野姫(カヤノヒメ)を生んだ。この別名は、野槌(ノヅチ)。
そこでイザナギノ尊とイザナミノ尊とが相談して言うには、
「今までに大八洲国《おおやしまぐに》と、山川草木とを生んだ。この上は、どうして天下に君たる者を生まないわけがあろう?」
こう言って、ここに共同して日の神を生んだ。その名は、大日貴(オホヒルメノムチ)と言う。
一書には、天照大神(アマテラスオホミカミ)と言う。一書には、天照大日尊(アマテラスオホヒルメノミコト)と言う。
この御子は、その身体が光り輝いていて、天地四方にまで光が及んだ。そこで二柱の神が悦《よろこ》んで言うには、
「御子はたくさん生れたけれど、今までにこんな霊妙な御子はいなかった。この国に長くとどめておいてはいけない。これは当然天に送って、天上のことを教え込まなければいけない。」
こう言った。その頃は、天と地とが分れてからまもなくのことで、天地の間はさして離れてもいなかった。そこで‘おのころ’島に立てた柱を持ち上げて、この御子を天に差し上げた。
次に月の神を生んだ。
一書に、月弓尊(ツクユミノミコト)、月夜見尊(ツクヨミノミコト)、月読尊(ツクヨミノミコト)と言う。
その光は、日の光に次いで輝しかったので、日に添えて天を治めさせようと思って、この御子もまた天に送った。
次に蛭児《ひるこ》を生んだが、三年経っても足がまだ立たなかった。そこで岩のように堅い樟くすの木で作った、天《あめ》の磐樟船《いわくすぶね》に載せて、風のままに押し流して棄ててしまった。
次に素戔鳴尊(スサノヲノミコト)を生んだ。
一書に、神素戔鳴尊(カムスサノヲノミコト)、速素戔鳴尊(ハヤスサノヲノミコト)と言う。
この神は、その性質が勇猛で、怒り憤ることが多かった。またしょっちゅう泣き喚《わめ》いた。そして国の中の人民を多勢殺したり、また青々と草木の茂る山を、枯木の山と変えたりした。そこで、父母の二柱の神は、スサノヲノ尊に命じて、
「お前は道にはずれたことばかりしている。とても天下に君たるべき資格がない。遠い根国《ねのくに》に行ってしまえ。」
こう言って、ついに追い払った。
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