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著者プロフィール
梅津 裕一(うめつ ゆういち)
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。
解説
就職活動中の大学生・柳原祐司は、いわくつきの物件に住んでいた。3LDK、月の家賃は一万二千円。そこは五年前、借金苦にあえいだ父親が三人の子供を殺して最後には自らの命も絶つという惨劇のあった家だった。もしかしたら〈出る〉かもしれない……そう怯えながらも、祐司が無事に入居三年目を迎えたある日、元刑事を名乗る男によって五年前の事件の真相がもたらされる。曰く、あの一家惨殺は〈父親を殺したのは子供たちで、それから子供同士で殺し合った〉結果だという。あまりにも現実離れした情報に混乱する祐司。だが調べていくうちに、さらに不可解な事実が浮かび上がる。五年前の事件の犠牲者の名が、偶然にも、祐司自身と彼女の理緒を含む大学の仲間四人の名と同じであること。そして、この土地には〈かつての藩主が子供の首斬りに興じた〉という暗黒の歴史があり、どうやら事件はその伝承と関係がありそうなこと。しかし、その因果関係に気づいたとき、事態は思いもよらぬ方向に急転。祐司たちはこの世の地獄を見ることになる……。
残忍な子供たち、血塗られた伝承、輪廻転生のおぞましさ……その行き着く先は、究極のエロスとタナトス! 想像を絶する展開と描写が人の禁忌を呼び覚ます限界ホラー、下巻!
残忍な子供たち、血塗られた伝承、輪廻転生のおぞましさ……その行き着く先は、究極のエロスとタナトス! 想像を絶する展開と描写が人の禁忌を呼び覚ます限界ホラー、下巻!
目次
第六部
第七部
第八部
第九部
第十部
終章
第七部
第八部
第九部
第十部
終章
抄録
あまりにもなめらかに、まるでバターにナイフを入れるかのように白い皮膚に銀色の刀身が滑り込んでいく。
「ひっ……」
ミコの胸が、激しく上下していた。おそらく呼吸回数と心拍数が相当に上昇しているのだろう。誰もが、ドクターのメス先を食い入るように見つめていた。
白いミコの薄皮が、あまりにも易々と切り裂かれていく。体の中心である正中線にそって、ミコの体が割り開かれていくのだ。
やがてへその上のあたりまで十五センチほどまで、ミコの皮膚はすっぱり左右に切断された。
紅玉を思わせる血の珠がぷつぷつと縦線のような切開部から溢れ出していく。ドクターは消毒液につけたふわふわした白い綿で、血液を吸い取っていた。
「これでとりあえず、皮膚の切開は終了しました。ね、簡単でしょう? ですが、人間の皮膚や脂肪層、筋肉の下は、いきなり内臓になっているわけではありません。腹部の場合は、腹膜というものがありまして、これが内臓全体を一つの袋のように守っているわけですね。この袋からはいくつもの……」
まるで医学生に講義するようなドクターの声は、あくまで冷静である。
これは夢だ、ただの悪夢だ、と考えているくせに、その先を見てみたい自分がいる。
腹膜をさらに切開して内臓があらわになったらどうなるのか。
また、脳裏に奇怪な光景がよぎった。
……台の上に、ぐったりとした子供が乗っている。その上から脇差しを使い、腹を割く。力を入れすぎたためか刀身の先は一気に内臓にまで到達し、そこから現れた桃色の袋から濡れ濡れとした液体が……。
幻覚だ。
奇怪な幻視を意識から振り払うようにして、そのままミコの体を凝視する。
「ミコさんはご覧の通りスタイルが良いので、皮膚の下の脂肪層が薄いですね。これはよく解離を起こすので気をつけなければならないのですが……」
解離という言葉は精神医学だけではなく外科の用語でもあるらしいとぼんやり考える。
「ここで、開創器を用います」
そう言うとドクターは、医療器具が並べられた鉄製のトレーから、鋏ににた道具を取り出した。鋏と違って先端の部分は両横に曲がり、なにかをひっかけ、固定するような形になっている。
「この開創器で、正中切開した皮膚を固定するわけですね」
慣れた手つきで、ドクターはミコの傷口の間に開創器という道具の先端を入れると、左右に開くようにした。
どこかそれは、奇妙になまめかしく、猥褻な光景のように祐司には思えた。皮膚と薄い脂肪層といった皮の部分がむかれ、その下にある組織があらわになる。白っぽい膜には、淡い網の目のような血管が走っていた。その下に、生々しい色合いの桃色の組織が見える。
「ひっ……うっ……」
ミコがまるでエクスタシーでも迎えたかのように、びくびくと体を震わせた。
「おっと、あまり動かないでくださいよ」
ドクターが苦笑した。
「麻酔なしでもここまでは大した苦痛はないばすですがね。もっとも、五センチ以上の無麻酔での皮膚切開は普通は禁じられていますが……まあ、いまは状況が状況だ」
そもそもこのマスターは「本物の医者なのだろうか」という疑問が脳裏をよぎった。
まともな医師としての倫理観を持つものが、このような非道な行為を行うとは考えられない。というよりは、考えたくない。
あるいは「人間の違法な切開や解剖が趣味のただの変質者」ということもありうるのだ。
ドクターの目には、喜悦が宿っているように思える。いまの状況が愉しくて仕方がない、といった様子だ。狂気に陥って人体実験を行う医者にしか見えない。
薄い腹膜の下では、胃や桃色の小腸らしい器官がわずかに蠕動していた。ミコの顔が、心なしか上気しているようにも感じられる。
あるいは「内臓をのぞき見られることで性的な羞恥と快楽を感じている」のだろうか?
