和書>小説・ノンフィクション>ノンフィクション>ルポ・ドキュメント
プロジェクトX 挑戦者たち 翼よ、よみがえれ パンダが日本にやって来た/カンカン重病・知られざる11日間
著: NHK「プロジェクトX」制作班発行: 日本放送出版協会
シリーズ: プロジェクトX 挑戦者たち
価格:105円(税込)
0ポイント還元
形式:
⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
⇒詳細 みんなの評価 (未評価)
◆レビューを書く
解説
1971年9月、日中国交回復を記念して中国政府から2頭のパンダ〈カンカン〉〈ランラン〉が贈られることが発表された。「幻の動物」といわれ、また「国賓」待遇の動物の受け入れ先は、東京・上野動物園に決定した。しかし、パンダを見たことのある者は、上野動物園でも飼育課長の中川志郎だけ。ましてや、飼育方法を知る者はいなかった。
急きょ、中川をリーダーとした「パンダ飼育プロジェクト」が結成された。パンダとは、どういう動物なのか? 未知の動物との悪戦苦闘が始まった。
来日10日目、オスのカンカンが風邪を引き、生命の危機にさらされる。野生の動物に抗生物質を飲ませるわけにはいかない。議論の末、プロジェクトはある賭けに出た。
国賓待遇のパンダを死なせてしまうと、外交問題にまで発展しかねない。そんな重圧と闘いながら、懸命に世話を続ける飼育のプロたちの壮絶なドラマ。
急きょ、中川をリーダーとした「パンダ飼育プロジェクト」が結成された。パンダとは、どういう動物なのか? 未知の動物との悪戦苦闘が始まった。
来日10日目、オスのカンカンが風邪を引き、生命の危機にさらされる。野生の動物に抗生物質を飲ませるわけにはいかない。議論の末、プロジェクトはある賭けに出た。
国賓待遇のパンダを死なせてしまうと、外交問題にまで発展しかねない。そんな重圧と闘いながら、懸命に世話を続ける飼育のプロたちの壮絶なドラマ。
目次
一 国賓「パンダ」が上野動物園にやって来る
二 未知の動物との勝負の一週間
三 パンダ初公開 大ブームとの格闘
四 二世誕生への期待、そして悲報
二 未知の動物との勝負の一週間
三 パンダ初公開 大ブームとの格闘
四 二世誕生への期待、そして悲報
抄録
一 国賓「パンダ」が上野動物園にやって来る
日中国交回復記念の贈り物
一九七二(昭和四七)年九月。田中角栄首相は、中国の北京を訪れていた。日中国交回復の調印式に臨むためだった。日本と中国の国交回復は、戦後最大の政治ショーといわれ、日本中がその成り行きを注目していた。
九月二九日、日中国交回復を果たした田中首相と周恩来首相の固い握手は、生中継で日本に伝えられた。調印直後、記者会見が行われた。その終了直前、官房長官の二階堂進がつけたすような事務的な調子で、ある発表を行ったのである。
「日中国交正常化を記念し、中国人民から日本国民へ、パンダのオス、メス一つがいが贈られたことをご報告申し上げます」
このとき、東京・上野の裏通りにある大衆食堂「好好亭」でも、昼休みの客でごった返す店内のテレビで、調印式の模様が繰り返し流れていた。そこに日替わり定食を食べながら、テレビ画面を食い入るように見つめる一人の常連客がいた。上野動物園の飼育課長、中川志郎(当時四一歳)だった。中川は、動物の世話をする飼育係のリーダーである。
中川は、二階堂進のそのひと言を聞いて、定食を食べていた手からあやうく箸をとり落としそうになった。
「オス、メス二頭のパンダと聞いたとき、なんかキュッと心臓が絞られるような感じがしました。それは喜びというよりも衝撃そのもので、『とうとう、あれが来る』とだけ思ったんです」
中川にとって、パンダが日本にやって来るという事態は予想外ではなかった。ひょっとしたらという期待が心のどこかにあった。同年二月に米国のニクソン大統領が訪中した。そのとき、中国から米国にパンダ一つがいが贈られていたからだ。
「とうとう来るんだね」
隣りでいっしょに食事をしていた職員が、中川の肩に手をかけてささやいた。中川は「そうだ、とうとう来るんだ!」と心にそう叫ぶと、食事も途中のまま食堂を飛び出した。
中川が飛び込んだ先は動物園の園長室だった。そこには、いつもは冷静な園長の浅野三義が顔を紅潮させていた。それも無理もない、浅野園長にとって幻の動物パンダを飼育することは、園長就任以来の夢のまた夢だったのである。
二人が園長室で呆然と向かい合っていた数分後、上野動物園の電話交換室はパニックに陥った。あらゆる報道機関、テレビ、ラジオ、新聞、そして一般の動物愛好者から電話が殺到したのである。
「パンダが来るというが、準備はできているか」
「パンダが来たら、どの動物園で飼うのか」
「パンダの飼育に自信はあるか」
「餌はあるのか」……。
この瞬間から中川ら動物園関係者は、背筋に冷たいものが走り、「本当にこの手でパンダを飼うことになるかもしれない」という緊張感に包まれたのである。
