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著者プロフィール
森下 朱月(もりした しゅづき)
北海道室蘭市出身。五年ほど前から自身のブログでオリジナルの小説を発表。現在は仕事の傍ら日々、執筆活動に励んでいる。北海道の広い大地を自由気ままにドライブしながら物語の構成を練ること。ちょっと大人の恋愛小説と家族の絆を描いた作品を得意とする。北海道を愛するが故に、小説で北海道を元気にしたいと思っている生粋の道産子。著書に『緋色の薔薇』『結婚できないかもしれない女 合コンの行方』『開店前夜』。
北海道室蘭市出身。五年ほど前から自身のブログでオリジナルの小説を発表。現在は仕事の傍ら日々、執筆活動に励んでいる。北海道の広い大地を自由気ままにドライブしながら物語の構成を練ること。ちょっと大人の恋愛小説と家族の絆を描いた作品を得意とする。北海道を愛するが故に、小説で北海道を元気にしたいと思っている生粋の道産子。著書に『緋色の薔薇』『結婚できないかもしれない女 合コンの行方』『開店前夜』。
解説
6年前に夫の清二が死んでから、朱美はひとりで娘の里奈を育てていた。ひとりになってからも、いつまでも朱美のなかでは夫への想いがあった。そんな朱美の前に13歳年下の青年、来生《きすぎ》が現れた。来生と接するうちに、夫への罪悪感を感じながらも次第に彼との仲は深まっていく。その一方で大学時代からの友人、一樹からも想いを寄せられる朱美。戸惑いながらも来生と共に歩むことに決めたとき、過酷な運命が朱美を待っていた……。
抄録
夕食を済ませ、車で里奈を塾へと送り届けたあと、再び自宅へともどってきた朱美は台所に溜まっていた皿やコップなどを洗いはじめた。目の前の置時計に目をやる。今は六時五十分。あと少しで一樹がやって来る。それまでに洗い物を済ませておこうとスポンジを持った手を手早く動かす。
すべて洗い終えたころ、玄関のチャイムが鳴った。タオルで手を拭き、玄関へと向かう。
カギを開けドアを開くと、見慣れた男が笑顔で立っていた。
「来生君!」
「突然でびっくりしました? 出張、一日早く終わったので、まっすぐ来ちゃいました。これ、お土産」
来生は手に持っていた紙袋を朱美に渡した。
「ねぇ、来生君。これから……」
一樹が来る。
朱美は言葉の途中で視線を長い廊下へと移した。コツコツ、とこちらに向かって歩いてくる足音がきこえてくる。
「どうしたんですか?」
来生は不思議そうな表情で朱美を見ている。
「これから、友達が来る予定なの。ほら、前に話したことがあったでしょ? 大学のころからの付き合いで」
朱美はそういいながら、こちらに向かって歩いてくる一樹を指でさした。一樹は片手をあげてニヤッと笑う。
紺の作業着を来た男はやがてふたりの前で足を止めると、いつもの軽い口調でいった。だが、目だけはなぜか怒りが滲み出ている。
「よう朱美。今、取り込み中か?」
一樹の右手には、駅前のケーキ屋の箱が握られている。
「いや、そういうわけじゃ、ないんだけど……」
「誰なの? 彼」
一樹は顎で来生のほうを指すと朱美を見た。
遠くからサイレンの音がきこえてくる。朱美は落ち着かない気持ちを抱えた胸元にそっと手を置いて、来生の顔に視線を向けた。
どうして、そんな笑顔が出来るのだろうか。怒ったり、睨んだり、負の感情を露にしないのだろうか。
一樹とは正反対の性格なのだろう。一樹であれば、こういう場合だとまず威嚇するような態度をとる。今もそうだが、昔から人嫌いな性格もあってか、初対面の相手に対してはいつもこういう態度をとる男なのだ。だが、その荒くれた性格の裏に隠れた優しい部分も朱美は知っている。現に里奈はすっかり一樹になついているのだ。
三人の間に沈黙の風が吹き抜けていく。だが、それを最初に破った来生は、一樹に頭を軽く下げると静かに口を開いた。
「はじめまして。来生道隆です」