だとしたら、ミコも理緒に劣らぬマゾヒズムの持ち主である。それともサディズムやマゾヒズムといったものは、量や方向性の程度の差はあれ、どんな人間にも宿っているものなのだろうか?
「腹膜の上からだと、臓器の完全な健康状態はややわかりづらいですね。そこで、今度は腹膜を切開しましょう」
そう宣言すると、ドクターはさらにミコの深奥にむかってメスを入れていった。
どうやら脂肪でつくられているらしい膜が、あっさりと切り開かれていく。
「これで……もう、すっかり臓器はむき出しになってしまいました。いやはや、このお嬢さんは外側もお綺麗ですが、内臓も実にお綺麗だ。まさに内臓美人というものですね」
ドクターの言葉に、ミコがかすかなあえぎ声に似たものを漏らした。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「ひっ……」
ミコの胸が、激しく上下していた。おそらく呼吸回数と心拍数が相当に上昇しているのだろう。誰もが、ドクターのメス先を食い入るように見つめていた。
白いミコの薄皮が、あまりにも易々と切り裂かれていく。体の中心である正中線にそって、ミコの体が割り開かれていくのだ。
やがてへその上のあたりまで十五センチほどまで、ミコの皮膚はすっぱり左右に切断された。
紅玉を思わせる血の珠がぷつぷつと縦線のような切開部から溢れ出していく。ドクターは消毒液につけたふわふわした白い綿で、血液を吸い取っていた。
「これでとりあえず、皮膚の切開は終了しました。ね、簡単でしょう? ですが、人間の皮膚や脂肪層、筋肉の下は、いきなり内臓になっているわけではありません。腹部の場合は、腹膜というものがありまして、これが内臓全体を一つの袋のように守っているわけですね。この袋からはいくつもの……」
まるで医学生に講義するようなドクターの声は、あくまで冷静である。
これは夢だ、ただの悪夢だ、と考えているくせに、その先を見てみたい自分がいる。
腹膜をさらに切開して内臓があらわになったらどうなるのか。
また、脳裏に奇怪な光景がよぎった。
……台の上に、ぐったりとした子供が乗っている。その上から脇差しを使い、腹を割く。力を入れすぎたためか刀身の先は一気に内臓にまで到達し、そこから現れた桃色の袋から濡れ濡れとした液体が……。
幻覚だ。
奇怪な幻視を意識から振り払うようにして、そのままミコの体を凝視する。
「ミコさんはご覧の通りスタイルが良いので、皮膚の下の脂肪層が薄いですね。これはよく解離を起こすので気をつけなければならないのですが……」
解離という言葉は精神医学だけではなく外科の用語でもあるらしいとぼんやり考える。
「ここで、開創器を用います」
そう言うとドクターは、医療器具が並べられた鉄製のトレーから、鋏ににた道具を取り出した。鋏と違って先端の部分は両横に曲がり、なにかをひっかけ、固定するような形になっている。
「この開創器で、正中切開した皮膚を固定するわけですね」
慣れた手つきで、ドクターはミコの傷口の間に開創器という道具の先端を入れると、左右に開くようにした。
どこかそれは、奇妙になまめかしく、猥褻な光景のように祐司には思えた。皮膚と薄い脂肪層といった皮の部分がむかれ、その下にある組織があらわになる。白っぽい膜には、淡い網の目のような血管が走っていた。その下に、生々しい色合いの桃色の組織が見える。
「ひっ……うっ……」
ミコがまるでエクスタシーでも迎えたかのように、びくびくと体を震わせた。
「おっと、あまり動かないでくださいよ」
ドクターが苦笑した。
「麻酔なしでもここまでは大した苦痛はないばすですがね。もっとも、五センチ以上の無麻酔での皮膚切開は普通は禁じられていますが……まあ、いまは状況が状況だ」
そもそもこのマスターは「本物の医者なのだろうか」という疑問が脳裏をよぎった。
まともな医師としての倫理観を持つものが、このような非道な行為を行うとは考えられない。というよりは、考えたくない。
あるいは「人間の違法な切開や解剖が趣味のただの変質者」ということもありうるのだ。
ドクターの目には、喜悦が宿っているように思える。いまの状況が愉しくて仕方がない、といった様子だ。狂気に陥って人体実験を行う医者にしか見えない。
薄い腹膜の下では、胃や桃色の小腸らしい器官がわずかに蠕動していた。ミコの顔が、心なしか上気しているようにも感じられる。
あるいは「内臓をのぞき見られることで性的な羞恥と快楽を感じている」のだろうか?
だとしたら、ミコも理緒に劣らぬマゾヒズムの持ち主である。それともサディズムやマゾヒズムといったものは、量や方向性の程度の差はあれ、どんな人間にも宿っているものなのだろうか?
「腹膜の上からだと、臓器の完全な健康状態はややわかりづらいですね。そこで、今度は腹膜を切開しましょう」
そう宣言すると、ドクターはさらにミコの深奥にむかってメスを入れていった。
どうやら脂肪でつくられているらしい膜が、あっさりと切り開かれていく。
「これで……もう、すっかり臓器はむき出しになってしまいました。いやはや、このお嬢さんは外側もお綺麗ですが、内臓も実にお綺麗だ。まさに内臓美人というものですね」
ドクターの言葉に、ミコがかすかなあえぎ声に似たものを漏らした。
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