中国・四川省の雪深い奥地に棲むジャイアントパンダ。世界三大珍獣に数えられるパンダは、千二百頭ほどしか生息しない絶滅寸前の希少動物である。
当時、パンダを見たことがある者は、世界でもまだ少なかった。上野動物園の職員のなかでも、パンダを見たものは中川以外にはいなかった。中川は、三年前の一九六九(昭和四四)年、ヨーロッパの動物園研修旅行の際に、ロンドン動物園で「チチ」と「アンアン」を見ていた。
また、昭和天皇がヨーロッパ訪問の際にロンドン動物園でパンダを見学し、話題になっていた。その後、ロンドン動物園のパンダは死亡し、中国以外ではモスクワ動物園、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の平壌動物園と米国のワシントン国立動物園にしかいないといわれていた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
日中国交回復記念の贈り物
一九七二(昭和四七)年九月。田中角栄首相は、中国の北京を訪れていた。日中国交回復の調印式に臨むためだった。日本と中国の国交回復は、戦後最大の政治ショーといわれ、日本中がその成り行きを注目していた。
九月二九日、日中国交回復を果たした田中首相と周恩来首相の固い握手は、生中継で日本に伝えられた。調印直後、記者会見が行われた。その終了直前、官房長官の二階堂進がつけたすような事務的な調子で、ある発表を行ったのである。
「日中国交正常化を記念し、中国人民から日本国民へ、パンダのオス、メス一つがいが贈られたことをご報告申し上げます」
このとき、東京・上野の裏通りにある大衆食堂「好好亭」でも、昼休みの客でごった返す店内のテレビで、調印式の模様が繰り返し流れていた。そこに日替わり定食を食べながら、テレビ画面を食い入るように見つめる一人の常連客がいた。上野動物園の飼育課長、中川志郎(当時四一歳)だった。中川は、動物の世話をする飼育係のリーダーである。
中川は、二階堂進のそのひと言を聞いて、定食を食べていた手からあやうく箸をとり落としそうになった。
「オス、メス二頭のパンダと聞いたとき、なんかキュッと心臓が絞られるような感じがしました。それは喜びというよりも衝撃そのもので、『とうとう、あれが来る』とだけ思ったんです」
中川にとって、パンダが日本にやって来るという事態は予想外ではなかった。ひょっとしたらという期待が心のどこかにあった。同年二月に米国のニクソン大統領が訪中した。そのとき、中国から米国にパンダ一つがいが贈られていたからだ。
「とうとう来るんだね」
隣りでいっしょに食事をしていた職員が、中川の肩に手をかけてささやいた。中川は「そうだ、とうとう来るんだ!」と心にそう叫ぶと、食事も途中のまま食堂を飛び出した。
中川が飛び込んだ先は動物園の園長室だった。そこには、いつもは冷静な園長の浅野三義が顔を紅潮させていた。それも無理もない、浅野園長にとって幻の動物パンダを飼育することは、園長就任以来の夢のまた夢だったのである。
二人が園長室で呆然と向かい合っていた数分後、上野動物園の電話交換室はパニックに陥った。あらゆる報道機関、テレビ、ラジオ、新聞、そして一般の動物愛好者から電話が殺到したのである。
「パンダが来るというが、準備はできているか」
「パンダが来たら、どの動物園で飼うのか」
「パンダの飼育に自信はあるか」
「餌はあるのか」……。
この瞬間から中川ら動物園関係者は、背筋に冷たいものが走り、「本当にこの手でパンダを飼うことになるかもしれない」という緊張感に包まれたのである。
中国・四川省の雪深い奥地に棲むジャイアントパンダ。世界三大珍獣に数えられるパンダは、千二百頭ほどしか生息しない絶滅寸前の希少動物である。
当時、パンダを見たことがある者は、世界でもまだ少なかった。上野動物園の職員のなかでも、パンダを見たものは中川以外にはいなかった。中川は、三年前の一九六九(昭和四四)年、ヨーロッパの動物園研修旅行の際に、ロンドン動物園で「チチ」と「アンアン」を見ていた。
また、昭和天皇がヨーロッパ訪問の際にロンドン動物園でパンダを見学し、話題になっていた。その後、ロンドン動物園のパンダは死亡し、中国以外ではモスクワ動物園、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の平壌動物園と米国のワシントン国立動物園にしかいないといわれていた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
本の情報
この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます
形式
【XMDF形式】
XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。
対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。


