そういい終えた来生は朱美に視線を向けてきた。
「わたしが今、お付き合いしているひとよ」
「お付き合い?」
「そうなの。ここじゃなんだから、ふたりとも中に入って」
朱美はふたりを交互に見ていうと、来生はかぶりを振った。「ぼくはこれで帰りますから」と。
「来生君?」
帰る相手が間違っている。帰るのであれば、一樹のほうだろう。朱美が口を開くよりも、来生のほうが早かった。
「急に来てすみません。朱美さんに用事があったなんて、知らなかったから。ぼくはただ、お土産を渡しにきただけなので。すみません、これで、失礼します」
「来生君! ちょっと待って!」
一樹の前を横切りながら、来生はスタスタと逃げるように歩いていく。なにか勘違いをしているのだ。来生は。
慌てた朱美は来生を追いかけようとサンダル履きで駆け出したときのことだった。一瞬、目の前が暗くなった。
*この続きは製品版でお楽しみください。
すべて洗い終えたころ、玄関のチャイムが鳴った。タオルで手を拭き、玄関へと向かう。
カギを開けドアを開くと、見慣れた男が笑顔で立っていた。
「来生君!」
「突然でびっくりしました? 出張、一日早く終わったので、まっすぐ来ちゃいました。これ、お土産」
来生は手に持っていた紙袋を朱美に渡した。
「ねぇ、来生君。これから……」
一樹が来る。
朱美は言葉の途中で視線を長い廊下へと移した。コツコツ、とこちらに向かって歩いてくる足音がきこえてくる。
「どうしたんですか?」
来生は不思議そうな表情で朱美を見ている。
「これから、友達が来る予定なの。ほら、前に話したことがあったでしょ? 大学のころからの付き合いで」
朱美はそういいながら、こちらに向かって歩いてくる一樹を指でさした。一樹は片手をあげてニヤッと笑う。
紺の作業着を来た男はやがてふたりの前で足を止めると、いつもの軽い口調でいった。だが、目だけはなぜか怒りが滲み出ている。
「よう朱美。今、取り込み中か?」
一樹の右手には、駅前のケーキ屋の箱が握られている。
「いや、そういうわけじゃ、ないんだけど……」
「誰なの? 彼」
一樹は顎で来生のほうを指すと朱美を見た。
遠くからサイレンの音がきこえてくる。朱美は落ち着かない気持ちを抱えた胸元にそっと手を置いて、来生の顔に視線を向けた。
どうして、そんな笑顔が出来るのだろうか。怒ったり、睨んだり、負の感情を露にしないのだろうか。
一樹とは正反対の性格なのだろう。一樹であれば、こういう場合だとまず威嚇するような態度をとる。今もそうだが、昔から人嫌いな性格もあってか、初対面の相手に対してはいつもこういう態度をとる男なのだ。だが、その荒くれた性格の裏に隠れた優しい部分も朱美は知っている。現に里奈はすっかり一樹になついているのだ。
三人の間に沈黙の風が吹き抜けていく。だが、それを最初に破った来生は、一樹に頭を軽く下げると静かに口を開いた。
「はじめまして。来生道隆です」
そういい終えた来生は朱美に視線を向けてきた。
「わたしが今、お付き合いしているひとよ」
「お付き合い?」
「そうなの。ここじゃなんだから、ふたりとも中に入って」
朱美はふたりを交互に見ていうと、来生はかぶりを振った。「ぼくはこれで帰りますから」と。
「来生君?」
帰る相手が間違っている。帰るのであれば、一樹のほうだろう。朱美が口を開くよりも、来生のほうが早かった。
「急に来てすみません。朱美さんに用事があったなんて、知らなかったから。ぼくはただ、お土産を渡しにきただけなので。すみません、これで、失礼します」
「来生君! ちょっと待って!」
一樹の前を横切りながら、来生はスタスタと逃げるように歩いていく。なにか勘違いをしているのだ。来生は。
慌てた朱美は来生を追いかけようとサンダル履きで駆け出したときのことだった。一瞬、目の前が暗くなった。
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